入院
治療院で緊急の治癒魔法をうけナターシャの容体はひとまず安定した。
病室でナターシャは治癒用シャボンの中に入っていた。
この大きなシャボン玉の中は空気が綺麗で時間の速さがある程度操作できる。
治癒医「今は緊急だったので万能な治癒魔法をかけていてひとまず状態は安定しています」
ララ「!!!ありがとうございます!」
治癒医「ただ、この状態は長くは続きません」
ララ「え…」
治癒医「万能な治癒魔法の効果はシャボンに入っていても3日程度で、体に負担がかかるので何度もかけることはできません。安定した状態のうちに病状を改善する治癒魔法をかけないと…その…意識の回復が望めません…」
ララ「病状を改善する治癒魔法ですか…?」
治癒医「もちろん根本的な治癒ではありませんが、病気に耐えられるように呼吸機能を向上をさせる治癒魔法です。しかし、そうなると…費用が高額になってしまいますが…」
ララ「…お金はなんとかします…なので妹をお願いします!」
話が終わると、治癒医は忙しそうに他の病室へ向かった。
ララはシャボンの中のナターシャを覗き込む。
定期的な呼吸を繰り返すナターシャを見て安心した。
ララ(とりあえずなんとかなったけど…治癒にはお金が必要…しかも3日以内…アルロ兄さんは遠征に行っていてしばらくは戻ってこれない)
ララは頭を抱えた。
ナターシャを失う怖さと、1人でなんとかしないといけないことへの重圧で今にも押しつぶされそうだった。
それでも自分が動かなければ、大切な妹を守ることができない。どうにかしてお金の工面ができないか方法を頭の中で巡らせる。
ララ(とにかくお金…仕事に行って、いくら前借りできるか聞いてみよう)
ララ「かんばって…ナターシャ…」
ララはシャボンの中のナターシャにそう言うと病室を後にした。
外に出るとうっすらと夜が開け始めていた、まるでおとぎの国から現実に連れ戻されたように朝の日差しは眩しく寒かった。
*
「給料を前借りさせて欲しい?」
ララは翌日学校には行かず、朝から宴会場の仕事場に行った。
エイミーは宴会の仕込みのためにバケツいっぱいのさやエンドウのすじをとっていたが、ララの申し出にその手を止めた。
ララ「はい…急に大金が必要になってしまって…」
ララも椅子に座りさやえんどうの筋を取り始めた。
エイミー「そりゃ大変だ…大丈夫かい?1ヶ月分…ぐらいならなんとかなるけど」
ララ「…ありがとうございます」
(だめだ…それじゃ全然足りない…)
エイミー「…足りないんだろ。困ったね、いつまでに必要なんだい?」
ララ「…2日後までに用意しないといけなくて…」
エイミー「2日!?そんな急に…。即金になるなんて何かを売るしかないけど…何か売れそうなものは持ってないのかい?」
ララ「もう…何もないんです」
エイミー「それは困ったね…」
エイミーもララの助けになりたいが、できることは限られていた。
ララ「すいません、困らせてしまって…これ届けて来ますね!」
ララはすじを取り終わったさやえんどうの入ったバケツを抱えて立ち上がった。
エイミー「…ああ、ありがとう」
ララはエイミーがあまりにも心配そうな顔をしているので笑顔を作り、厨房棟に向かった。
厨房棟に行った帰りララは洗面所に寄った。
個室に入っていると外で何やら女の人が2人大きな声で話しているのが聞こえる。
「本当に信じられない!私のドレスに紅茶のしみをつけたのよ。それも1番目立つところに、あのメイド絶対クビにしてやる!」
「そんなに怒らなくても、他にもドレスはいくつもあるでしょ?」
「一度着たドレスを着るなんて、そんな恥ずかしいことできないわ!ましてや、皇子様の誕生パーティーよ」
「じゃあ、どうするつもりなの?」
「明日にでも仕立て屋を回ってドレスを探してくるわ。どうせ上等なドレスは残ってないでしょうけど」
女たちの声が遠ざかり完全に聞こえなくなったのを確認すると、ララはトイレの個室からでた。
ララ(…そうだ…ドレス…あのドレスなら高値で売れるかもしれない…)
ララは手を洗いながら考える。
ララ(あれはノアがくれた大切なドレスだけど…今はパーティーに行ってる場合じゃない。それにパーティーに行ったところで何かあるわけでもない…ノアと自分の世界の差を見せつけられて落ち込むだけよ。それなら…)
ハンカチで手を拭きながら鏡に映った自分を見てララはゾッとした。
青白く、目の下にはクマができている。
水道を再び捻り自分の顔に水をかけて気合を入れる。
ララ「……みんなが言ってた通り、私は悪女なんだわ」
顔についた水と涙を湿ったハンカチで拭き、ララは歩き始めた。




