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テンプレ傲慢な徴税請負人


「ここは……知らない天井だ。悪夢を見ていたような……」


 リオンは意識を覚醒しようとして、頭を振った。


「コケ!主がまたカッコつけてるっスよ。ここはテンプレ異世界じゃないっスよ。主に都合のいい事なんで起こらないっス。いつになったら自分の現実を受け入れるんっスかね。コケコケ」


 ヤキトリがリオンの胸の上で、こちらにケツを向けてリオンに鋭いツッコミを入れてくる。


 リオンはヤキトリのケツをこちらに向けてくる行動が、竹串を突っ込んでくれとのフリなのではないかと疑問に思った。


「何を言ってる。俺はいつでも現実を受け入れている」


「コケ?そういう割に、主はシューリンちゃんのボクサーパもごもご」


 リオンは続きをシューリンに聞かれたらヤバイと感じ、ヤキトリのクチバシに枕を突っ込んでおしゃべりを封印した。


 そんな微笑ましい朝のひと時を過ごしていると、外で騒がしい声が聞こえてきた。


「何か外が騒がしいな」


「主!またっスか?またテンプレっスか。これだから鈍感系主人公は……」


 ヤキトリは封印をいとも簡単に脱出し、己の仕事を全うしようとツッコミを入れる。


「ふざけるなよ!俺は鈍感系主人公じゃない!人の心の機微には聡いんだ」


「コケ~!その割には従者に裏切られてるっスね。コケコケコケ。笑い過ぎて腹の脂肪が揺れてしまうっス」


 ヤキトリは笑い過ぎてリオンの胸から転げ落ちると、リオンの股にハマり込んだ。


 それでもヤキトリの笑いは止まらず、脂身の腹が上下している。 


「うぐ!痛いところを……」


 リオンはヤキトリの口撃にクリティカルヒットを受けたが、ヤキトリもまたダメージを受けたのか朝の脱糞を盛大にやらかしている。


 従者の裏切りという言葉で3人娘達が漏らした殺気に、ヤキトリがやられたようだ。


 ただヤキトリが粗相した場所が場所だけに、リオンが夜中に粗相をしたようにしか見えない。


 このままだとリオンが寝糞をしたとの疑いがかけられる事は濃厚なので、リオンはこの後寝具を洗わなければならないと今日の予定を決めた。


 彼等の行動とは関係なく、外の喧騒は次第に大きくなってリオンも無視できなくなっていく。


「少し様子を見にいくか。よいしょっと」


 リオンが寝具から起き上がると、ネルが空中に飛び上がりリオンの足元で屈んだ。


「の な!リオンはねぇねの背中に乗るの な」


「いや……ねぇね。俺は自分の足で歩きたいんだが……」


「駄目なの な。これはねぇねの朝の日課なの な」


 ネルは頬を膨らませて、イヤイヤをする。


 この様子だけを見ていると可愛い幼女なのだが、対処を間違うとバットエンド一直線なのでリオンにとっては命がけだ。


 もっともネルには姉という弱点があるので、リオンはココさえ押さえておけば間違って爆散することもないだろう。


「ねぇね。弟が独りでお遣いに行くところを、ねぇねにしっかりと見守ってて欲しいんだ」


「分かったの な。今回は【ねぇねの嗜み】を封印するの な。ねぇねの務めをガンバの な」


 ネルはオンブする事を素直に諦め、可愛いお鼻をぷす~としながらリオンの手を取り自分の小さい手をギュっとする。


 いつもと反応が違うと思たリオンだったが、少し可愛かったので断るタイミングを失った。


もっともタイミングがあったとしても、これを否定する勇気はリオンにはなかったが。


「ズルい!ネルちゃんだけズルい!お母さんもリオンちゃんと手を繋ぎたい」


 鼻水を垂らしながらリオンに接近するシューリンの顔は、鬼気迫るものがあった。


 こちらは可愛らしさは微塵もなく、ただ恐怖だけがリオンの心を覆う。


 リオンは余りの恐怖に思わず、シューリンの手を拒む事は出来なかった。



◇◆コケ◇◆コケ◇◆◇コケ◆◇コケ◆◇コケ◇◆コケ◇◆コケ◆



「おい!さっさと税を納めろ。それとも領主様に逆らうつもりなのか?」


 馬上から多少豪華な身なりをした男が、乱暴に村人達に問いただしている。


 リオンは不味い場面に関わりたくないと思って、村長の家にUターンしようとしたが、集団の1人に見とがめられた。


「おい!そこの奴。隠れていたのか!!不定野郎だな」


「いえ、私はここの村人ではないんです。今から王都に行く途中なんです」


 リオンは内心でかなりビビりながらも、ネル達が普段放つ殺気の残り香で鍛えられた恐怖耐性を駆使し、平静を装い落ち着いて答えた。


 まあ、あくまで装っているだけなのだが……。


 なぜ最弱なリオンが男の対応しているのかというと、例え現状最弱であろうと従者にとって創造主は絶対の存在であり、白を黒と言ったとしても全て肯定されるからである。


 もっとも従者には忠誠心のパラメーターがあるので、これがダダ下がりするとリオンを裏切る事もあるのだが。


 というか、ゲーム時代裏切られた事がかなりあったリオンは、異世界で何年経っても従者の裏切には全く耐性が付かなかった。


 現在進行形でムジに裏切られているリオンは、すでにパニック一歩手前だ。


 リオンは口には出さないが、騒がしいパーティがいるから正気を保てている部分もあるのだ。


「見ない顔だな?近隣の村の出身でもないな?」


「はい。帝国の方から来ました」


 リオンは詐欺師が使う手法で、自分が来た場所を誤魔化す。


「そうか。という事はお前達は、まだ税を納めていないわけだな」


 リオンの応えを聞くと、集団の隊長らしき人物が嫌らしい笑みを浮かべた。


「税と言われましても、私達は旅人です。この村に定住している訳ではありませんし、この国の国民でもありません」


「違う。今我々は、聖浄教会の方達と協力し悪しき存在である魔王軍を殲滅する作戦中なのだ。そして我らが心優しき第2王子は悩まれた。この聖なる戦いに一般の民にも参加させてやりたいと。そこで民が聖なる戦いの費用を負担できるように、自主的に納税してくる民を寛大な心でお受けになったのだ」


 隊長は蔑むようにリオンを見下す。


「はあ。それで私との関係は……」


 リオンは意味が全く分からず、困惑した表情をする。


「まだ分からんのか!これだから下賤の民は。殿下の寛大な心によりお前達からの税も受け取ってやると言っているのだ。そこで我々徴税請負人がこうして村々を回って我らが殿下の言葉を伝えているのだ」


「いえ。お気遣いはありがたいですが、私達は自主的に税を納めるつもりはありませんので」


「貴様ぁ!魔王軍を殲滅するという聖戦に参加させてやろうという我らが殿下の御心を侮辱する気か!」


「いえ、侮辱する気はないのですが……」


「理解したか!であれば一人金貨十枚、お前ら4人なら金貨40枚を税として今直ぐに納めよ」


 リオンは突然お金を巻き上げようとしてくる強盗集団に、かなりイライラしていたが、ネル達が手を出さないように繋いでいる両手を強く握った。


「そんな大金持っていません。それに税金が高くありませんか?」


 この世界で金貨1枚あれば一般の家族4人が1ヶ月生活していけるのである。


 ちなみにリオンはお小遣い制で月銅貨1枚である。


「何だと!聖戦の為の税はお前達下民が自主的に払うものだ。高い云々は関係ない!まあしかし、手持ちの銭がないのであればお前達の体で奉仕するがいい。お前は儂の慰みとして奉仕する事を許可してやる」


 男はイヤらしい顔で、リオンの体を粘着した視線で見渡した。


「イヤイヤ。嫌だ。それに俺は男だ」


「その可愛らしい顔で男か。大いに楽しめそうだな」


 隊長の言葉を聞いて、あの拷問官の恐ろしい顔がリオンの脳裏を掠め、少しお尻がむずがゆくなった。


「ダンナ、俺達にも女をまわしてくださいよ」


「ああ。分かってるよ。そっちの3人の娘は、お前達にくれてやる。壊れない程度に好きに使え」


「流石はダンナ!話がわかる」


 二人の兵士は下品な笑みを浮かべながら、シューリン達三人を値踏みしだす。


「主のお尻の危機っスよ。主の初めてはあのオッサンっスか!しっかりとお尻は洗うっスよ。俺っちがお尻の洗い方をレクチャーするっス」


 突然ヤキトリが手ぬぐいを持って、自分のお尻で洗い方をレクチャーし出した。


「誰が尻を洗うか」


 リオンは頭の上で教鞭をとっていた焼き鳥を掴み地面に叩きつけよう思ったが、ネルとシューリンの手で両手が塞がっていて実行できなかった。


「コケ~。コケコケ。勝利っス。とうとう俺っちの時代が来たっス。言論の自由は悪には屈しないっス」


 ヤキトリはリオンの頭の上で、勝利の宣言をした。


 調子に乗るキトリを見て、リオンは奴の尻を徴税請負人に差し出そうかと本気で思うのであった。


「何やってるんだ、お前ら?ふざけているのか?」


 兵士はリオンの胸ぐらを掴もうと、リオンに近寄ろうとする。


「リオンちゃんに指一本触れさせないわ」


 聖女の美しさを携えたシューリンは、兵士の前に立ちふさがりリオンを庇った。


 この時のシューリンは太陽の光があたり、女神のような神々しさを発していた。


 後日リオンは、数少ない貴重なシューリンの姿だったと語った。


「おい!シューリン」


「リオンちゃんは黙ってお母さんに任せて」


 シューリンは二コリと微笑んだが、その表情にリオンは思わずドキリとしてしう。


 しかしシューリンの続く発言で、そのトキメキもどこかに吹っ飛んでいった。


「お母さんはリオンちゃんの代わりにお尻を出すわ」


 シューリンはゴソゴソとスカートの中に手を入れて、自分のパンツを降ろそうとする。


 レオタードの様な服を着ているので、どうやってパンティを下ろそうとしているかはリオンには想像もできなかったが。


 捲れあがったスカートから、白く綺麗なシューリンの生足が覗いている。


 兵士達はその艶めかしさに思わず、生唾を飲み込んで見入ってしまう。


「ぎゃあああああ。止めてくれ。シューリン!止めてくれ!」


「リ、リオンちゃ~ん。リオンちゃんはそんなにお母さんの事が心配なのね。お、お母さんは。お母さんは……わあああああああああああああああああああああああああああ」


 シューリンは感激で泣き出し先ほどの女神の如き神々しさは微塵もなかった。


 リオンは母親の心配というよりは、ボクサーパンツを穿いているであろう母親の醜態を他人に見せたくないとの思いから叫んだのだ。


 そんな感動的な親子の絆の場面を見たネルが、今まで離そうとしなかったリオンの手を離し、空中に飛び上がる。


 その姿は妖精のように綺麗であったが、リオンは兵士を殺してしまうと思い、自由になった手でネルを掴もうとした。


 しかし、その手はネルに届かず空を切る。


「うん?あれ?」


 リオンが疑問に思ったのも無理はない。


 ネルは兵士を攻撃する事はせず、いつの間にかリオンの左腕に装着され盾となっていたのだ。


「【ねぇねの嗜み】の第4形態【難攻不落(ねぇねの愛は他の女を)の障壁(近づけさせない)】を発動したの な。今回は秘宝を使うから更に変化しているの な」


 よく見るとネルがリオンの左腕に蝉のようにしがみ付いているが、前回と違い頭がリオンの体側にあった。


 ただ、これに何の意味があるのかリオンには全く理解できなかったが。


「ぎゃあああああああああああああああああ」


リオン達がグダグダとやっていたが、リオンに掴みかかろうとしていた兵士の顔に多数の針が突き刺さっていた。

【次回予告 とうとう悪役令嬢が登場っス。おほほほほほっス】

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