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ゲロムスの遺児  作者: 粟沿曼珠
幕間
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第七十七話 変態性癖紳士の会、再び

 災害や戦争で被害を被った後の街は、犯罪者達にとって格好の狩場となる。

 民家に入って何かを盗む人もいれば、行き場を失った女性を襲って強姦する人もいる。


 今はポン君を故郷に送り届けるという仕事をしているが、ファレオとしての本来の仕事はそういった犯罪者、特に魔術を駆使するより危険な者に対処することである。

 そういう訳でわたしは今、この街の警邏をしているところだ。人の少なく薄暗い路地を歩いていて——


「オラァッ! こっち来るんだよォッ!」


 早速、どこかから男の声が響いてきた。鉄棍を強く握り、その声を頼りに男を探す。

 入り組んだ路地を曲がっては進むを繰り返し、遂に男を見つけた。

 曲がり角から顔を覗かせて見ると、男が十代後半くらいの女性を無理矢理引っ張っていた。


 ——まずい、早く助けないと。


 強姦されるのは目に見えている。魔術で自分の姿を消し、気付かれないように二人の後を追う。


 ……あれ……?


 胸の内に湧いてきたのは、微かな違和感であった。

 男は確かに女性を無理矢理引っ張ってどこかへ連れて行った。しかし、女性はそれに抵抗する訳でも無く、ただただ連れていかれただけだった。


 ——どういうことなんだろ——


「あ゛あ゛————————っ゛っ゛っ゛!?」


 路地の向こうから悲鳴が轟いた。

 しかしその悲鳴は女性のものでは無い。野性的な男の声——先程女性を無理矢理引っ張っていた男のものだ。


「え? え? え? ……え?」


 その事態に困惑せざるを得なかった。女性が襲われると思ったのに、声だけで考えるなら男性が襲われている状況であるが故に。

 訝しさを覚えつつ、悲鳴の元へと小走りで向かう。


「あ゛っ゛! あ゛っ゛! あ゛っ゛!」


 ——これ絶対犯されてるの男の方だよね!?


 次いで響いてきたのは、男の喘ぎ声であった。同じ音を何度も何度も繰り返し、男の………に…………を何度も何度も挿れては抜いてを繰り返す光景が脳内に自然と生み出された。


 女性が男を犯している。

 そこから、以前ボリアで遭遇した『変態性癖紳士の会』を思い出した。

 しかし変態性癖紳士の会は飽く迄『紳士』の為の会であろう。そして今男を犯しているのは女性のはずだ。だとしたら、別の誰かなのだろうか?


 その事実は行けば分かる。

 路地を進むにつれ、角を曲がるにつれ、喘ぎ声は次第に大きくなっていき——


「あ゛っ゛! あ゛っ゛! お゛っ゛!? お゛ぉ゛っ゛!? ん゛お゛ぉ゛~~~~~~~~っ゛っ゛っ゛!?」

「おうっ! おうっ! おうっ! おうっ! おっ! おっ! おっおっおっおっおっおっおっおっおっ——んほぉ~~~~~~~~っっっ!!!」


 変態がいる。

 女性だったはずの男が、彼女——いや彼? を無理矢理引っ張っていた男の………に自分の…………を挿入して絶頂している。


 犯されている側の男の服は引き千切られて捨てられ、彼は全裸となっている。

 一方の女性だった男はというと、女性らしさや幼さは見る影も無い。

 わたしの腹程度の高さであった身長はわたし以上の、恐らくダスさんと同じくらいまで伸び、その体は醜く太っている。

 そして、着ていた服はそのままだ。体格に合わない服、所々が破け、彼の下半身は丸見えである。


 眼前の凄惨な光景から目を背け、女性だった男の気が済むまで待機した。

 彼(?)の…………を男の口に入れてしゃぶらせる音、………や口に尿や……を注ぎ込んだであろう音、唾液を伴った接吻の音——等々、悍ましい音が長時間響き続けたが、できるだけ何も考えないようにした。


 強姦祭が終わり、犯された男は死んだかのように倒れている……いや本当に死んでいるのかもしれないけど。

 再び魔術で姿を——


「チミッ! さっきっからずっと見てますねッ!」

「みみみ見てませんっ! ——あっ」


 こちらの存在を看破した彼の甲高い一声に心臓が跳ね上がり、咄嗟に声を出してしまった。見てないのは事実だけど。

 というか何でばれた……!? 音は出していないし、姿も消したはず……!?


 ばれてしまっては仕方が無い。わたしは彼の前に姿を見せる。


「その顔、『何故バレた』とでも言わんばかりですね……! ボクチンは慣れているんですよ……謂わば『紳士の勘』です!」

「くっ……これが変態の恐ろしさね……!」

「違うッッッ!!! ボクチンは紳士ッッッ!!!」


 わたしの言葉を彼は咆哮を以て否定した。その声にも、彼の顔にも怒りが滲み出ている。


「そうやってッ! どいつもこいつもッ! ボクチンを異常者扱いするッ! ボクチンは嫌いなんですッ! 変態性癖紳士の会って、まるでボクチン達が異常者みたいじゃないですかッ!」


 彼は荒い呼吸になりながらもそう叫んだが、わたしには彼がどこをどう見ても異常の塊にしか見えなかった。

 恐らくか弱い女性のふりをして得物を捕まえて、獣のような声を上げて、自分の…………を………に入れるだけでなく、口にも入れるし尿や……を出すしえっぐい接吻するしで、こんなことをする人を異常者と言わずして何と言おうか。


「誰がボクチンをこんな風にしたッ!? この社会でしょうがッ!」

「ど、どうどう……」


 彼を宥めようと試みるも、彼は聞く耳を持たなかった。怒りのまま、彼は言葉を紡ぎ続ける。


「子供の頃にオッサン達に輪姦されて、その所為で男しか愛せなくなったんですよボクチンはッ! でも皆ボクチンを異常者扱いして迫害したんですッ! ボクチンは自分の生きたいように生きているだけでしたのにッ! この遣り場の無い性欲を発散する為には強姦するしか無いんですよッ!」


 うわ想像以上に悲しい過去だ。同情の余地無さそうだと思っていたけど、普通に同情してしまう。


「この犯罪者まみれの社会がッ! 『あるべき姿』と提示したものから外れたものを異常者扱いするこの社会がッ! ボクチンを異常者に仕立て上げたんだッッッ!!!」


 彼の目からは涙が零れ落ち、顔を濡らした。

 彼の言うこともある意味では正しいように感じられた。だが——


「でもだからといって、犯罪を犯して良い理由にはならないのでは……?」

「えぇい煩い煩い煩いッッッ!!!」


 悲痛な咆哮を轟かせると、彼は衣嚢から短剣を取り出した。


「ぼぐぢん゛を゛い゛じょ゛う゛じゃ゛あ゛づがい゛ずる゛な゛ぁ゛————————っ゛っ゛っ゛!!!」


 彼は咆哮を轟かせながら短剣を振り回し、こちらへと迫ってきた。

 ……色々と可哀想すぎて戦いたくは無かったけど、仕方無い……


 わたしは鉄棍を握り、迫り来る男を迎撃せんと構える。

 わたし史上(色んな意味で)最も悲しい戦いは、鉄棍で彼の腹部を思いきり突くことで一瞬にして終わりを告げた。






「結構いるぞ」


 夢の中でシャールと会うや否や、彼は開口一番にそう言った。

 何を言っているのかよく分からない——が、今日の出来事からある程度の推測はできた。


「えっと……魔術師の時代にはあんな変態が結構いた、ってこと?」

「その通りだ」

「うわぁ……」


 魔術であんなことやこんなことをする変態性癖紳士の会が誕生するのも道理である。


「三種の魔術の中でも奇跡魔術は『己の強き願いに応じて発現するもの』であろう? 例えば女になりたいだの、…………を生やしたいだのと強く願えば、それに応じた奇跡魔術を獲得できる。色欲に染まりきった輩は、往々にして斯様な奇跡魔術を獲得したのだ」

「ぷっ」

「おい貴様、今私が………のことを…………と言ったから笑っただろ」


 その見て呉で…………って言ったら、そりゃ面白おかしく感じてしまう。その見て呉で…………て。

 彼は呆れて嘆息を零し、わたしを睨んだ。

 彼を苛立たせられたのなら、少しばかり嬉しい。これまでやられてばかりだったから。


「やっぱり、当時もこんな感じだったの?」


 魔術全盛の時代となれば、今日見たもののような変態的な魔腑も多くなるだろうし、その分同様の被害も多発しただろう。


「左様。多くの変態を見てきたが、多くの変態を殺してもきた」


 声では淡々と告げているが、その顔は僅かに苦々しく歪んでいる。彼もまた、これまで何度も度し難い変態を見てきたのだろう。


()()()()には時折度し難い変態を暗殺する依頼が舞い込んできたが、あれは実に見るに堪えないものであった」

「そうなん——え?」


 余りにもさらっと言われた為に、気付くのが遅れてしまった。

 シャールは今、ファレオと言った。


「そうだ。魔術師の時代の頃の私は()()()()()()()()()()

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