表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/54

治療薬

 治癒医がシャボンを割って出て来たのは治療を始めてから13時間を過ぎた頃だった。


 ララは治癒医に駆け寄る。


治癒医「無事に終わりました。後1時間ぐらいで目が覚めると思います…」


 治癒医はフラフラと廊下の椅子に座り込んだ。


ララ「ありがとうございます!」


治癒医「ただ、成長と共に病気の進行が進んでいます。今までの治療薬だと次は効かないかもしれません。量を倍にして回数も増やしてください。それでもダメならもう少し効きそうな薬に変えるしかないでしょうが…」


ララ「…高額なんですよね。知っています。薬師さんから聞いたことがあります」


治癒医「そうですか。薬草の不足によって、どの薬も値段が上がっているのが現状です…たびたびの出費で大変だとは思いますが…退院となる二日後までに薬の用意をしておいてください。退院後は発作が起こりやすいですから」


 治癒医はそういうとまたフラフラと歩きながら立ち去った。


 ララは病室に入りナターシャの顔を覗き込んだ。治療前より遥かに顔色が良くなっている。


 ナターシャの手を握るとその暖かさに嬉しくなり何度もぎゅっと握る。


ララ「…よかった…本当によかった」


 安堵と疲労と睡魔がララを襲う。


 ナターシャの暖かい手を握りながらララは眠ってしまっった。



「…ちゃん、お姉ちゃん」


ララ「…ん…!!!ナターシャ!」


 ララが目を覚ますとナターシャがまん丸の目でララを覗き込んでいる。

ナターシャ「ここどこ?」


ララ「治療院よ。高熱で倒れたのよ」


ナターシャ「そうだったの!?…お姉ちゃん心配かけてごめんね…」


ララ「心配したよぉ」


ララはナターシャをギュッっと抱きしめる。


ナターシャ「お姉ちゃん…く、くるしい」


ララ「ふふふ、ごめんごめん」


ナターシャ「今日は何日なの?今は朝?夜?」


ララ「今は夜よ、もう真夜中よ。日付は今さっき12時を回ったから…」


(…今日…ノアの誕生日だ…)


ナターシャ「…お姉ちゃん?」


ララ「え?ああ…」


コンコン!


 病室がノックされる


看護師「治療後ですから、そろそろ休んでください」


ララ「はい。わかりました。お姉ちゃんは家に戻って着替えをとってくるからね」


ナターシャ「うん。私はいつ家に帰れるの?」


ララ「2日後だって。それまで看護師さんの言うこと良く聞いてしっかり治さなきゃね」


ナターシャ「はーい。お姉ちゃんおやすみ」


ララ「おやすみ」


 ララはナターシャのおでこにキスをして病室を後にした。


 病院の廊下を出口に向かって歩いていると、向かい側から見覚えのある男がこっちに向かってきた。


「ララさん、妹さんの具合はいかがですか?」


 その男はいつも薬屋として自宅にくる役人だった。


ララ「…あ、その…大丈夫です」


(この人…この前、私に体を売らないかって…)


役人「妹さんの病気、どうですか?」


ララ「今は…なんとか…」


役人「それはよかった」


 役人は爬虫類のような気持ちの悪い笑顔で笑いかけた。


役人「…でも、もし私の助けが必要でしたら明日の夜またご自宅に伺いますので、ぜひご相談ください」


ララ「!!!!」


 役人はスーツの襟を正し会釈をすると去っていった。


ララ(…そうだ、薬代…今度は薬代が必要なんだ)


 ララはそのまま近くの椅子に座り込んだ。


 今回の入院でわずかながらに溜めていたお金も、もう底をついた。

 

 今以上の薬代となると宴会場のバイトではまかなえないだろう。


 学校を辞めて、昼間も働くか?それにしても当座のお金がなさすぎる。


 ララの頭を色々な考えがめぐるなか、避けられない選択があるとララは思い始めていた。



いつもお世話になっております。

ブックマークありがとうございます。

完結までがんばりますのでよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ