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ジジイ爆ぜる  作者: おやびん


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 「こりゃたまげた…… 本当の町みたいじゃのぅ」


 キャラクターメイキングを終え、妖精リルリルによって【Elegant paradise】の町へとやって来たジジイ。これがゲームの中の世界なのかと、感嘆の息を漏らしていた。


 「なんか海外旅行にでも来たみたいじゃの」


 中世のような町並みに、プチ旅行にでも来たかのような気分になり、テンションも高まってきている。


 「どわっ!!」


 そんなアゲアゲテンションで町を散歩していると、ガラス窓に映った自分の姿に奇声を発していた。


 そ、そうか、ワシ、ホームレスジジイみたいなナリにしたんじゃった、これは慣れねぇといかんの。


 自分の容姿に驚きながらも一通り町を散策するジジイ。

 町には当然他のプレイヤーも多数存在していて、ジジイの姿は嫌でもヘイトを集めていた。


 「ホ、ホームレス!?」

 「何かのロールプレイなのか?」

 「笑顔が不気味だわ……」


 「尻毛♪ 尻毛♪ 尻毛~♪ 尻毛にもんまり~♪ 腹毛♪ 腹毛♪ 腹毛~♪ 腹毛にぬんがり~♪」(※使い魔はリヴァイアさん公式メインテーマ)


 周りの視線など何処吹く風のジジイは、鼻歌混じりに散策を続けている。


 「おろ? あそこから外に出れるのかいの?」


 目に付いたのはフィールドへ出られる大門である。この門を潜れば晴れてモンスター蔓延(はびこ)るフィールドへと出られるのだが、ジジイは知らない。プレイヤーを襲ってくるモンスターが居ることなど。


 「よーし、外に出てみるかのー」


 知らない以上1ミリの躊躇もなく、意気揚々とフィールドへ躍り出る。これから訪れる悲劇もわからずに。


 「おっほー! かえすがえすもたまげるのぅ! 最近のゲームってのはここまできとんのか!! 日進月歩じゃあ」


 抜けるような青い空、広がる草原。とてもゲームとは思えない程の美麗な景色……いや、ゲームだからこそ実現出来る美しさなのかも知れない。


 ゲームに対する知識なぞ、キノコを食べて大きくなるあの人辺りで止まっているジジイには、とかく目に写る全てが新鮮であった。


 「うひょひょーっ!!」


 浮かれてバカみたいに走るジジイ。端から見てると全力疾走するホームレスジジイ。


 「(おっそ)!! ワシ走るの(おっそ)!!」


 それはそうである。本来フィールドに出るまでにステータスポイントを割り振りするのが定石なのだから。ジジイはよくわからんからいいやで割り振っていない。正に最低値である。


 速度の割りにダイナミックなフォームで走るホームレスジジイ、現実と違い息が切れる事が無いのに気を良くして駆けずり回っていると何かを踏んづけてズッコケる!


 「おわっ! 痛ぁっ!! ……くないの。衝撃は有るんじゃが痛くは無いのぅ」


 リアリティーにこだわっているとはいえ、そこはやはりゲームである。実際に痛みまで表現してしまえば誰もやらないだろう。


 「何を踏んづけたんだワシは? ……なんじゃこりゃ?」


 ジジイが踏んづけたのはスライム。ド定番の最弱モンスターである。プヨプヨ軟体のゲル状の見た目はファンも多いとか少ないとか。


 「うんこみてぇじゃの。うんこ踏んづけて転ぶとかワシは猿カニ合戦の猿か」


 ま、まぁ見る人によってはカラフルなうんことも言えなくは無いのか…… 

 そんなスライムにテケテケと不用意に近付くと、当然の様に体当たり攻撃をお見舞いされる。


 「あ! ちょ! 痛っ! あ、いや痛く無いんじゃが気分的に痛い! 何しやがるうんこコラっ!!」


 ペシペシとスライムのしょっぱい攻撃がジジイを何度も襲う。ゲーム初心者な上に何の知識も無いジジイは、その全てを御丁寧に貰い受ける。そして無抵抗のままHPゲージは弾け飛んだ。


 「な!? 何が起きたんじゃ!?」


 スライムにぬっ殺されてやって来たのは最初の町の中央広場。所謂死に戻りである。

 死に戻りはペナルティとして最大HPが3割一定時間削られる。宿屋に泊まる、アイテムを使用するなどで簡単に回復出来る比較的に優しいペナルティではあるが。


 「お、おい。さっきのホームレス死に戻ってきたぞ?」

 「死に戻りってお前、この辺りでか? どうやったら死ねるんだよ?」


 死に戻ったホームレスジジイの注目は凄かった。何しろこの辺りのフィールドで倒されるなんてのはそうそう有り得ないのである。運営さんだっていくらなんでもそこまで鬼畜設定にはしてない。


 「なんでワシは町に戻ってんのじゃ? うんこにまとわり付かれてたらいきなり……」


 しかしながら便所コオロギさん。HPの概念はおろか戦闘せねばならない事も知らず、スライムのなすがままに殺られておりますゆえ。


 「よくわからんのぅ。聞いてみるか、よぉ! そこの(あん)ちゃん!」


 「え? お、俺っすか!?」


 死に戻りのジジイにいきなり声を掛けられた格好いい鎧に身を包んだプレイヤーが、回りをキョロキョロしてから自分を指差した。


 「そう、おどれ。ちょっと聞きたいんじゃがいいかのぅ?」


 「え、と、はぁ、まぁ、俺でわかる事なら……」


 その他のギャラリーは巻き込まれてはかなわないと足早に去って行く。


 「ワシ、なんなん?」


 いよいよホームレスジジイに痴呆も入り交じった非常にザックリとした質問である。


 「な、なんなん? と言われましても……」


 そりゃまあそうなる。キ◯ガイと即答しないだけでもこのお兄さんは良い人なのだろう。


 「ワシな、外に出て走っちょったんよ、そしたら青いうんこにまとわり付かれて気が付いたらここにおったんよ。もう何が何やら」


 おいマジかこの爺さん、スライムに殺されたのかよ…… 


 お兄さんは驚愕の事実に絶句するも、


 「そ、それは恐らくスライムに殺されて死に戻りしたのでしょう」


 「死に戻り?」


 そこから説明すんのか…… 厄介なジジイに捕まっちまったなと思いつつも、優しいお兄さんはコンコンと説明をするのだった。


 

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