アーバン・スイーパーズ 「ダストシューター」02
あとで解説するけど、いじめ事件において「親」ってのは命を守る上で頼りないことこの上なくてね。
言い方がキツくて悪いんだけど、こんな暖簾みたいなガードに大事な子供の命預ける訳にはいかないのよ。
ともかく問答無用でいじめられっ子くんを拉致します。
でもって、我々が誇る「セーフハウス」に入ってもらいます。
これは民間がやってるDV被害者の「シェルター」とはセキュリティレベルが段違いです。
吸血鬼の大群が襲ってきてもいじめられっ子を死守出来るわ。
吸血鬼の大群は大げさだけど、マジで一個中隊くらいなら耐えきって見せるわ。中学高校生の「いじめっ子」なんぞ物の数じゃないわね。
親に連絡して「無事なことだけは伝える」かどうかは状況次第ね。親によってはテメエの…失礼…自分の子供の言い分なんてまるで信用せずに「誘拐事件だ」なんて騒いで警察に通報したりしちゃう。
まあ、この時ばかりは怠惰でやる気の無い警察に感謝したくなることもあるけどね。
え?何でかって?
決まってるでしょうが。状況的に言えばいじめっ子に拉致されてリンチ殺人されてる真っ最中と変わらないでしょ?そういう雰囲気を察したら警察は関わり合いになりたくないから、ホトケさん(死体)が出るまで何もしないもん。我々みたいな「善意の犯罪者」にとっても好都合ってね。
ともかく、拉致と同時に学校及びいじめられっ子くんの自宅などには高性能の隠しカメラを大量に設置。証拠集めに勤しみます。
これはある事件で撮影できた「いじめられっ子」くんの自宅を襲撃されてる場面ね。
ほら見て。完全に顔もくっきり映ってる。
部屋の中を完全に破壊して、売り飛ばしてお金になりそうなものをごっそり持って行ってる。
別の部屋では親の財布からお金を抜きまくり、金庫まで開けてる。
この時は匿名でこの映像ソースを関係者に送りつけてやったわ。
え?これだけハッキリ顔も声も映ってれば言い逃れ出来ないだろうって?
あんた本当のクズを知らないね。
本人たちは「記憶にない」って最後まで言い張ったわ。
記憶にないも何も、これだけハッキリ映ってるのにね。
挙句に「誰が撮影したのか分からないから証拠能力が無い」だの「勝手に人の姿を撮影するのは肖像権の侵害、人権蹂躙だ」と来たわ。
もう何を言ってんだか分からないわ。
こんなの相手に「戦え」「やられたらやり返せ」とか言っちゃう親がいるのよ。果ては「いじめられるのはお前にも原因があるんじゃないか?」と子供を殴ってた親までいたわ。
子供が親にいじめ被害を報告したくない訳だわ。
ちなみに近所の新古書店の防犯カメラにも売りに来たガキどもの姿が映ってたし、売買記録もあった。
でも何故かある日を境に一斉に沈黙したのよね…。
まあ、それの原因ははっきりしてて、この時の事件の首謀者の一人は親が警察幹部でね。一緒になってもみ消してたワケ。
店主に金品を渡して証拠を廃棄させた上、証言をしないように約束させたみたい。
ええ本当。拷問して吐かせたから間違いないわ。大丈夫。殺してないから。入院はさせたけど。
まあ、人間ってのは社会のもたれ合いの中で生きてるからね。
被害者にも親がいるけど、加害者にも親がいる。
被害者の親が自分の子供を守ろうとして、加害者を告発するとなれば同時に「加害者の親」も敵に回すことになるわ。
え?それくらい当然だろうって?
甘い。調合を間違えたマロングラッセみたいに甘いわ。
今回みたいに加害者の親が「有力者」だったりすると完全に泣き寝入りだわ。よりによってこの時は警察幹部まで関わってる。
あたしたちの調査も後手後手に回ったこともあってはっきりとは分からないけど、この子飛び降り自殺じゃなくて屋上から突き落された形跡が濃厚なのよ…。
警察を抱きこめば証拠隠滅は簡単。
不自然に遠い病院に搬送されて、いきなり火葬だからね。証拠隠滅としか思えない。
ま、普通の警察組織ともなればどうにもならんでしょ。被害者に泣き寝入りしてもらうのが一番丸く収まるんだから一つ頼みますよってなもんよ。
…悪いけどンな話、少なくとも“あたしたちは”受け入れられないんでね。
話を戻すわね。
まずは本人の安全確保が最優先。とりあえず拉致します。
(続く)
*「ダストシューター」(ゴミ捨て屋)
いじめ復讐のための民兵組織。存在は厳重に秘匿されており、表立っては存在しないことになっている。
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【用語解説】
「アーバン・スイーパーズ」(都会の掃除屋)
非合法組織。
「皇法子」
現時点で不明。
「ダストシューター」(ゴミ捨て屋)
「アーバン・スイーパーズ」対いじめ部門。
「手紙部門」
「アーバン・スイーパーズ」の一部門。
「手紙作戦」
加害者に被害者(故人)を装った手紙を出し、精神的に追い込む。
生きている限り何十年でも続く。