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本当のララ

 アリスが店の看板を店内に入れてドアに施錠しカーテンを閉めようとしたその時だった。


『待ってくれ!』


 店のドアを叩いたのはノアだった。


アリス「お、お、皇子様!?」


 驚いたアリスは急いで鍵を開けてノアを店内に入れた。


アリス「いかがなさいましたか?」

(ま、ま、マズイ!絶対、ララさんがパーティーに行ってないからだ。探しに来たのかな…)


ノア「この前、買ったドレスのことだが…」


 アリスはバツが悪そうな顔をした。


アリス(!!やっぱりいい!ドレス売ったのバレちゃったか!そりゃそうだよ…昨日、あのドレス買った方は、今日着て行くってルンルンだったもん…)


アリス「…あの青いドレスは…ララさんからお買取させていただきました」



ノア「そうらしいが、なぜララがドレスを売ったのか君は知ってるのか?」


アリス「…やむを得ない事情としか…お話できません」

(ララさんが秘密にしていたことを私がベラベラ喋るわけにはいかない…)


ノア「……」


ノアは悲しそうな顔をした。


アリス(えー!そんな顔やめてよ!!私が悪いみたいになっちゃうじゃん!元はと言えば、皇子がちゃんとララさんのことを知らないのがいけないんじゃないの!?)


アリス「…皇子様は本当のララさんをちゃんと見ていますか?」


ノア「本当のララ…」


アリス「私はララさんに初めて会った時お人形さんのような人だと思いました。でも最後に会ったララさんはお人形のようではなかったですが少なくとも懸命に生きてらっしゃる強い方だと感じました」


 ノアはアリスの言葉に心を強く打たれた。


 自分はララのことを誤解していなかっただろうか?


 皆の噂に己の目を曇らしていなかっただろうか?


 どうしたってひかれてしまう自分の心を棚に上げて、ララを好きにならないように悪いとこばかりを見ていなかっただろうか?


ノア「今は…どんなことでも彼女の全てを知りたい。頼む!!なんでもいいから知ってることを教えてくれ」


アリス(う!!イケメン!!こんな、すがるような眼差しに勝てる人いる!?)


アリス「…私からは何も言えません…ですが…ララさんのご自宅はこの通りの1本先にあるはずです」


ノア「!!!ありがとう!!」


 ノアはアリスにぎゅっとハグをする。


アリス「!!!」

(マジか!!)


 固まるアリスをよそにノアは瞬く間に店を出る。

 馬に飛び乗って闇に消えていった。


アリス(…役得ってことにしよう…ありがとう神様!!でもララさん…大丈夫かなぁ…)


 アリスは再び店のドアに鍵を閉めた。



 ララは机の上に突っ伏してそのまま泣きつかれて眠っていた。


 ハッと目を覚まし窓の外を見るとともう夕方だった。


 急いでナターシャのお見舞いに行く。


 ララが病室に着くとナターシャは看護師から夕飯の配膳をしてもらっているところだった。


ララ「ナターシャ、遅くなってごめんね」


ナターシャ「お姉ちゃん!明日退院できるって!」


 ナターシャはすっかり顔色も良く元気だった。


看護師「子供はやっぱり回復が早いわ〜。でも元気な時は病気も元気になってしまうから、退院までにお薬の用意忘れずにお願いしますね」


 看護師はそう言うと次の病室に急足で向かった。

 ナターシャは配膳された夕食をベットの上で食べ始める。


ララ「…美味しい?」


ナターシャ「うん!お昼ご飯もおいしかったよ。あ、そうだ!」


ナターシャは何やらゴソゴソとベットサイドの引き出しを探る。


ナターシャ「これ!おねーちゃんに食べてほしくて!」


 ナターシャが出してきたのはクッキーだった


ナターシャ「おやつ出たの!2枚あったから1枚お姉ちゃんに取って置いたよ!」


ララ「ナターシャ・・・」


ナターシャ「本当は病院に入院してる人以外は食べちゃいけないんだって」


 小さな声でナターシャが言った。


ララ「…ありがとう」


 ララはもらったクッキーをひと口かじる。


ララ「甘くて美味しいね…」


ナターシャ「お姉ちゃんもいつも美味しいものをもらうと私に持って帰ってきてくれるでしょ『ナターシャが喜ぶと思って』って」


ララ「そう?」


ナターシャ「そうだよ!今日私もそう思ったんだよクッキーひと口食べた時にね!」


ララ「そっか…ありがと…本当に嬉しいな」


 ナターシャはご満悦の表情だ。


ララ「…明日は退院祝いしようね!うんと豪華な食事にしよう!」

 

残りのクッキーを口に入れてララは笑った。


ナターシャ「わーい!!」


 ナターシャが夕飯を食べ終るとララは病室を後にした。


 自宅までの帰り道、空にはもう、うっすらと一番星が輝いていた。


ララ(ナターシャが良くなって本当によかった…)


 ララが自宅の玄関を開けると机の上には役人が置いて行った黒いドレスがあった。


ララ(もう逃げられない…)


 ララはシャワーを浴びて、そのドレスに袖を通した。


 鏡のにうつる自分はまるで知らない人のようだった。


ララ(王宮でも同じようなことを感じたけど…こんな最低の気分じゃなかった…)


 黒いドレスはレースがふんだんに使われていてお腹も太ももも透けて見える。


 体のラインに沿ったタイトな作りになっていて胸元は大きく開いて今にも胸がこぼれ落ちそうだ。


ララ(ノアがくれたドレスとは比べ物にならないぐらい安っぽい作り…レースが素肌にチクチク痛いし…何より下品なデザインだわ…)


 ララは時計を見た。


 もうそろそろ、あの男が自分を迎えに来ると思うと、逃げ出したい気持ちになった。


 窓の外を見ると月が綺麗に輝いていた。

 

 ララはノアを思い出す。


ララ(ノア…怒ってるかな?約束したのにごめんなさい…あのドレスを着て、ノアに誕生日おめでとうって言いたかったな…)


コンコン!


 玄関をノックする音にララは覚悟を決めた。


ララ(これが私の現実…)


ララは震える手で玄関のドアを開けた。





いつもお世話になっております。

完結まで頑張りますのでよろしくお願いします。

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