泊まる日の放課後
学校にお泊まりはだいぶ前から禁止されている。
でも、天文部は代々こっそりやっているというのが伝統だ。
星空を観察したりだらだら夜を過ごしたりするのは、天文部においてとても重要で、こっそりでもやるべきだということになっているからだ。
そして今年もやるつもりではあったんだけど、幽霊部員をのぞいたら、深結芽と僕だけしかいないので、二人でお泊まりになってしまう。
だからやろうとも言わずにいたんだけど、深結芽の方からやろうと言われてしまったわけだ。
お泊まり当日。というか一日後。
少し大きめの袋を持って登校する僕。
別に違和感はない。だってそんな一泊なんて大したことないし。
シャワーは部室棟の端にあるけど誰も見張りになんか来ないし、バレようがないと思っている。
だって代々バレてないんだからな。
だからなんでこんなに緊張してるのかといえば、深結芽と泊まるからなんだろうな。
すぐに授業は終わった。
寝てたらすぎたという見方もできるけど、まあほらね、星の寿命とか宇宙の歴史とかから見たら六時間なんてすぐでしょ。
僕は天文部の部室に向かった。
「はい先輩! 見てくださいこの部室のお泊まりモードを」
「うわ。布団……」
部室棟のベランダに行ける扉のすぐそばに布団が一つ。
なんで出したんだ。いや部室にあったけどねたしかに。ダニがいっぱいいそう。
「やっぱり汚そうなんでしまいますか」
「うん。寝るなんて一日なら僕は床でいいよ」
「私はゆかはやだなあ。じゃあ私ソファでいいですか? 先輩もソファの方がいいと思います。ギリ二人入ると思うし」
「いいよ床で。というか星一晩見るんだからほとんど寝ない……予定ではあるんだし」
「たしかにそうでしたねー」
のんびりと布団を片付ける深結芽。
そして、普段通りの部活が始まる。
今日はそれが特別に長いというわけだ。