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「お! なんか落ちとる」
手投げ弾で見事スライムを倒したジジイ。ドロップアイテム[スライムの体液]をゲットした。
「ほうほう、敵を倒すと褒美が貰えるんか。ほんなら手投げ弾もあるしいっぱい倒してやるかの」
手投げ弾に確かな手応えを感じたジジイは、更なる獲物を狩るために草原をさすらう。
「ケッケッケッ! 見付けたぞうんこちゃん。今爆殺してやんよ」
と、そこで手投げ弾を取り出した時に気付いた。
「手投げ弾の隣に書いてある数が減っちょる…… まさかこれって……」
そう、当たり前だが手投げ弾は消費アイテムである。使えば無くなるのだ。
「マズイのぅ、これではポンポン使うわけにいかん。後2個しかないぞ」
そんな事を思案していると背中に衝撃が走る。
「だぁっ!! しもうた敵襲か! うんこ以外にでっかい蜂もおる! ひぃ~っ!」
スライム以外のモンスター、キラービーも混ざっている。すっかり囲まれてしまったジジイは、ガリガリとHPゲージが削られる。
「ぎぃ~やぁ~っ!! やめんかぁぁぁっっ!! あか~ん! 死ぬるぅ! くそぅ調子に乗り腐りおって小わっぱどもが!! これでも食らえ!!」
伝家の宝刀手投げ弾をその場に放り投げる。激しい爆発が襲ってきたモンスター達を爆散させる。
「あはぁ~っ!」
それは当然その場にいる自分自身もだが。
「た、楽しんでいるようで何よりです」
優しいお兄さんの前にまたしてもホームレスジジイは死に戻ってきた。
「フッフッフッ。わかるのかね兄ちゃん。ワシ、やったった。今回は派手にぬっ殺してやっぜぇ」
今まさに死に戻ってきた者のセリフとは思えない。
「それは何よりです」
「ところで兄ちゃん、手投げ弾が後1個しかないんよ。もっと欲しい」
「手投げ弾ですか…… 店でも売ってはいますが、正直高価なので買うのはお勧めしませんね。後はクラフトで作製するとかですかね」
「くらふと?」
やっぱりそうなるよな。お兄さんはジジイをある程度理解してきてはいる。
「様々なアイテムを作り出す行為ですね、ステータスのクラフトの数値を上げていけば色々なアイテムを作り出せるようになれますよ」
「ステータス?」
そこかい! 理解してきたようでまだまだ理解しきれていない。お兄さんは苦笑して続ける。
「えっとですね、我々にはステータスといって自分自身の力や速度が設定されているのです。その中にクラフトレベルと言うのがありまして……」
お兄さんはステータスの見方からポイントの割り振りなど、懇切丁寧に教えていく。
「あー、そう言えばリルリルちゃんがそんな事を言っとったような気がする」
「も、もしかしてポイント割り振らずにプレイしてたのですか……」
「うん。そうじゃよ」
大物だ…… そんなんでこんなに楽しそうに遊んでいるのは逆に凄い能力かも知れない。
お兄さんにもゲームに対する向き合い方を今一度考える物があったとか。
「それでですね、はっきり言いますと今の段階では手投げ弾のクラフトは出来ません」
「なんじゃとぉ~っ!!」
「すいません! クラフトにはクラフトレベルに必要素材とお金も必要なんです。手投げ弾作製にはもう少しゲームを進めないと難しいでしょう」
「嫌じゃっ!! ワシ、爆殺したいんじゃ!!」
なんともわがままな言い分である。
「それでは手投げ弾より劣りますが、癇癪玉では如何でしょうか? それなら作製できると思いますよ?」
「ほう、癇癪玉とな?」
「威力は大きく下がります。スライムでも3発くらい倒すのに必要でしょう。でも使い方はほとんど同じですよ」
「あ、3発くらいなら全然平気じゃよ。ワシが棒切れでシバクより早いし」
「なら癇癪玉を作製しましょう。ところでクランハウスはお持ちでは無いですよね?」
【Elegant paradise】にはプレイヤー同士が仲間になるクランというものがある。クランを結成すると(一応1人でも結成は出来る)クランハウスを購入出来るようになる。
「クランハウス? 無いな」
「ですよね、ならこちらへ着いてきて下さい」
お兄さんに連れてこられたのは町のクラフト工房である。ここは初心者用にクラフト機材が揃っている。お金を払い時間単位で誰でも使用出来るのだ。
ただ、使う人はほとんどいない。クランに所属しているとクランハウス内に工房が造れるからだ。こちらの工房は一度こさえてしまえば利用料は勿論掛からない。機材は別途購入する必要はあるが、初心者でもクランに入れて貰えば自由に使用出来るので、わざわざ町の工房を利用し続けるプレイヤーは皆無と言っていい。
「こちらの工房で100G支払って、ゲーム内時間で丸1日利用し放題ですよ」
「そんなに手持ち無いのぅ」
本来大した額でもないのだが、初期費用としてあてがわれた200Gは、死に戻りペナルティ回復の為の宿代に消えていたからである。
「となると敵を倒してドロップアイテムを売るか、フィールドアイテムの薬草などを採集して売る。後はギルド依頼をこなして報酬を貰うでしょうか」
お兄さんはここでも親切に説明をする。結局のところギルドで薬草集めの依頼を受けつつ、癇癪玉のクラフトに必要な[火炎草]も収集する事となった。
「採集出来るアイテムは近付くとわかりますから、良く見て頑張って収集してきて下さい」
「おおう、兄ちゃんありがとー! ワシ、行って来る」
優しいお兄さんの応援を背に、ジジイはフィールドへと赴くのだった。




