No.1 夢から覚める時
白一色の建物があって、
ところどころに天使やバラなどの装飾が施してある。
広いにわの中央に噴水があって、
その噴水の装飾も白一色。
その建物への道のりを足軽に走っている少年がいて、
その少年の髪も白一色。
っていえれば響きがいいんだろうけど、
実際は違くて…
スキップするように走るその少年の髪はブロンドで、
その色で飾られた睫毛の下の瞳は濃い青一色。
その少年が長い長い庭の道を通り抜けて、
大きなドアノブに小さな手をかける時、
それは大きな漆黒の扉が鈍い音をたてて主人を迎え入れる。
それが少年の日課。
室内に入れば、
まずは大きな時計が迎え入れてくれて、
そしてジンジャービスケットの香りがして、
それから白い清潔感のあるエプロンをした老婆がキッチンから少年を見て顔をますますしわくちゃにして挨拶をする。
少年はそれににこやかに答えて、
老婆のいる場所へと駆けて行って、
幸せそうにジンジャービスケットをほおばる。
少年はその瞬間がとても好きで…
それはもう幸せになれるのでした。
その少年はずいぶんと裕福な家に住んでいて、
世の中の穢れも知らずにこれからも生きていくのでしょう。
でももし、
少年が人生最大のある事件を起こしたなら、
世の中の穢れも汚れも全部その身に背負って生きてくれるのかもしれない。
誰かが不幸になったって、
夜明けはいつもどおりやってくる。
何でなんだろうね。
何コレ。
眩しいし…
寒いし…
うるさいし…
………
カーテンごしに太陽の光が顔に当たって、
自分がベッドから落ちていることに気づいて、
下の階からわめき声が聞こえて、
朝だってことに気がついた。
寒さで顔が冷たい。
いや、ベッドから落ちたせいで全身が冷たかった。
むかついたので、勢いよくベッドの中にくるまった。
古いスプリングが軋む。
人がいなかったせいでベッドの中も冷たかった。
「も〜ありえないわ〜これ…」
独り言を言ってますますベッドにくるまる。
下の階のわめき声が止むのを待ってから、
俺はベッドから勢いよく飛び出して、下の階へとつながる階段を降りていった。