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ロックンロール・ベイベー 第一章 グレネード・ララバイ

   第一章 グレネード・ララバイ


 「やってらんねぇーーーーーー!!!!!!!」

 久しぶりに声を出したような感触に、あたしの喉は驚きを隠せなかったようで、もうちょっと伸ばして発音したかったところをむせてしまい、恥ずかしい結末に終わった。

 「わっ。びっくりしたぁ…なに、お姉ちゃん、急に?」

 と、机に突っ伏して微動だにしなかったあたしを「ゾンビだ…バイオハザードだよ…」などと揶揄したあげく放置プレイを決め込み、少女漫画の雑誌を床に広げながら横になってるんるん気分で読みふけっていた我が妹が起き上がりこっちを見ている。…と、状況説明の長い文章は読んでるほうも疲れるだろうけど、書いてるほうもしんどいんです!

 そういうわけで、キョトン顔が愛らしい妹の疑問に答えていこうではないか。

 「やーん…もう、ユズ~~~~~~~。なんなの~~。もう、なんなのーっ!」

 どったんばったんと机や椅子のあらゆる所に自分の体をぶつけ、殴打し、乱打戦になったあげくに甘いにおいのするピンクのパーカーを着込む妹に抱きつき、「勝ったぞ!こんにゃろー!」と思わず心の中でガッツポーズ。妹のふにふにで触るとふよっとするほっぺたにほお擦りしながら問いかける。

 「もう、もうね、どしたらいーのかわかんないよーっ!」

 「やっ…ちょ…まっ…やめてぇ~」

 ぐりぐりとほお擦りというか、ほお押し付けを繰り返しながら、その柔らかな触感を蹂躙するかのごとく、荒々しく乙女の包容は捉えて離さないものなの。

 「はぁ…はぁ…はぁ…ユズ、あたしの話を聞いてもらえないだろーか…」

 息も絶え絶えになるほど全力で抱擁を交わした姉であるあたしは、妹のいやいやを無視して熱く、そりゃぁもう熱く抱きしめてたかったんだけど、人生は有限だからね。ずっとそんなことしてたらあっという間に人生終わっちゃうから。名残惜しいけど我慢しなければならないわけですよ。と、自分にできる最大限の譲歩案を提示して、我が身をゆっくりと妹から離す。

 まぁ、そこにいるのはあたし以上に息を荒げて、小学生とは思えない色っぽさで「あぁ…もうだめ…」とか言っちゃってる妹のユズなんだけどね。

 ゴクリ…たまりませんなぁ…ハァハァ…。とか、思っても口には出さない淑女なあたしをどーぞ褒めて。さぁ、賞賛の声を浴びせて!

 「それで、なんなの?」

 妹の疑問は切ないラブレター。これも愛情表現の一種であると自分を納得させる。あれだけ二人、盛り上がった後に冷徹な言葉を浴びせてくるなんて…この妹、この年でツンデレをほぼマスターしているといっても過言ではないわね…。

 とか色々誤魔化すのはここまでにするとして。とりあえず本題。言いにくいんだけど。

 「あのね…えっとね…何というかね…」

 や、ここで急に冷静になりましたよ、先生。

 こんなこと、妹に相談する?普通。友達じゃない?でも、友達も嫌だー。次の日から違う目で見られるんじゃないかと疑心暗鬼になっちゃうわよ。あぁ、でも、ここまで言っておいて今さら何でもないってこともないんじゃない?ここは言うしかない、いわゆる『詰み』状態に入ってるのね。3ぺーじ目にして早くも詰んだのね!

 などと身もだえしながら葛藤している姉の姿を、あたかも興味がなさそうな視線を投げつけながら見守る一人の妹。

違うの。言うから。今、言いますから!

「あの…ね。びっくりしないで聞いて欲しいんだけど…」

「うんうん。わかったから。何なの?」

なんだろ、この緊張感…あの時みたいなデジャヴ感。同じぐらい心臓ドキドキしとるよー。

「あのね…あたしね…」


「告白されちゃった…。」


いーち、にーぃ……、さーん、とゆっくり数えてわざとらしく作られた間を埋めようと、何か話したほうがいいんだろうか、などとあたしが画策している間、完全に機能を失った妹は完璧に呼吸法すら忘れたように微動だにしなかった。ぽーんと頭のねじの一本や二本飛んでいったんじゃなかろうか。

その後、まったく動かず、目の焦点もあってない妹をじっと見ていたら、ほんとに死んじゃうんじゃなかろうかと思って、擦り寄ろうとして顔を近づけたら、

「えぇーーーーーーーーーー!!!!」

と、予想以上の大声を耳元で思いっきり浴びてしまい、キーンとする耳鳴りに慌てて耳を押さえたあたしの肩をがっちり捕まれる。

「なっ…なにそれ!…え?どういう?ドッキリ?…え?え?…相手は?返事したの!?」

と、立て続けに疑問文を投げかけられ、あたしが目を白黒させてる間にもキャーキャーと盛り上がる妹をよそに、がたがたと思いのほか力強く前後に揺さぶられる肩とそれにあわせてかっくんかっくんと揺れる頭は冷静に落ち着きを取り戻していくようだった。

それはなんだか自分たち二人を全然違う第三者が、それこそ天使か何かが天界からこっそり眺めているような、なんだかすごく自分が遠くなったような感覚に捕らわれた。

「ユズー、ちょっと落ち着きなよー」

なんて自分が言い出す始末。なんだろ、この疎外感にも似た感覚。捕らえきれない自我の崩壊。半強制的にシャットダウンしちゃったんじゃないのと疑いたくなるようなこの冷静さ。

自分が壊れてしまったんじゃないかと間違った思いを巡らせようとした直前に、まさに天国から救いの手が差し伸べられたらこんな感じじゃないかと思うほど優しく、まだ多少混乱の中にありつつそれでも冷静を装う妹からの掛け声に一瞬にして失いかけた自分の欠片を認識させられた。

「大丈夫なの!?お姉ちゃん。しっかりして!」

お前がなー。と、思うぐらいの余裕はあるってことだよね。うん。たぶん、きっとそう。

「ふふふ。ユズの方がパニくってんじゃん。少し落ち着きなよ」

「そーね…そーね…すー、はー。…すー、はー」

そこで目を閉じ、両手を振りながら深呼吸を始める妹はすごくいとおしく思える。

改めて、深呼吸に集中する妹の柔肌に包まれた白魚のような手を握り、目線を交錯させたそのタイミングで、あたしはゆっくりと状況の説明を始めるしかない…よね。

「えっとねー…、なんと言いますか。難しい問題なのですがー…まー、いわゆる一つのー……コクられたとゆーやつですなぁ」

「そ、それはさっき聞いたよっ」

「あははー、そーでしたなー…」

って、間が空くとなんかまた微妙な空気が流れちゃうじゃん!と思いつつも、なぜか妹に丁寧語を使ってしまうぐらい自分の中でも整理がついてなくて、再び机に突っ伏して、いっそのことなかったことにしてしまおうかと画策する。

だが、しかし。一度そこまで話しかけてしまった以上、そう簡単に離してくれるユズではなかった。机に向かうあたしの肩を掴んだかと思いきや、そのままぐいっと巻き込むように正面を向かされ、その勢いを利用してそのままぺたんと床に座らされる。目の前には笑ったら間違いなく可愛いはずのユズが真剣な眼差しでこっちを見ていた。

「大丈夫なの?お姉ちゃん。しっかりして!」

「あー……なんか、ごめんねー。すっかりテンション、サガっちゃって、なんか、もう………あーーーーぁぁぁぁぁっ!!やっっっってらんねぇーーっ!」

頭を掻き毟りながら錯乱する姉を落ち着かせようと、ユズは両肩に置いた手に力を入れて再びがっくんがっくんと揺さぶる。

「お姉ちゃんしっかりっ!そういう時は素数を数えるの!」

「あんた、そーゆーのどっから覚えてくんのよ…」

いい加減、首が鞭打ちになりそうなので、あたしを揺さぶる妹の怪力にあがらい、落ち着かせてため息を吐きながら続ける。

「まー、なんつーの?ほら、あんま気にしてないし。なんつーか、呆気なかったっつーか」

「うそ!だってさっきまで机の上で死んだゾンビみたいになってたもん!」

死んだゾンビってのは、意味がかぶってるんじゃなかろうか。

「や、あははーっ。まー、しょーがねーっすよ。そりゃ、人生初告白だったわけだから」

「だから、お姉ちゃん。あたしで良ければ相談に乗るから。まずは話してみなさい」

と、まだ発育不良の胸を張り、どんと叩きながら誇らしげにこちらを見ている妹のユズ。それはあれかい?小学生のくせに、一人前に力になると思っていらっしゃるんじゃなかろうか。まー、まったく期待してないといったら嘘になるが、事の顛末を話してしまった以上、ここは我ながら情けない気持ちをぐっと我慢して、妹に話をしてみようと思う。

なんと言っても、花の中学生の失恋トークだ。妹は小学生とはいえ、そりゃいっぱしの女の子。興味がないわけがないではないか。

「そーねー……うーん、どっから話していいやら…」

と、腕組みして思案するあたしの目の前で、床にぺたんと座ったまま上下にびよんびよん揺れつつ瞳をらんらんと輝かせてこちらを見るユズ。

もはやこれはあたしのためを思って聞いてるんじゃない。興味だ。完全なる興味本位だ。

やっぱり話すのをやめようかなどと思案してる間にも、はやる気持ちを抑えきれない我が妹は「はやくー!はやくー!むふー」と、全力で姉を急かす。

しょうがない。腹をくくろうではないか。まずは、どこからだろう?出会い?出会いからっつってもなぁ…。とりあえずどこから話せばいいものかと、今までの、今となっては振り返りたくない短い人生の中の、さらに短い凝縮され、濃密な一ヶ月を頭の中にリフレインさせる。

それはあたかも最新のブルーレイレコーダーに登録されたひとつの番組のようであり、今となっては胸がちりちりと痛むのを覚悟して、再生ボタンを押してチャプタースキップしたくなる気持ちを押さえつけ、妹のユズに向かってゆっくりと話し始めた。

そして、あたしはユズの手を握る。

どもども。ろろです。

新作というか、旧作というか。

久作?ああ、たしかに(笑

むかーしむかしに途中まで書いていたのですが、当時の自分の気ままさを羨ましくも思うものです。多少手を加えて、改めて日の目をみることとあいなりました。この後の展開はすでに出来上がっているのですが、文章が出来上がっていません。

(まあ、いつもどおりっちゃーいつもどおりですが)

気長にお相手してやってください。え?出来上がってから読むって?

そりゃ、旦那。

いつになるかわかりませんぜ(ぉ


2011.07.27 ストーリーの根幹となる部分修正(ぉ すみません…ほんと、すみません…。

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