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入学式


 背の高い木々からなる林の真ん中に岩で作られた荘厳な城がある。ここはある王国の魔法魔術学校だ。


 今日は新入生の入学式。

 青々とした中庭の芝生の上には新入生の男女約60人が集まっていた。


 魔法魔術学校は特別な学校だ。


 高等教育を終えた18歳以上の健康な男女で、難易度の高い厳しい試験を通過した者だけが入学が認められる。

 その上、学費が高額なのでこの学校に入学できるのは国民の中でもごく一部の者だけだった。


 女子は紺色の丸襟のシャツに赤いシルクのリボン、黒いロングスカート。

 男子は紺色のシャツと黒のスーツに赤いネクタイ、男女とも胸には校章のエンブレムが付いている。


 会場に20頭の馬に乗った騎士団が颯爽と到着した。


 その精悍さに皆の目が釘付けになる。


 騎士団は魔法魔術学校の卒業生の中で毎年攻撃魔法成績上位10名が入隊できる軍隊で魔法戦術に長けた隊だった。


 濃いグリーンの長いマントをまとった騎士団中でも先頭に立つ金髪の騎士は端正な顔立ちをしていて会場の女性から熱い視線を集めていた。


女子生徒「見てみて!あの先頭、アルロ様じゃない?」


女子生徒「あぁ〜かっこいい!こんなに近くで見れるなんて本当に入学できてよかった!」


 騎士団の先頭に立つのはアルロ・キッシンジャー。

 彼は22歳という若さで班長になった騎士団期待のホープだ。

 その金髪と顔だちから学生時代からものすごい人気だった。


 司会の男が大きな声で開会の挨拶をはじめた。


司会「お集まりの皆様方、只今より第126回魔法魔術学校入学式をはじめます。まずは騎士団から入学祝いのセレモニーです」


 騎士団は腰から剣を抜き空高く突き上げる。すると剣先から眩い光が放たれ上空に花火が上がった。


 会場は拍手と歓声があがる。


司会「続きまして新入生代表の挨拶を今学期主席で入学されたノア・アレクシス皇子にお願いします」


 この国の第三皇子であるノア・アレクシスは長身でがっしりとした体格をしていた。整った顔だちで甘く優しげな瞳。見つめられた女性はいつもこの瞳に魅了されてしまうのだ。極め付けはサラリとした青い髪、この国では皇室でしか生まれてこない青い髪色は高貴な雰囲気を漂わせていた。


 この国の王室は政治的に中立であくまで「助言し、警告をする」権利を持っている象徴的な君主制だ。しかし王室に対する国民からの人気は高いままである。


ノア「私の入学に関しご指導いただいた全ての方に感謝しています。本校に入学した以上は私も1人の生徒として分け隔てなく接していただきたいと思っています…」


 ノアの甘く優しげな笑顔に女子生徒が色めきだつ。


女子生徒「うわぁ、素敵…」

女子生徒「皇子様と同級生なんて…将来プリンセスになるチャンスじゃない?」


 入学式は一通り終わり会場は歓談の時間となった。


 新入生の中に一際目を引く美人がいた。


男子生徒「おい、見てみろよ。あのピンクブロンドの髪の長い子」


男子生徒「うわ、かわいいな。声かけてみる?」


 2人の視線の先にいたのはララ・フローレンだった。


 真綿のような白い肌、ガラスのように透き通った薄いブルーの瞳、ピンクとゴールドが繊細に混ざり合う長い髪。彼女もまた新入生の1人だ。


 周りの男子が彼女をチラチラと見る中、1人の銀髪の男子がツカツカとララに向かって歩いていく。


銀髪男子「ねえ、君すごくかわいいね!」


ララ「………」


 ララは微動だにせず一切答えない。


銀髪男子「僕はマックス。君の名前は?」


 マックスと名乗った青年は人懐っこい笑顔で笑う。


 ララはマックスの方に振り返るとその大きな瞳を細め眉間にシワを寄せ、ものすごい目つきでマックスを見た。

 その顔はあまりに険しく周りの生徒たちをギョッとさせてしまった。


男子生徒「おい…あいつめっちゃ睨まれてるよ」


 だがマックスは、そんなララの表情にも嬉しげだ。


マックス「わぁ、見つめられてる!」


ララ「…………」


 ララの顔が一層険しくなる


 すると後ろからノア・アレクシスが現れマックスの肩を掴んだ。


ノア「おい、マックスやめとけ。お前すごい睨まれてるぞ」


マックス「ノア、この子すごい美人だろ。友達になりたくて…」


 ララはノアを見ると一瞬びっくりしたような顔になったがすぐに目を細め眉間に皺を寄せた。


ノア「いや、迷惑だって顔されてるだろ」


ララ「…どいてください」


マックス「え?」


ララ「…どいてください!帰るので!」


 突然の大きい声に周りは一斉に静まり返る。


マックス「お嬢さまはもう帰っちゃうの?全然お話できなかったなー。なんか用事があるの?」


 マックスは銀色の瞳でララをのぞきこんだ。


ララ「………」



ノア「マックスしつこいぞ。すいません、こいつうるさくて」


ララ「…急用がありますので」


 ノアの顔を見るとララはうつむいた


ノア「もう、夕方になります。暗くなると林の中は獣がでますので、お送りしましょうか?」


 ララは俯いたまま答える。


ララ「…結構です。私は貴方のような人に送ってもらうことはありません」


 ララは俯いたまま答えた。あまりに辛辣な言葉にその場が凍りつく。


女子生徒「かわいいからってキツすぎ…」


男子生徒「皇子にあんな言い方するなんてお高くとまってんな。どこの令嬢だよ」


 そんな中、1人の騎士が馬を走らせ彼女のすぐ横でとまった。金髪の騎士アルロ・キッシンジャーだった。


アルロ「私がお送りしましょう」


 アルロは馬上からララに手をさし出した。


 皇子の申し出を断った彼女が次はどんな暴言を吐くのかその場にいる全員が固唾を呑んでいた。


 しかしララはにっこり笑ってその手を握りグッと力を入れて馬上に舞い上がった。


 そして天使のような笑顔でアルロにギュッとしがみつくララ。


マックス「かわいいお嬢さん、お名前だけでも教えてよー」


ララ「…ララ・フローレン」


 小さな小さな声だった。


 アルロがノアに対して敬礼し、にっこりと笑顔をうかべる。


アルロ「ノア皇子、馬上からで申しわけありません。御入学おめでとうございます。それでは、失礼いたします」


 キラキラの笑顔でアルロは彼女を乗せて風のように走り去っていった。


女子生徒「なにあれ!」

女子生徒「アルロ様の彼女なのかしら?」

女子生徒「嘘!信じられない…」

男子生徒「騎士団かっこいいな…」


 生徒たちが騒然とする中マックスは相変わらずニヤニヤしている。


マックス「ララだって!かわいい名前〜」


ノア「…ララ・フローレン…」


マックス「金髪ナイトに横取りされちゃったね皇子様。プププ」


ノア「ふざけんなよ、幼馴染のお前のフォローしようとしたんだろが」


マックス「僕のせいにしないでよ〜。あの子、ノアのタイプでしょ」


ノア(…確かに顔はものすごくタイプだったけど…)


ノア「気が強いのは悪くないが、俺はもっと守ってあげたくなる純粋な感じの子がタイプなんだ」


マックス「へぇ〜。…じゃあ、まだまだかわいい女の子たくさんいるから、探しますか!」


ノア「…お前、ほんと懲りないな」


マックス「そこのかわいいお嬢さま方〜。皇子様とお話ししたい人いたらその前に僕とお話ししましょうね〜」


 楽しそうなマックスとため息をつくノア。


 2人はあっという間に女子生徒に囲まれた。

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