皇子様は悪女が気になる
夕日が差し込む図書室でノアはララの温もりがまだ残るジャケットを顔にかけて床に大の字で転がっていた。
昼から数人の女子生徒に追いかけられて、仕方なく逃げ込んだ図書室でララと遭遇した。見つかりそうになったので思わずララを抱き寄せ隠れたが…
ノア(…柔らかかったな…めっちゃ柔らかくて、ふわふわだったな…あんな透明感がある生き物初めてみたぞ。
髪からなんかすごいいい匂いしたし…香水の香りがするのかと思ったけど、そんな強い匂いじゃなくて、あれ何の匂いだ…ちょっと甘くて…もう一回嗅ぎたい…いやいや、俺は変態か!
ダメだ、ダメだ!
確かに彼女はかわいい。
かわいすぎるが、彼女はアルロ班長と…アルロ班長を手玉に取るような遊びなれた女なんだ…ララ・フローレン…恐るべし)
ガバッ!!
上着を剥がされ突然視界が眩しくなった。
マックス「みーつけた!」
マックスがしゃがみこんでノアを覗き込んでいる。
マックス「もぉ、探したよ〜。探知魔法使っちゃった。あれ、むずいね」
ノアは上を見つめたまま動かない。
マックス「もしもーし。どしたの、なんか顔赤いよ?」
ノア「!…どうもしていない!」
ノアは突然起き上がって言った。
マックス「?…頭でも打ったの?…まあ、いいや。もうさすがに皇子様ファンの子猫ちゃんたちもいないだろうから帰ろうよ」
マックスが図書室の窓から外を見るとちょうどララとアルロが馬小屋に向かう姿が見えた。
マックス「あれー?ララちゃんみっけ!何だ、結局一緒に帰ってんじゃん。あんなに冷たくしてたのにさー。怖いねぇ…魔性の女なのかな」
ノアはマックスを押しのけて窓を覗き込む。
ノア(…なんだよ。アルロ班長のマントはしっかりかけてんのかよ。…なんだよ)
ノアは唇をギュッとかみしめた。
ノア「…帰るぞ…」
そう言うとノアは上着を肩に掛け早足で図書室から出て行ってしまう。
マックス「ちょっと!もぉ、待ってよ〜」
マックスはノアを追いかけて図書室を後にした。