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伝説の秘宝


「姉御!大変ですぜ!領主がこちらに向かってるようですぜ」


 盗賊のゴツイ男がラヴォワに向かって叫んだ。


「人数はいかほど?」


「それが……全員で4人ですぜ。馬でこちらに向かって来ていやす」


「4人ですか?少な過ぎ……ですわね。罠でしょうか?」


 ラヴォワは日傘をクルクルと回しながら、包帯の奥にある目を細めた。


「村の近くに伏兵が隠れるような所はあるかしら?」


「少数なら隠せる場所はありやすが、大規模になると……」


「そうですか……上の兄上は直情的ですし、そこまで絡めてに警戒する必要はないわッ!?」


「ガハハハハハ!我輩はここにおるぞ」


 いつの間にかラヴォワの後ろに、ドミティアが立っていた。


「な!」


 ラヴォワは咄嗟に横に飛びつつ、右手を振り大きな針をドミティアに投擲する。


 ドミティアは何事もなく、向かってくる針を人差し指と中指で受け止めた。


「ふむ!こんな物で我輩を攻撃するとは片腹痛いぞ」


 そのまま指の向きをラヴォワに向けて、ドミティアは針を投げ返そうとした。


「駄目なの~だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 スイの叫び声に戸惑い、ドミティアは自身の行動を停止した。


 スイが迷惑をかけたので、身を張ってラヴォワを助けたのかと一瞬リオンは思った。


「針を投げ返すなんてカッコイイのだ。僕がやりたいのだ。お願いなのだ!」


 しかしリオンの考えは一瞬で、木っ端微塵に打ち砕かれた。


 どこまで行ってもスイはスイでしかなかった。


「あ、あのう。スイちゃん。我輩はどうすれば……」


「審判者ちゃんは待機なのだ。ラヴォワちゃんは僕に向かって針を投げるのだ」


 スイは自分の欲望に忠実で、ラヴォワにワクワク顔を向けている。


「え?ええ?」


 ラヴォワはスイへの免疫がなく、かなり混乱している。


 従者の主たるリオンも、今でも戸惑うのだ。


 赤の他人ラヴォワにそれを求めるのは、酷というものである。


「ラヴォワよ。一先ずはスイちゃんの言う通りにするのだ。我輩等の話はその後にすればよい」


「本当によろしいので?」


 本来なら記憶の中にある兄とは対立していたはずなのだが、ラヴォワはなぜだかドミティアに悪感情が湧いてこなかった。

 

 姿以外は全く異なっているドミティアだったが、ラヴォワはなぜか疑問を持つ事はなかった。


「くどい!」


 ドミティアは怒気の籠った声で一喝した。


 その威圧に一瞬怯んでしまったラヴォワだったが、何とか正気を保つことができた。


 リオンは漏れ出た怒気で盛大に漏らしていたが、身に付けた失禁を隠す秘技で皆から目を逸らす事に成功した。


 本当に無駄な技術である。


「ここは貴方に従いましょう」


 ラヴォワはスイに向かって、自身の左手を差し出した。


「ありがとうなのだ。思いっきり来るのだ」


 スイは右手で左目を抑えながら、変なポーズを取る。


「それでは行きますわよ」


 ラヴォワは左手を振り、スイに向けて高速で1本の太い針を飛ばした。


 針は真直ぐスイの額に向かって飛んでいく。


 スイはその針を左手の人差し指と中指で挟み…………そこない、スイの額に突き刺さった。


「ぎゃああああああああああああああああ」


 可愛らしくない悲鳴が、村中に響き渡る。


 スイは地面を転がりまわり、盛大に針の攻撃を痛がっていた。


 当然である。


 スイは魔法職であり、物理攻撃には耐性があまりない。


 その上、スピリト【中二病】で弱体化しているから、高速で飛んでくる針を掴む筋力はなかった。


 流石に今回はリオンもラヴォワに対して怒りは全く湧いてこなかった。


 むしろ中二病患者に巻き込まれたラヴォワに、同情の目を向けている。


「あ、あの……大丈夫でしょうか?」


 自分の攻撃で盛大に痛がっているスイを見て、ラヴォワは心配になる。


「ラヴォワさん。スイの事は放置でいいですよ。発作みたいなモノなので」


「そ、そうでしょうか?とても痛がっているようですし、ポーションをお使いになった方が……」


「大丈夫ですよ。それよりも、そちらの方と話があるんですよね」


 リオンはラヴォワに、傍に立つゴツイ男と話すように促した。


 ちなみにリオンは牢屋から解放された時に、スティリコとは言葉を交わしたが、ドミティアとは会っていない。


 リオンの怒りに触れるのが恐ろしくて、スティリコを差し出し隠れていたのだ。


 眷属とはどこまでも、主に似るものである。


 全く怒っていない事を知って、今のドミティアは堂々と姿を現しているのであった。


 なのでリオンはドミティアの正体も、その存在も全く知らない。


 いつもの怖い物には触れないという本能が発動し、見るからに獰猛そうなドミティアをラヴォワに押し付けようとの生存戦略を図ったのだ。


「我輩は主に会いに……」


 凶悪だが情けない顔がリオンの傍に迫り、慌てて顔を晒した。


「いや、まずはラヴォワさんに……」


 リオンは怖いので、何とかラヴォワに押し付けようとする。


「分かりました。我輩は主の命に従いましょう。我輩は特に用はないのだが、何か我輩に用があるのか?ラヴォワよ」


 情けない顔が厳つい顔に変貌し、ドミティアはラヴォワを睨みつける。


 ラヴォワは以前のドミティアでは感じられなかった威圧を受けて、内心戸惑っていた。


 ドミティアは陰謀をめぐらすよりは、暴力にモノを言わすタイプだった。


 以前のドミティアであれば、ラヴォワが余裕で制圧できる程度の力しかなかったのだ。


 しかし、今のドミティアには底知れない力をラヴォワは感じていた。


「貴方は本当にわたくしの兄上のドミティアですの?」


 ラヴォワは力では敵わないと感じ、小手先の探り合いを諦め、素直にドミティアに質問をする。


「我輩か?我輩はドミティアであるが、お主の知っているドミティアではないぞ。我輩は主の下僕でしかない。がハハハハハ」


 ドミティアはチラリとリオンを見たが、ラヴォワもそれに気が付く。


 リオンはドミティアが怖かったので、一切そっちを見ないようにしていたのでドミティアの視線には気付かなかった。


 しかし、ドミティアの行動と発言にラヴォワは驚愕する事しかできなかった。


 選民思考の塊のドミティアが平民の男を主と仰ぎ、自分自身を下僕と呼んでいたのだから。


「本当に……別人の様……ですわね。あちらの方はどういった方なんでしょうか?」


「あの方こそ我輩の主にして絶対の王だ!ガハハハハハ!」


「そうっス。こちらの方が女性に絶対モテない王っス!コケコケコケ!ぐえ」


 リオンはヤキトリを踏みつけると、右手で掴み遠くへ投げようとする。


 しかし、リオンの左腕が勝手に動き、投げ切る事が出来なかった。


 ガキン!!


 リオンの左腕の方から大きな金属音が鳴った。


 ネルがリオンの左手にしがみ付いて盾となり、生き残っていた兵士の投げたナイフを防いだのだ。


「の~な~!リオンはねぇねが守るの な。これが【ねぇねの嗜み】って奴なの な。ぷす~」


 ネルは鼻を大きく膨らまして、ぷす~と鼻息を吐く。


 とっても可愛いらしいのであった。


「ありがとう、ねぇね!俺を守ってくれたのか」


「の な!の な!の な!【ねぇねの嗜み】は、ここからが本番なの なぁぁぁぁぁ!伝説の秘宝を使うの な!のぉぉぉぉぉぉぉぉぉなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 リオンの左腕にしがみ付いていたネルが叫ぶと、体が激しく輝きだした。


 眩しすぎて目を瞑るリオンだったが、光が収まったのか薄っすらと瞼を開けた。


 リオンの瞳に飛び込んできたのは、ワンピースが捲れて幼女パンツを露わにしているネルであった。


 ネルは勝ち誇ったように目をキラキラさせてリオンを見つめていた。


「どうなの な?どうなの な?これでねぇねの忠誠パラメーターは120%を超えたの な」


「お、おう!」


 リオンはロリコンではないので、ネルの幼女パンツを見ないように顔を背けた。


「リオン、もっとしっかりと見るの な。これは貴重な伝説の秘宝なの な!」


 ネルの迫力に押されて、リオンはチラリとネルの幼女パンツを見た。


 するとそこには魔王の姿がバックプリントされていた。


「え?あ、あのう……そのパンツの絵柄は……」


「そうなの な!数々の困難を乗り越えて手に入れた伝説の秘宝なの な

!」


 嬉しさが我慢できないのか、ネルは目をパカッと開き、鼻の穴がピクピクと痙攣させいた。


 リオンはネルの言葉を聞いて絶句した。


 伝説の秘宝が自分の姿がプリントされたパンツだなんて、何の冗談だと叫び出したいリオンであった。


「ねぇね!そのパンツを……」


 リオンはその次に続く言葉を飲み込んだ。


 パンツを脱いでと言おうとしたリオンであったが、それは変態への片道切符だと気付いたのだ。


 この状況で見た目9歳の幼女のパンツを脱がせれば、衛兵さんに連行される事案間違いなしだったからだ。


「リオン、ねぇねのパンツがどうしたのだ?」


「いや、何にも……ない」


 リオンは誤魔化すために思わす視線を、逸らした。


 そこにはシューリンがリオンの肩叩き券を握りしめてブツブツと呟いていた。


「駄目よ。お母さんにはリオンちゃんの肩叩き券があるのよ。自信を持って。で、でも魔王様のパンツは……駄目駄目。リオンちゃんから直接貰った買叩き券よ。私にはコレがあるの。でも羨ましい……」


 シューリンは突然明るい顔になってウンウン首を縦に振ったり、青い顔になってプルブルと横に振ったりしていた。


 リオンの目には恐ろしい妖怪に見えたので、シューリンを視界から外して見なかった事にした。


「いいのだ。ネルちゃんが羨ましいのだ」


 シューリンの横では、スイが人差し指を口に咥えて羨ましそうにしている。


 ネルはそれに自信を深めたのか、我慢していた鼻息がぷす~ぷす~と漏れていた。


「ねぇねは数多の困難な試練を乗り越えてきたの な。世界に3つしかない秘宝を手に入れたの な」


「僕は試練に落ちてしまったのだ。悔しかったのだ。むーなのだ」


 スイは頬を膨らませて、可愛らしく拗ねていた。


「思い出したの な!スイの弟子が秘宝を手に入れていたの な!」


 ブチ!


 何かが切れる音がした。


 ブチ!ブチ!ブチ!ブチ!ブチ!ブチ!ブチ!ブチ!ブチ!ブチ!ブチ!ブチ!ブチ!


 完全に何かが切れる音がした。


 リオンがそちらに顔を向けると…………。


 般若の形相をしたスイが、多量の魔力を垂れ流していた。


「許さないのだ。許さないのだ。あの爺ぃ……。僕をおいて……許さないのだ」


 凶悪な魔力がスイを取り囲むと、彼女の体が光り輝いた。


「リオン!ヤバイの な!早くねぇねの背中の乗るの な!」


 ネルは盾を解除すると、リオンの足元で屈んで自分の背中に乗るように促した。

【次回予告 ブチ切れスイちゃん怖いっス。どんな化物っスか】

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