皇子様はゴリラじゃなかった
図書室は静かでララは気持ちが安らいだ。教室ではあれからヒソヒソと何か噂されているような気がしてちっとも落ち着かなかった。
ララ(さてと、おそくなる前に帰らないと…早く必要な本を探さなくちゃ)
ララが目当ての本を探していると本棚の横のカーテンが不自然に動いた。
ララ(ん?青い何かがチラチラ見えるけど…)
シャッ!
ララがカーテンを開けるとそこにはノアが気まずそうな顔で隠れていた。もちろんララにその表情は見えなかったが、そこにいるのがノア皇子だということはララにもすぐにわかった。
ララ「!!!!!」
びっくりしたララはカーテンをつかんで固まった。
その時、図書室のドアが開く音と女の子数人の声がした。
女子生徒「ノア皇子いた?」
女子生徒「こんなとこに用事はないんじゃない?王宮には図書室もあるらしいから」
女子生徒「でも一応探してみましょうよ」
すると、ノアは素早くララを抱き寄せカーテンで2人を隠した。
ララ(!!!!!)
ノアがシーっと人差し指をララの口の前にたてる。
ララ(なに!?え?なに!?近い近い!ちかい!……うそ、うそ!ノア皇子だよね!?)
間近で見たノアは青い髪が煌めき、ララは甘い瞳の奥にすいこまれてしまいそうだった。
ララを包み込む腕は男らしく力強かったし、唇に当ててある手は大きくあたたかかった。
ララ(私、息できてる?心臓がやばい速さじゃない!?…ゴリラなんてウソじゃん!ノア皇子がこんなかっこいい人だったなんて…)
ララが呆然と固まっているとノアが耳元でささやく。
ノア「ごめん、ちょっとだけ静かにしてて」
ララ「!!!」
ララはコクコクと首を小さく上下に動かした。
ララ(ううっ…声がぁ…低くて響く…。耳が溶けそう…頭が痺れる…)
足音が近づいてくる。
コツコツ…
ララ(ひぃっ!見つかる…)
女子生徒「そっちはいた?」
女子生徒「いないわ。今日はもう諦めて帰りましょう」
女子生徒「そうね、もう暗くなってきちゃうわ」
コツコツコツコツ
バタン!
図書室の扉が閉まる音がしてもノアの腕はララをギュッと絡めたままだった。
ララ(???時間が止まった???…んなわけないわ!もうダメ!心臓が爆破する!)
ドン!
ララはノアを両手で押しのけた
ノア「!!すまない!」
ララ「………」
ララは俯いたままでいる。
ノア「巻き込んでしまってすまない。彼女達に昼からずっと…その…くっついてこられてて…」
ララ「そうなんですか…」
ララ(…追っかけたくもなるよね…こんなかっこよくて皇子様なんだもの)
ノア「…ああ、自己紹介してなかったかな…ノア・アレクシスだ…同じクラスなんだけど」
ララ「…ララ・フローレン…です…」
2人の間に長い沈黙が続く。
ックシュン!
夕方になり図書室は冷え込みはじめ、ララはくしゃみをした。
ノアは上着のジャケットを脱いでララに掛ける。
ララ(!!なんかめっちゃいい匂いする!!なにこれ!)
窓の外はもう夕陽が沈み始めていた。
ノア「暗くなってきたし、そろそろ帰ろうか…」
その時、図書室の外の廊下から声がした
「ララー?ララー?」
その声はアルロのものだと2人はすぐに気づいた。
2人「…ちっ!」
2人は同時に舌打ちをした。
ララは上着を脱いでノアに差し出す。
ララ「ありがとうございました」
ノア「でも、外は寒いから…」
ララ(こんな高そうな上着洗うの怖いし…洗わないで返すわけにいかないし!)
ララ「いえ、結構です」
「ララー!?」
廊下のアルロの声が図書室に近づいてきた。
ララ(まずい!)
ララ「では、失礼します!」
ララは急いで図書室のドアから外にでる。
急足で廊下を進むと、すぐに心配そうな顔であたりを見回すアルロに見つかった。
アルロ「ララ!見つけた!もう暗くなっちゃうぞ!嫌でも絶対送っていくからな!…ん?ララ何か顔赤くないか?」
ララ「…!そんなことないない」
アルロ「風邪でもひいたら大変だよ」
アルロは自分が付けていたマントをララにつける。
ララ「…ありがとう。でも、どうしてまだ学校にいるってわかったの?」
アルロ「探知魔法をつかった」
ララ「そんなことできるの?すごい!」
アルロ「難しい魔法なんだよ。お兄ちゃんすごいだろ!」
ララ「あ、それよりお兄ちゃん!皇子様、全然ゴリラじゃないじゃない!」
アルロ「…」
アルロとララは校舎をでて馬小屋まで向かった。
ちょうど夕日が最後の光を2人に落としていた。