取り調べ
車に乗って拘置所にでも連れていかれるのかと思ったが、どうやらゴフテッド専用の特別頑丈な部屋がある施設に連れてこられたようだった。
頑丈そうで無機質な部屋に通されて、強化ガラスの前にある机に座るよう指示された。
机の前にある椅子に座る。机の上にマイクとスピーカーが置いてありこれでガラスの向こう人と話すようだ。
あとは何というか警察ドラマであるような雰囲気で、でも緊張させないようにかタメ口のおっさんから取り調べを受けた。
ここに来るまでにだいぶ冷静さを取り戻したゆえに、とてつもない羞恥心と後悔が押し寄せてくるなか私は聞かれたことに対して正直に答えていった。
△△△
「じゃあ何度も確認して申し訳ないけど、彼氏さんの態度や言動でショックを受けたときに女の声が聞こえてゴフトを貰ったということだね?」
「はいそうです」
「そしてその神はイザナミで合っているかい?」
「はい合っています。名乗られたわけではないんですけど、イザナミだって確信したんです」
今だってそうだ。自分の中にある大きな力が認識できて、イザナミが私を愛してくれているのを自覚できる。
人間の愛なんて自分の中のどう感じるかという感情に過ぎないが、「ああ、これが神の愛!」とでも主張しているような神の寵愛を強く感じるのだ。
「うん、信じてないわけじゃないよ。だいたいのゴフテッドはみんな神からのゴフトを貰う際に声が聞こえたと言うんだ。
そして今まで聞いたことがなかった神様の名前でもしっかりと認識できてしまうそうなんだよ」
おっさんは「君の場合もこれに該当するね」と私を指差した。
「よく聞きますよね、でも自分で体験するなんて初めてで。まあはい、イザナミノミコトでした」
正直自分がゴフトを貰った意味がわからない。彼氏にすっぴん見られて笑われただけで? いや、私的はめちゃくちゃショックだが……それで貰って良いものなのかが疑問だ。
「ところで話は変わるけど、彼氏さんにはこっちから連絡はすでに取ってあるよ。ゴフテッドによる器物損害についても最初の暴発だから罪とかはなく君が損害賠償する必要もないから」
「そうなんですね、心配だったんで良かったです。もう彼とも別れます」
ハハっとおっさんは笑って、「そうした方がいいかもね」と言った。
もはやゴフトのせいで彼氏のその後など考える余裕などなかったが、いい感じにあちらで気を配って色々してくれたらしいことがおっさんの口から語られた。
そしてどうやらおっさんの役目は終わりのようでペンを胸ポケットに差し込み、書類を脇に挟んで部屋から出ていった。
出口で何やら誰かと話しているようだったが話し終わったのか、その話していた相手が入れ替わるように入ってきて、ガラスの向こうで私の前に座った。
身体は少し、まあお腹は出ているが仕事ができそうな感じの30代くらいの男性だ。
「長時間拘束して申し訳ございません。私はゴフテッド対策局の金手と申します」