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家出王子はどこへ行く? ~自由気ままな逃避行の旅~  作者: あてだよ


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教会へ行こう

 テントの中へと入ると、ここ二ヵ月ほどの逃避行のおかげで、実家の様な安心感を覚える様になったドアが見えた。


 そのドアを開けると――



 ――なんという事でしょう。


 あんなにアイテムと棚が乱雑に積まれていた入り口の部屋は、快適さを追求した部屋へと生まれ変わりました。


 あの迷路の様だった商品棚は全て片付けられ、くつろぎを演出する家具類が並べられ、もう窮屈な思いをして歩く事はありません。


 部屋の一角には、空間の余裕さを現す様に、謎に何時まで経っても枯れない花をあしらった花瓶が飾られ、そのまた一角には、レトロさ満開のゲーム筐体まで置かれています。


 ズボラな人にも安心してご利用いただける様に、ロングサイズのソファーだけでなく、寝心地の良いキングなサイズのベッドも置かれ、部屋に入るなり、そこへダイブしても問題ありません。


 もう、魔窟と化していた、あの部屋の面影はありません。


 怠惰な生活を送る上で、最適な部屋へ変貌を遂げたのです。



 ここ1~2ヵ月の逃避行の間、ほぼ日中は、この中に隠れていたので暇な時間も多く、思い切って大改装を行ったのだ。


 木材系の素材アイテムを大量に消費するハメにはなったが、部屋を一つ増設し、そこに店舗部屋のアイテム類の大半を移動して、新たに家具類も作って配置した。


 旅の道中は街などに立ち寄る事が難しかったが、おかげで快適に生活を送れた。


「しかし……どうするかなぁ」


 冒険者なんて楽になれるもんだと思ってたけど、あんな戸籍照合みたいな物があるとは。


 とりあえず、明日の朝一でこの街の教会に行って成人の祝福を受けてしまうか?


 そうすれば、堂々と試験を受けられるはずだ。


 そんな事を考えながら手早く夕食を済ませると、俺は目覚まし時計をセットし、その日は早めに眠りにつく事にした。




 ジリリリリリリリ!!!


 けたたましい目覚まし時計の音が鳴り響いている。


 その音に殴られるかの様に、俺は無理やり叩き起こされた。


「誰だ!? こんな無粋な物を仕掛けたのはッ!?」


 って……俺だった。


 そういえば早めに起きて教会に行こうと、目覚まし時計をかけたんだったか……


「ふぁぁ……」


 目覚まし時計を止め、あくびをしながら起き上がると、俺は冷蔵庫のストレージから朝食を取り出してソファーに座り、今日の予定と今後の課題を考えながら朝食を済ませると、俺はテントを出て宿の部屋へと戻った。


 木窓の隙間から見える外の明るさを見るに、ちょうど朝日が昇り始めた頃のようだ。


 ちょっと起きるのが早かったか?


 教会の営業時間も詳しい場所も分からないので、早めに探しに出た方がいいだろうと判断して早めに目覚ましをセットしたけど、もう1時間くらい遅くてもよかったかもしれない。


 早起きは三文の徳と言うが、この世界だと大銅貨1枚程度の儲けになるのだろうか?


 そんな益体も無い事を考えながら部屋を出て下へ降りると、1階はひっそりと静まり返っていたが、あの不愛想な宿の主らしき人はだけは起きており、カウンターの奥にいた。


 チェックアウトは、どうすればいいんだろ?


 前払い式だったし、このまま出て行ってもかまわないのだろうか?


 一応、声くらいは掛けておくか。


「おはようございます」


「ああ……、朝食は?」


「朝食は自前で済ませましたので大丈夫です。このまま、出ても?」


「ん? ああ、かまわんよ」


 と、宿のおじさんは言うので、俺は軽く会釈してから宿を後にした。



 どうやら昨夜の内に軽く雨が降ったようで、外へと出ると路地の石畳が少し濡れていた。


 湿度を含んで、少し冷えた空気が、新鮮な物に感じて気持ちがいい。


「さてと、教会は……」


 とりあえず、街の中心に向かってみるか。


 平地に作られる街は、その大抵が中心を起点に作られていると、こちらの地理的な教育を受けた時に習った覚えがある。


 おそらく、中心地に行けば、街のインフラ設備とも言える教会も近くにあるはずだ。


 早朝という事もあり通りは閑散としているけど、あちらこちらから戸や窓を開ける音が聞こえ、街が少しずつ目を覚ましていく雰囲気を感じる。


 大通りに並ぶ店からは、パンを焼く香ばしい匂いが漂い、朝食を済ませてなければ、その匂いに釣られて寄り道してたかもしれない。


 そんな事を感じながら、しばらく街の中心地に向かって歩いていると、領主の館らしき大きな建物が見えてきた。


 水を溜めた堀と頑丈そうな壁に囲まれた、ちょっとした砦や城の様な領主館だ。


 国境を守る街だけあって、この領主館自体も防衛設備の一部なのだろう。


「堀の水は……澄んでいるな」


 俺は領主館を囲む堀の水の質を確認すると、次に、その水が何処から流れてきているかを調べた。


 この水の流れを辿れば、教会に繋がるはずだ。


 前世の地球であれば、都市や街は『水』と密接に関係している所に作られる。


 大河のほとり、河川の流れが集合する湖、海へと流れる河口と、水は人間にとって最低限のインフラ資源だからで、地球の歴史では水に合わせて都市部という物は発展してきた。


 だが、この世界では、それは当てはまらない。


 魔法がある世界なので、そういった水の所在とは関係なく街が作られる事が多い。


 教会で成人の《祝福》を受ければ、誰でも《生活魔法》が使える様になるからだ。


 個人では、その《生活魔法》で必要最低限の水は確保できるし、人が集まり規模が大きくなると、そこには教会が建てられる


 そして、その教会が街全体の生活用水を生み出す大型の魔道具を用意してくれるのが常であり。

 前世の記憶が蘇った今なら分かるが、この世界の人々は、その《生活魔法》と教会の恩恵を受け、かなり好き勝手に生活圏を広げている印象がある。


 つまり何が言いたいかと言うと、大半の街の中央には教会の提供している水場みたいな物があり、その水源を探せば、自然と教会へと辿り着くという訳だ。


 この街では水を領主館の堀に流して防備にも流用しているみたいだけど、これを遡れば教会が――あった。


 堀に沿って、ぐるりと領主の館を迂回すると、その反対側に高い鐘楼を備えた教会の屋根が見え、その鐘楼を見ながら進むと、水路に囲まれた広い敷地の中央に石造りの教会が姿を現した。


 思いのほか、すんなりと見つかったのはいいが、開いているのだろうか?


 あと30分もすれば一つ目の鐘が鳴る頃合いだけど……


 まあ、開くまで何処かで時間を潰せば――と思ったが、それは杞憂だった様だ。


 既に教会の正面の扉は大きく開け放たれ、数人のシスターらしき人達が敷地内を清掃したりしている姿が窺える。


 この様子なら、今から成人の儀を行ってくれるか尋ねるくらいはしても大丈夫だろう。


 丁度、中からシスターが一人出て来たし、この人でいいか。


「おはようございます。少々、お聞きしたい事があるのですが」


「あら? 見ない顔の方ですね? いかがなさいましたか?」


「成人の儀を受けに来たのですが、今からでも行ってもらう事はできますか?」


「お一人で、成人の儀を……? いえ、それはお祝い申し上げます。どうぞ、教会の中へお入りください」


 うん?


 なんか一瞬、憐憫の眼差しを向けられた気が……?


 もしかして、成人の儀を一人で受けに来る事って少ないのか?


 ……まあ、いいか。

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