量子コンピューターTHE EARTH
ー何か面白いことないかなぁ。
海原優太は高校からの帰り道に赤いロード用自転車の車輪をゆっくり廻しながら何気に景色を眺めていた。
自宅から一番近い駅のロータリーに到着すると自販機の炭酸サイダーを買おうと自転車を停めた。サイダーのボタンを押してからsocialポンで決済を済ませてペットボトルの蓋を開けて近くのベンチに腰掛けてまた何気なく街並みを眺めた。
ーん、なんだ、あれ?
小学生低学年くらいの車椅子に乗った少女が人通りの少ない場所を選びながら駅の改札に近いこちらに向かってきているが、隣接する公園を見ると車椅子の車輪を廻す手を止めて唇を噛み締めた。
優太が公園のほうを見ると同じく小学生低学年くらいの女子2人と男子1人がジャングルジムに登って楽しそうに遊んでいた。
「気付いたかい?あの車椅子の少女が今日の君のターゲットだ。さぁ、なんて声をかける?」
突然ベンチの隣に現れた男が優太に流し目で話し掛けてきた。
「うおっ、立体映像も出てくるのかよ!」
優太が目を大きくして驚くと男はさもありなんといった風に満足気に笑った。
「あはは~ぁ、君はいちいち僕好みの反応をするね~ぇ!今朝話さなかったかな?その君は瞳につけたコンタクトレンズに仕込まれたテクノロジーだ~ょ。」
優太の瞳を指差しながら男はおちゃらけながら答えた。
「お前は言ってねーし、俺は聞いてねーよ!それに語尾を伸ばすんじゃねぇ!鬱陶しい!なんだ?怒らせたいのかお前は俺を?」
お前と俺のゼスチャーを交えながら顔を真っ赤にして優太が応じた。
「きーみは鉄分足りないんじゃないの?そーんなキレやすい性格で、よ~く今まで生きてこられたね?」
頭を指差しながら
「文頭も伸ばすんじゃねぇ!いやこっちのほうがまだましか?って違うわ!他に説明してないこと今全部話せ!」
「そーのノミより小さな単細胞頭に、わーたしの説明が理解出来るのかな?そーれよりも車椅子の少女行っちゃうけど、きーみは行かないのかな!?」