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告白と、ベランダを流れる流れ星

 春の星を眺めてから半年くらい。今泊まりがけで眺めているのは、秋の星。


「先輩……」


「うん」


「先輩って、なんかちょっと街の灯りとかがあって、星が見えにくい空が好きなんですよね」


「……そうだな。うん」


「それってどうしてなのかって、聞いたことないから、聞いてみたいです」


「あー、理由……うん、理由はねー」


 僕は木星と土星を見ながら、色々と考えた。


 惑星は明るいから結構どこからでも見えるんじゃないかなあ、といった、関係のないことまで。


 僕は口を開いた。


「なんとなく、たくさんの星が見えるのは、都合がいい気がして」


「都合がいい、っていうのは、見えすぎるってことですか?」


「そうかも。なんかいつも夜まで灯りをつけてるのに、星を見るときだけ暗い世界に行きたがるって、都合がいいというか、ほらまるで、やることを上手くこなしていくタイプの人みたいじゃん」


「あー、てことは先輩とは違うってことですかね」


「うん。まあ僕はほら、なんかぼんやり明るいままあんまり星が見えない空の方が、近いだろうからね。なんかだらけてて輝ききれてない感じ?」


「ふふ。先輩、あの、私も、先輩はこういう星が見えにくい空だなあって思うんです」


「そうかやっぱりね」


「でも先輩と解釈は違います。私は先輩がとてもいいと思うから、街中の空みたいだなって言ってるんです」


「……」


「だって、明るいんですよ。明るいから、遠くの星が見えないんです。遠くの星をたくさん見ようとするわけではなく、手元を照らすのは、やっぱり先輩みたいだと、私は思うんです」


「……ありがとう」


「いえ、私はいつも照らされてましたから。別にそんな、部活としてすごい成果を残さなくても、誰かが……明るい気持ちになれたなら、やっぱり私は先輩はいい先輩だと思うんです」


「……」


「……あの、流れ星……いえ」


「流れ星……流れたり、するかな」


「いえ、そんな簡単には、しないですよね」


 深結芽はそう言いつつ、でも何が流れてもおかしくないという身構え方をした。


 でも流れなかった。


 深結芽は提案してきた。


 暗いけど、少しは明るい、そんな空間の中で、今晩はずっと隣にいる深結芽の提案。


「そろそろ、流れ星が流れると思うんです。だからお願いごとみたいなことしませんか?」


「わかった」


 まるで活動記録に残ってる、流れ星に願うつもりが声に出して告白してしまった女の子のようだ。


 いやそれを超えるかもしれない。


 だって、流れてないのに、流れたことにしちゃうんだもん。


 深結芽は予言者でもないからほんとにただ……


「え」


 今……流れた? 気がした。


 気分の問題としてそうなっただけなのに、つぶやいてしまう。


 

「「すき」」

 

 二人の声はどこか遠くを流れるわけでもなく、ただ、深結芽と僕のいるベランダを流れるだけだった。


 

お読みいただきありがとうございます。


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