表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/43

リオンの激闘

今回初めてリオンが死闘を繰り広げます。

もう二度とない戦闘かもしれません。

「グギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 ゴブリンの雄叫びは大地を揺るがすほどであり、リオンの恐怖心も揺さぶっていた。


 ゴブリンは怒りで【ゴブリンスレイヤー】を力一杯振り降ろすと、大地は爆散しリオンが入れるくらいの穴ができていた。


「アギャ。これはお前の墓だギャ。この穴にお前を入れてやるギャ。覚悟するギャ」


 ゴブリンはリオンを睨むと、ニヤリと笑い凶悪な牙を見せていた。


 誰も助けてくれないこの状況で、リオンは取り合えず距離を取るしか無かった。


 もっとも距離を取ったところで、今のゴブリンなら一瞬でリオンまでの距離を詰める事が可能であろう。


「くそ。くそ。くそ。考えるんだ。相手はまだレベル1だ!ネル達みたいな化物じゃない。考えれば何とか助かる道があるはずなんだ」


 リオンは自分を奮い立たせるように言葉を吐いたが、実際問題レベル1とゼロの差は、赤子と大人の差と同じくらいに開いている。


 ゴブリンが魔法系統の職業であれば、リオンにもチャンスがあったかもしれないが、実際は戦士系統であり筋力は大幅に増大していた。


「これを受けてみるギャ。妹への愛の重みを感じるギャ」


 ゴブリンが【ゴブリンスレイヤー】を横なぎに一閃すると、真空波が発生しリオンに迫る。


 リオンは何かが来ると感じて、ゴブリンが横なぎを開始する前に咄嗟に横に飛びのいた。


 しかしリオンの回避は間に合わず、リオンの頬にかすり傷を付けて、後ろに乱立していた木々をサックリと切り倒した。


「おい!まともに喰らったら、俺はアッサリと死んでいたぞ」


 リオンは恐怖を何とか抑えて、ゴブリンに罵声を浴びせてみた。


「アギャ?ちゃんと手加減したギャ?簡単に死んでしまったら勿体ないギャ」


 ゴブリンは薄気味悪く笑い、大きな口が釣り上がり鋭い牙がリオンにもハッキリと見えた。


「あの妹思いの純粋なゴブリンはどこへ行ったんだ?闇に呑まれるな。現実へ帰ってこい」


「純粋だったゴブリンはもう死んだギャ。友と信じた者に裏切られてた悲しみで修羅へと落ちたギャ。彼の心にあるのは、裏切りへの復讐のみだギャ」


 自分が犯した行動で心を病んでしまったゴブリンに、リオンは深く後悔したが、自分も素直に殺される訳にはいかないので、何とかこの危機を乗り越える打開策を考えることにした。


「考えろ!考えろ!ゲーム時代は従者もいなかったんだ。レベル1でそれ以上のレベルのモンスターに囲まれても切り抜けてきたんだ。考えろ。考えろ」


 リオンはゲーム時代の記憶を呼び起こし、その知識を紐解いていく。


「今は何のアイテムもない。どうする?罠?時間がない。罠を設置するのをゴブリンがみすみす許してくれるとは思えない。何かないか?」


 リオンは周囲を確認した後、ゴブリンを視界に納め、注意深く観察する。


「アイツの弱点は何だ?戦士系の職業だから魔法が弱点か?ダメだ。今の俺には魔法は使えない」


 リオンはゴブリンの膨れ上がった筋肉を見て、ふと疑問に思う。


「何だ?何か引っかかるな?何だ、この違和感は?考えろ。ゲーム時代を思い出せ。この違和感の先に解決策があるはずなんだ」


 リオンは目を皿の様に見開き、ゴブリンを観察し続ける。


「アギャ?攻撃してこないギャ?お前の攻撃を待ってやってるのに攻撃して来ないなんてガッカリだギャ」


「煩い!俺はお前を必ず倒して、俺の平和を掴み取る」


「やってみるがいいギャ」


 ゴブリンは両足で大地に踏ん張るように構え、【ゴブリンスレイヤー】を右肩の上に構えた。


「グギャ!」


 ゴブリンの気合と共に、【ゴブリンスレイヤー】を上段から振り下ろした。


 衝撃派は大地を削り、リオンの目前へと迫る。


 リオンは目を瞑る事なく恐怖に打ち勝ち、その衝撃波を最後まで観察していた。


 衝撃波はリオンに直撃する事はなく、リオンの直前で進路を変更して逸れていった。


「アギャギャ。ビビったギャ?オラの攻撃にビビったギャ?グギャギャギャギャ」


 ゴブリンは嫌らしい笑みを作り、リオンを嘲笑っていた。


「おかしい。あのゴブリンの攻撃力はなんだ?さっきのアナウンスでレベルの解放といっていたんだから、アイツはまだレベル1のはず……。それなのに衝撃波のコントロールまでできるだと……。オカシイ。理屈に合わない。あの筋力もレベルと整合性がない。アナウンスで他に何を言っていた。思い出せ。そこに違和感の答えがあるはずだ」


 リオンはゴブリンの嘲笑は聞こえておらず、自分の思考の渦の中にいた。


「【ブーメランキング ゴブリン】?それはアイツの種族名だ。見てくれから戦士系の種族だろう。ここは問題ないはず。名前はあったか?確か……【名無しの子ゴブリン】だったな。名前がないという事は俺との眷属契約が初という事だ。眷属契約以前に力を得ていたというのは考えにくい。スピリトは……何だった。思い出せ。思い出せ。確か【欺く者】だった……はず。それだ!このスピリトにヒントがあるはずだ。【欺く者】のお陰で肉体が強化されているんだ」


 リオンは自分の違和感の元が何にあるかを突き止めて、思わずニヤリとしてしまった。


「何が可笑しいギャ?お前はもうすぐ死ぬギャ!恐怖で気が狂ったギャ?」


 ゴブリンは未だに余裕であり、リオンに最大の恐怖を与えようとしていた。


 ただ、根が善良なゴブリンであり、恐怖の与え方は、まだまだお粗末なモノでしかなかったが。


 リオンの集中力は限界まで引き上げられており、ゲーム時代と同等にまでなっていく。


「【欺く者】だ。何かを欺いて、莫大な力を手に入れているんだ。欺いているモノを突き止めれば逆に弱体化する。それがスピリトの厳然たるルールだ。何だ?何だ?集中しろ!」


 リオンにはゴブリンの声は届いておらず、ひたすらゴブリンの姿をその目に焼き付けていく。


「どこだ?何処だ?どこに嘘がある?全てを見ろ!不自然な所を炙り出せ!」


 リオンは目を充血させるほどに集中し、ゴブリンの偽装されている箇所を探した。


「全然怖がらないギャ。もう飽きたギャ。お前を殺すギャ」


  ゴブリンは【ゴブリンスレイヤー】を肩に担ぐと、ゆっくりとリオンに近づいていった。


 死の圧力が徐々にリオンに迫っていたが、リオンには恐怖が一欠けらもなかった。


「直接お前を切り捨ててやるギャ。オラが近づいていく一歩が、お前の残りの寿命を削っていくギャ」


 ゴブリンはニヤニヤとしながら、リオンに近づいて行った。


 そんなゴブリンのゆっくりとした歩みを観察していたリオンの視界に、あるモノが飛びこんできた。


 それこそゴブリンが欺き、強力な力を手に入れた源泉だった。


「見つけた!見つけたぞ!お前の強みであり、最大の弱点を」


 リオンはビシッと人差し指をゴブリンに向けた。


「そんな強がりは無駄だギャ。お前の命の火はあと少しで消えるギャ」


 ゴブリンはリオンの発言も気にも留めず、ゆっくりとリオンに近づいてきた。


 ゴブリンとリオンの距離が【ゴブリンスレイヤー】の間合いになった時、ゴブリンは【ゴブリンスレイヤー】を上段に大きく構えた。


「お前の偽装は、そのテントの様に膨れ上がったブーメランパンツだ!そこには軍手が詰められている。歩いている時に、際どいラインから軍手の指の部分が見えたぞ 」


 リオンはドヤ顔で、ゴブリンに言い放った。


「何を言ってるギャ?お前は気が狂っ……」


 ゴブリンは最後まで言葉を続ける事ができずにいた。


 ゴブリンはスピリトの弱点を見抜かれた反動からか、急速に筋力が弱体化し、ノーパンツキングの時よりも筋肉が落ちていった。


 支える筋肉が無くなり、ゴブリンは【ゴブリンスレイヤー】を両手から手放した。


【ゴブリンスレイヤー】はそのままゴブリンの脳天に直撃し、ゴブリンを昏倒させた。


「わはははははははははははははははは!見たか!俺のピンクの脳細胞を!俺に敵う者はいないのだ!わははははははははははは!」


 リオンは勝利の雄叫びを上げ、自身の強さを誇っていた。


 勝ち方はアレだが、勝利は勝利である。


 リオンは辛くも、その命を繋いだのだった。


 もっとも実際は自身の眷属との練習試合とシステムに看做されており、リオンの身体がレベルに目覚めることはなかった。


「リオンちゃ~ん!お母さんは、お母さんはリオンちゃんの心をしっかりと受け取ったわ!」


 シューリンは感動したように涙を溢れさせて、リオンに抱きついた。


「ぎゃああああ!死…ぬ。じ、ぬ゛!だず……けで!」


 リオンはゴブリンに対峙していた時よりも、死の危険に直面していく。


 目の前には川が見え、向こう岸で優しく手を振っている従者になる前のシューリンがいた。


 リオンは川を渡ろうと水に足を付けたが、川の水は鼻水のような粘り気があった。


 その粘り気を不快に思い、リオンは三途の川を渡るのを躊躇ってしまった。


 意識を取り戻すと、シューリンは既にリオンに抱きついていなかった。


 なぜか肩にネルが乗ってはいたのだが。


 周囲を見回すと、少し離れた場所に土煙が上がっており、その発生源にシューリンがいた。


「リオンちゃん!お母さんは修行の旅に出るわ!お母さんの目で解析したリオンちゃん好みのブーメランパンツを必ず身に着けて戻るから。待っててね」


「ちょっと待て!俺はブーメランパンツなんか好きじゃない。それにブーメランパンツは男物……」


 リオンが最後まで言葉を紡ぐ前に、シューリンは跡形もなく消えていた。


 この時、リオンはゴブリンの妹の気持ちが痛いほど分かった。


 近い将来ブーメランパンツを穿いた母親が近所をうろつく恐怖がリオンの心を襲った。


 雲一つない何処までも青い空に向かって、リオンは盛大な溜息を吐いた。


 すると天から一枚の小さな布切れがリオンの手の中に納まった。


 よく見るとそれはシューリンのパンツであった。


 なぜリオンにシューリンのパンツが判別できたかというと、パンツにリオンちゃん命とマジックで書かれていたからだった。


 涙が出そうになったリオンだったが、何とか耐えて街に戻るのであった。

【次回予告 新章突入っス。大変っス。主が治める天魔帝国に不穏な動きがあるっス。】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ