第一話 起点
主人公、八代奏は臆病で失敗を嫌う人間、だかどこまでも優しい子であった。母と妹である恵梨香と暮らす彼はどう見ても幸せに笑っていた。そんな彼が道を外れ自ら命を賭けた運命に進む理由とは!?そして彼が抱え込んでいた真相とは!?
この裏世界では、才能で天逓を生き残った回数こそが人を判断する基準。
回数が低いものは奪われ、貶され、犯される。
回数の多いものは殺し、盗み、強姦、低いものに対してすべてが許される。
そう、世界を変えられるほどにーーーー
そんな白い裏世界を奏は今日も進んで生きる・・・
「ブーブーブー」いつもと同じように見える朝、アラームはけたたましく鳴っていた。
うるさいと返事するようにアラームを黙らせた奏の表情は良くも悪くも明るく見えた。
「今日で17歳、待ちに待った日だ」
そう自然と口にでるほどに奏はこの日に大きな希望をもって生きてきた。
「お兄ちゃ〜ん!! 朝だよ〜」
恵梨香の明るい声が家中を駆け回った。
「は〜い、すぐに行くよ」
2階の自室で寝ていた奏は少しの肌寒さを感じながら体を起こした。
窓からはよく光が差していて、太陽は異様と言えるほどに照り輝いていた。
あまりゆっくりしていても恵梨香に怒られてしまうので、奏は少し急ぐように下へと階段を降りていった。
「お〜今日は中々すんなりと起きたね!」
「うん、昨日はよく眠れたんだ」
恵梨香のからかうような声に淡々と返事をした。
「奏、おはよう」
母の声がワンテンポ遅れて聞こえてきた。
「ああ、おはよう、母さん」
僕は「もう」慣れた様子で返事する。
「お兄ちゃん、今日も学校遅くなるの?」
「そうだね、7時頃にはなっちゃうかも」
(やっぱり、恵梨香の声だけ誇張されているみたいだ)
「おっけ〜! 大人しく待ってるね!」
「ありがとう、ちゃんと待ててえらいね」
にこにことしている恵梨香の頭を僕は優しくそっと撫でる。
「奏は良いお兄ちゃんね〜」
母のからかうような言葉に少し頬が赤くなるのを感じた。
もう朝食も出来上がっていたようなので、特別急いでいる訳ではないが冷ます訳にもいかないのでいただくとした。
「いただきます」
愛情の色で染まったパンを一口齧ると、いつも通りの心を暖かい風で包まれるようなとても落ち着く味が体を支配した。
「今日もとってもおいしいよ」
そう素直な感想を並べると母も恵梨香も静かに嬉しそうな笑みを向けた。
それからは黙々とこの「最後」となるかもしれない食事を堪能した。
「ごちそうさまでした。あれ、恵梨香はもう行くの?」
「もうって、いつもこれくらいの時間だよ?」
そう困惑した顔をする恵梨香に少し驚きながら部屋高くに吊り上がった時計に目をやると、針はいつもの見慣れた点を目一杯主張するように刺していた。
「あ、ほんとだ、いつのまに、」
「も〜すんなり起きたと思ったらまだ寝ぼけてたの〜?」
そう恵梨香は愛らしい笑顔で言った。
「あはは、そうかもしれないね」
誤魔化すように微笑しながらそう返事をした。
「じゃあ私行くね!お兄ちゃんも遅れないように!!」
「うん、いってらっしゃい」
重いドアは似合わない甲高い音を立てて恵梨香を見送った。僕の代わりに。
「さて、始めるか」
そう小さく呟き部屋の隅に住まわせていた中がよく見えない瓶を手に取った。
「この家とも、みんなとも、もう会えないかもな」
醜い弱音が漏れる。
「すうぅぅ.........はぁぁー........」
大きく深呼吸したのち、僕は心を固めた。
「いってきます」
その一言は僕に最後の一押しの勇気を与え、僕は持っていた瓶を強く地面に叩きつけた。
「っ!!!」
瓶に入っていた「何か」は瞬く間に部屋に充満し、全身の力を削ぎ落とすように抜いていった。
「バタン!」
奏はその場で意識を失った。
「はっ!!」
何時間経ったのだろうか、いやまずそんな概念自体あるのだろうか、そう感じるほどに不気味で殺風景な白で満ちた部屋で僕は目を覚ました。
「ど、どこ、だここは、」
見渡す限りは何もない。引き換え違和感だけは幾つもあったが...
「ブーーーーーーーーーーーーーーーーーン」
空間を引き裂くほどの轟音のアラームが部屋中に響いた。
「な、さっきから何が起きて、、、」
その答え合わせはすぐだった。
「刻限となりました。お集まりいただいた皆様の中から、天逓より救世主の解放を始めます」
声ははっきり聞こえるのに男か女かすらわからない。だが主催者はそう言った。
「ははは、そうか、ちゃんと来れたんだな」
ここからが俺の人生の幕開けだ。
そして、死んだ母の報復をーーーー
第一話、ありがとうございました!これからもよろしくおねがいします。




