手紙部門 002
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[今回の犠牲者]
摂菜清栄くん
[今回のターゲット]
灰汁山蜘蛛男
国蓮皇帝
凛慕機関銃
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簡単に話しておくと、「少年法」の趣旨そのものはそれほど悪いものじゃないの。誤解が広まってるけど。
要するに「若気の至り」で前科者になることで年少者の将来を閉ざさない様にって配慮なわけ。
これは食うに困って窃盗を働いた戦後すぐの身よりの無い少年…みたいなのを想定していたと考えてもらうとイメージがぴったりね。
確かにモノを盗むのは良くないけど、飢え死にしそうな家族…小さな妹とか…の為にパン一斤を盗んだ十歳の子供を「前科者」にして晒し上げていいと思う?思わないよね。
それならそれでいいんだけど、面白半分に他人を嬲り殺しにした鬼畜の将来を配慮するための法律じゃないワケよ。そこを勘違いしているクズが多くて困るわ。
でもわが国には「罪刑法定主義」ってのがあってね。ざっくり言うと「法律で決められていない罪は課されない」ってこと。これは「遡及法の禁止」と並んで近代国家の大原則なの。
だからどれほど関係者が切歯扼腕してようが、「少年」である連中を処罰する法は無いの。
…どうやら思い当たるところがあるみたいね。
逆に言えば「法律で禁止されていない」ことなら
「 こ っ ち が や っ て も 」
いいって話よね?そうでしょ?
或いは「実質的に取り締まりが困難」なことなら出来ちゃう。
このバカ三人組がやってたのは正に鬼畜の所業だわ。
代表的なところだと、「羽交い絞めにして殴打」「トイレの個室に閉じ込めて冷水を浴びせる」「万引きの強要」「金品の強奪」「死んだ虫を食べさせる」「道端の犬の糞を食べさせる」…まだあるよ。
これは確実な証拠…物証があるの。警察や学校は握り潰してるけど。目撃証言もね。
バカ三人組は匿名で報道されはしたけど、実質的な処罰は何も受けてないわね。
それどころか警察での取り調べでも「人権派」弁護士とやらが割り込んで来てずっとそばで監視してるわ。それこそ戦後の混乱期だったら冤罪だったとしても悪徳刑事が死なない程度にぶん殴るくらいはしてたでしょうにそれすらない。
まだあるわよ。
彼らには「社会復帰のための精神的ケアが必要」ってんでカウンセラーが派遣されてるみたい。
…聞き間違いじゃないからね。
この人殺し軍団に手厚い手厚い…乳母日傘みたいなもてなしが待ってるわけよ。はっきり言って普通の生徒ですらこんなにしてもらえないわよ。
参考までに言っとくと、妹さんもお兄さんが自殺してから何故かそれをからかわれてイジメの対象になって…こんなに可愛いスポーツ少女だったのに…引きこもりに。
お母さんは精神を病んで行方不明。
父親は自殺同然に無くなって家族崩壊。親戚にまでその類は及んでる。
バカ三人組は一人転校したんだけど、その先でもまた暴力事件起こしてる。全く反省してない。
あー腹立ってきた。
そこで「手紙作戦」発動します。
亡くなった子については…被害者なのに大々的に報道されてプライバシー暴かれまくったこともあって…我々の組織による徹底調査でかなり判明してる。それに、血液のサンプルも入手したわ。
ええ。火葬される寸前に警察病院に忍び込んだの。
今培養して増やしてるから。あ、髪の毛もね。
それで何するかって?決まってんでしょうが。
「被害者の血で書いた呪いのメッセージ」をこいつらに送りつけるのよ。たまには髪の毛も同封してさ。
しかもしつこくしつこくね。
え?バレるんじゃないかって?
そこはあんた組織の強みよ。
手紙には処理した人間の痕跡が一切残らない様に作業は手袋。封をする前にマイクロ単位でチェック。
消印から辿られない様に日本全国に散らばったエージェントに投函してもらうから足取りを辿られることも無い。
もしも警察に持ち込んでDNA鑑定されても間違いなく犠牲者本人のものだから。
まともに考えればパニックになるだろうね。
手紙開けば真っ赤な文字で「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね…」
悪いけどこちとら一度は死んだ人間の集団だから。金もヒマも手間もあるわよん。
相手が精神的に追い込まれて死ぬまで何十年でも続けます。せいぜい震えるがいいわ。
ちなみにこれ、今月のスコアね。
とあるケースだけど、クラス一番の美少女を壮絶なイジメで首を吊らせたブス5人組の最後の一人が首を吊ったわ。これが昨日の事。
復讐の完遂まで7年も掛かったけど…まあいい仕事をしたと思ってる。
なまじ生きてやがったから7年も苦しめられたし。
しかもこっちは直接手を下した訳じゃない。そもそも会ってもいない。手紙を出しただけ。
どう?やり甲斐あるでしょ。
まあ、終わったところでスッキリ爽やかにビールでも飲んで乾杯!って職場じゃないかもしれないけど、社会的な存在意義はあるわね。
ウチの組織の名前の由来分かってもらえたかな?「アーバン・スイーパーズ」(都会の掃除屋)。
これが「アーバン・キラーズ」(都会の殺し屋)だと露骨だし、「アーバン・アサシンズ」(都会の暗殺者)でも分かりやす過ぎる。
それにあたしたちがやってるのは「人殺し」じゃないから。
「ゴミの処理」してるだけだからさ。
え?いくら相手が鬼畜でもその言い方は無いんじゃないかって?
…連中がやってくれた所業のレポート読んでもそう言ってられるかしら?はっきり言ってあたしの表現なんて穏当に過ぎるくらいだわ。
他にも沢山部門あるけど、まあおいおい紹介するね。
じゃ、明日の朝9時出勤。タイムカード制だから押すの忘れちゃダメよ。
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【用語解説】
「アーバン・スイーパーズ」(都会の掃除屋)
非合法組織。
「手紙部門」
「アーバン・スイーパーズ」の一部門。
「手紙作戦」
加害者に被害者(故人)を装った手紙を出し、精神的に追い込む。
生きている限り何十年でも続く。
「皇法子」
現時点で不明。