ララとアルロ
アルロ「それで、急用ってなに?」
林の中を馬で駆けながらアルロが聞いた。
ララ「玉子が…………」
アルロ「え?」
ララ「玉子が50円セールなの!」
背中に埋めていた顔を少し上にむけてララが大声で言った。
アルロ「それは………安いな!」
ララ「お一人様1パックまでだからお兄ちゃんも一緒に並んでね!」
ララとアルロは父親は違うが血の繋がった兄妹だ。
アルロは母親の連れ子なので家名はキッシンジャーを名乗っている。
アルロ「もちろんだ、かわいいララのためなら何時間でも何回でも並んでやる!」
ララ「いや、お一人様1パックだから。あ、でも、もし1家族一パックだったら他人のフリしてね。今日みたいに。」
アルロ「その学校では他人のフリって本当に必要なのか?お兄ちゃんはかわいい妹を自慢したい!」
ララ「いやよ、お兄ちゃん無駄にモテるから。手紙を渡すようにたのまれたり、普段の様子を聞かれたり、彼女がいないか聞かれたり…とにかく休み時間のたびに誰かにつかまっちゃうんだもん。トイレにだってゆっくり行けないわ。」
アルロ「……でも、ララに変な男がつきまとったりしないか心配だよ…ララは天使のようにかわいいからな!」
ララ(こんなにシスコンでただの攻撃魔術バカだってみんな知らないんだよね…)
ララ「変な男なんて魔術学校にはそんなにいないでしょ?みんなお金持ちで頭の良い人ばかりよ。さっきもみんな優しかったもの。……顔はよく見えなかったけど」
ララは生まれつき視力があまり良くなかった。よく見ようと目を細める仕草が相手を睨んでいるように見えてしまっていたのだ。
アルロ「男なんてお兄ちゃん以外はみんな変な男だ!ララみたいにかわいい子はすぐに狙われちゃうんだぞ」
ララ(いやいや、お兄ちゃんも結構変な人だけど…)
ララ「じゃあ皇子様も変な男なの?さっきの青い髪の人はノア皇子でしょ?」
アルロ「……」
ララ「皇子様の顔だけはもっとよく見たかったな。かっこよかった?」
アルロ「うん…いや…ゴリラみたいだったぞ…」
ララ「うそ、ゴリラ?てかゴリラもよく見たことないけど…」
アルロ「…まぁそんなもんだ…それよりララ、父さんに買ってもらったメガネはどうした?」
この国ではメガネはちょっとした高級品だ。視力をよくするにはメガネをかけるか、視力治癒魔法をかけてもらうしかない。視力治癒魔法をつかえる魔術師は国内でもかぎられていて、治癒を受けるにはやはり高額な治療費が必要となる。
ララ「…ちょっと壊れちゃってて、今修理にだしてるの」
アルロ「そうか、でもララの視力じゃ転んだり事故にあったりしないか心配だな…」
ララ「大丈夫よ。よく見えないだけで全然見えないわけじゃないし。兄さんたら心配しすぎ」
アルロ「心配ばかりだよ、それに俺はララの保護者なんだぞ。亡くなった父さんと母さんと約束したんだ。ララを守るって」
ララ「お兄ちゃん…ありがと…」
2年前アルロが魔術学校を卒業し騎士団に入団したすぐ後、両親は不慮の事故でこの世を去った。その前からアルロは妹に優しかったが両親が亡くなってからは異常なほど妹を可愛がっている。
アルロ「お尻痛くないか?」
馬をそれなりの速度で走らせていたアルロはララに聞いた。
ララ「ううん、全然平気。それより玉子、先着だから急いで!」
アルロ「!!よし!お兄ちゃんにしっかり捕まってろよ!」