深結芽 春の星
さすがに高校に入ってすぐ学校に行きたくなくなるとは思わなかった。
厳密には最初は行けなかったんだけどね。
私は高校の入学式に行く途中で、体調が悪くなって倒れてそのまま病院に行った。
そしてその後、そのまま少し入院してから、登校した。
でも登校しても、やっぱり体調が悪くなって保健室に行ったりすることもよくあって。
そしたらなんか私がしょっぱなから授業サボりまくるすごい人みたいに思われて、なんか私もそんなこと思うみんなを信用したくないし友達とかになりたくないないなって思ったし、向こうは向こうで、もう友達グループもでき始めてるから私のことはたぶん興味なかった。
で、なんかそんなふうになると学校行きたくなくなって、なんか体調もまた悪くなって。
そうしたらもう疲れてしまって不登校モードになってしまった。
でもそんなある日、先生に、なんか部活探してみたら気分も変わるかもって言われて、でも正直部活に興味なくて、でも先生がそう言ってくれてるんだし、学校に行って部活探してるフリでもするかと思った。
そして学校にだらだら残っていると、なんか暗くなってきて、悲しくなってきた。
みんな楽しそうに帰ってたしなあ……。
と、ほぼ人がいなくなった部室棟を見上げてたら、一人の男の子がベランダから出てきた。
星を見てた。
のんびり見てた。
だから私もつられて夜空を見上げたら、なんか思ったよりも少しだけ明るくて。
そして流れた……かもしれないと思った。
流れ星が見えたような気もしたけど、なんか私のそんな期待が気のせいをリアルに感じさせただけだと思った。
でも、男の子がこちらに気づいたのはリアルな出来事で。
「あ……こんばんは」
と挨拶してくれた。
だから私も挨拶して。
で、そうして私は先輩と出会った。
部活を探すって言って何もせず終わるのが悲しかったのもあって、私は先輩の部室を見てみることにした。
天文部らしい。
「いやー、あのほんとにごめんなさい。ほんとになんかだらけてる痕跡だけ残ってて望遠鏡なんか隅で」
「いえ」
私は部室を眺めた。なんかしばらく人がいじってなさそうなところばっかり。
でもお菓子と漫画はど真ん中にあった。
「なんかだらけた部活みたいになっちゃってて。今年から。でもやらなきゃなあって思ってはいるけど、でもやっぱり僕にも部活にも魅力がないのか誰も乗ってこなくてね、みんな幽霊部員だね他の人は」
「そうなんですか」
「うん」
私はベランダの方に向かった。高いところから、さっきの夜空を少し見てみたくて。
「あ、ベランダからみる星はまあちょっと綺麗かも」
先輩がベランダのドアを開けながら案内してくれた。
「今日はなんか、部活とか見てまわってた感じ?」
夜空を見上げながら、先輩のそんな質問を、私は受け取った。
「……いえ、ほんとは見てまわるべきだったのかもしれないですけど、ただ学校をうろうろしてただけで」
「……なるほど」
「……私、今色々あって不登校っぽくなっちゃってて」
「そうなんだ。あ、でも、あせんなくても、大丈夫だと思う。いや、僕てきとうなこといいやすい人だけど。いやでもそう思う」
「……でもやっぱりなんかあせっちゃいますね」
私は本音を出会ったばかりの先輩に言った。
そしてそれから不登校になるまでのことも、星に向かうように、でも本当は先輩に向かって話した。
先輩って……なんか私があせってるのも気づいてるっぽかったし、話してるとなんか、甘えたくなるところあるし……結構すごくて面白い人なんじゃないかな、と思っていた。