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「つまりこの棒切れであのうんこを叩きのめすんじゃな?」
「はい、スライム程度なら簡単に倒せるはずですので。ただ先にやるべき……」
「サンキューじゃ兄ちゃん! やっつけてくるぞい!!」
「あっ! ちょっと! まだ! ……って、行っちまったな。ペナルティくらい回復してから行けばいいのに……」
初の死に戻りを体験したジジイ。何が起きたのかもわからずに混乱していたが、通りすがりの優しいプレイヤーに色々と説明して貰えた。
先ずフィールドには敵となるモンスターが存在する事、そしてそれはプレイヤーを襲って来るので撃退する事。HPゲージが0になったら死んで町に戻る事。それと武器の装備などを。
「カラフルうんこめ、ワシをぬっ殺すなんざ百万年早いんじゃあ」
スライム相手に復讐の炎を燃やすホームレスジジイ。初期装備の只で貰える木の棒がその手に握られている。因みに防具も同じく初期装備の只の服とサンダルである。当然全く防具力には期待など出来ない。
「おった! 往生せぃ!」
さっそく見付けたスライムに踊り掛かる。渾身の一撃がスライムのHPを2削る。
そう、本来一撃でもっと削れるのだが、ジジイのステータスは最低値のままで有る為、木の棒ありきでもこんなダメージしか出せない。
スライムも負けじと反撃してくる。ここで大体のプレイヤーは避けるものなのだが、ジジイにその概念はない。真っ正面からの殴り合い、泥試合である。
その結果――――
「あはぁ~っ!」
ジジイのHPは砕け散った。
「……お、お早いお帰りで」
まだ中央広場に居た優しいお兄さんの目の前にジジイが死に戻ってきた。
「おお、兄ちゃんか! いやあ、あのうんこ野郎中々やりおるわい。どれ、もっぺんリベンジしてくるかのぅ」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
またしても戦いに赴こうとするジジイの手を掴む。
「あの、今死に戻りのペナルティでHPが減少している状態なのです。せめて宿屋で回復してからにして下さい」
ジジイが教えられたHPゲージを見ると確かに全快していない。
なるほど、さっきはそのせいで負けたのか。
三度目の正直である。宿屋で回復するとHPゲージは確かに先程より増えている。それに気を良くしたジジイは大笑いしながら駆け出した。
「ひゃ~っひゃっひゃっひゃっ!!」
「おい! あのホームレス笑いながら走ってるぞ!」
「木の棒持ってるのが何か妙に怖ぇな!」
「歯が欠けてるのよね……」
見た目のインパクトだけは一級品である。
かくして三度目のトライとなる対スライム。今度こそ万全だと息を巻くジジイだったが。
「三匹じゃと!?」
スライムは三匹たむろしていた。一匹でも勝てないアイツが三匹居るのである。それはもう絶望的ともいえる状態にジジイは、
「うら~ら~ら~ら~!!」
突撃した。
彼の辞書に撤退の二字は無い。なんて格好いいものではない。ただ何も考えてないだけである。
その結果――――
「あはぁ~っ!」
ジジイのHPゲージは弾け散った。
「ま、まだ勝てませんか……」
やっぱりお兄さんは待っててくれていた。かなり面倒見の良い性格らしい。
「アイツらうんこのクセに三匹がかりでヒデエんじゃよ」
一匹にも負けるのに三匹相手にしてるのかこの爺さん…… 逆に凄いわ……
「あ、あの道具は使用していますか? 回復薬とか初期アイテムであると思うのですが?」
「アイテムとな?」
やっぱりそこからか……
「えーとですねぇ……」
優しいお兄さんはアイテムの種類や使用方法なども親切に教えてくれる。本来チュートリアルなどを読んで誰でも知っている知識なのだが。
「ほうほう、この回復薬と薬草でHPを回復して、この手投げ弾で攻撃出来るんじゃな?」
「はい、回復しながら戦えば早々はやられる事は無いと思います。手投げ弾に関してはスライム程度なら1発で倒せますよ」
「1発じゃとぉっ!!」
「は、はいっ! ただ気を付けなければいけないのは爆発範囲内に自分もいるとダメージを――――って、また行っちまった。話を聞かない爺さんだな……」
「良い事聞いたぜぇっ!! 一撃じゃあ!! 一撃じゃあ!! ひゃ~っひゃっひゃっひゃっ!!」
「おい! あのホームレス今度は一撃とか叫んで走ってるぞ」
「笑いながら手投げ弾持ってるとか……」
「そっとしておいてあげましょう……」
どんどん危険人物としての認知度が高まってきているが、実際はスライムにフルボッコにされてるホームレスジジイでしかない。
「ふぅ…… おったなうんこ共。今回のワシは一味違うんじゃよ。そーら食らいやがれぇーっ! れーっ…… れーっ…… れーっ…………」
スライムを発見するやジジイの手から放たれた手投げ弾。それは綺麗な放物線を描き、スライム達の頭上へと狙いを違わず舞い降りた。
そしてそれは大きな爆発となり、三匹いたスライムを見事に爆散させたのである。
「どわぁあぁっ!! 爆発じゃああああっっ!! 手投げ弾最強じゃあーっ!!」
その爆発は便所コオロギを一撃で魅了した。激しい爆炎、轟く爆音、吹き荒ぶ爆風。
そして先ほどまで自分を倒してきたスライムを一瞬で葬り去った威力。
「爆発じゃあーっ!! 戦闘は爆発じゃあーっ!!」
この時が目覚めてはいけない何かが目覚めた瞬間であった。




