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ゴブリンが闇に落ちる

 味方の声援で精神的ダメージを負ったリオンだったが、何とか立ち上がった。


 リオンが相手を見据え様子を窺っていると、ゴブリンは顔に両手を覆い震え出した。


「オラ、オラは妹に嫌われてしまたったギャ。もうオラの人生は終わりだギャ。アギャアギャアギャアギャ」


 ゴブリンは瞳から大粒の涙を流しながら、大地に崩れ落ちる。


 リオンはゴブリンの行動に呆気にとられて、状況が呑み込めずにいた。


「オラは、オラは妹に幸せになって欲しかっただけギャ。それなのに……それなのに……グギャギャ」


「お前に一体何があったんだ?よかったら俺に話してみろ」


 リオンは冷静になり、漢気を出してゴブリンの肩に手を置き、語りかけた。


「アギャ?お前がオラの話を聞いてくれるギャ?」


「ああ、安心して心に内にある全て吐き出せ」


「アギャギャギャ。オラは、オラはお前に喧嘩を売ったギャ……それなのにギャ」


「知ってるか?2人の漢が死闘の後に得るのは、強敵と書いてトモと呼ぶ固い絆だ。気にする必要はないんだ」


「アギャャャャャャャャャャ!分かったギャ。お前に甘えるギャ」


 ゴブリンは肩に置かれたリオンの手を固く握り、先日自分に起こった不幸を語り出した。



◇◆コケ◇◆コケ◇◆◇コケ◆◇コケ◆◇コケ◇◆コケ◇◆コケ◆


 魔の森のとある場所に、ゴブリンの住み家があった。


 ゴブリンは疲労で足が棒のようになっていたが、住み家に帰れば妹の天使の微笑みが見れるかと思うと気分は軽かった。


「アギャ!妹よ、今帰ったギャ」


「お兄ちゃん、どこ行ってたです。何も言わずに出ていくなんて心配したです」


 洞窟の奥から、可愛らしい声が響いてきた。


「すまなかったギャ。でも安心するギャ。お前にまとわりついていたストーカー野郎は退治しギャ」


「お兄ちゃん、何訳の分からない事言ってるです?それよりもご飯の準備するです。少し待っているのです」


 妹は表には出てこず、そのまま洞窟の奥でゴブリンの食事の準備をしだす。


「ありがとうギャ。お前は本当に自慢の妹ギャ」


 ゴブリンは妹の気配を感じつつ、満足するようにウンウンと頷いていた。


「今日はお兄ちゃんの好物のウサギの生肉なのです。今持っていくのです」


 兄妹の水入らずの幸せの時間を味わっていると、食事の準備ができたのか洞窟の奥から妹の近づく気配を感じた。


「いつもすまないギャ。お前の料理は世界一だギャ」


「お兄ちゃん、そんなにオダテテモ……きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 妹の悲鳴と共に料理を載せていた葉っぱの落ちる音が洞窟内に響いた。


「どうしたギャ。何に襲われたギャ?ま、まさか、あのストーカー野郎だぎゃ?もう許さないギャ」



 ゴブリンは傍においていた【ゴブリンスレイヤー】を右手に持ち、周囲を見渡した。


 警戒しながらも、急いで妹の傍に駆けつけると更なる悲鳴が洞窟内に響いた。


「きゃああああああああああ。嫌なのです!止めて欲しいのです!近づかないでなのです」


「待ってるギャ。今直ぐ行くギャ」


 妹が何者かに怯えているのにゴブリンは焦ったが、とにかく妹の傍に行く事を優先した。


「嫌なのです!お兄ちゃん、近づかないでなのです」


「分かってるギャ。お兄ちゃんは直ぐにお前の傍に行くギャ」


「嫌なのです!傍に来ないで欲しいのです」


「お兄ちゃんは傍に……」


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!お兄ちゃんは傍に来ないでなのです!」


「アギャ?どうしてオラが……」


「変態のお兄ちゃん何て知らないです。変態は悪なのです」


「オラは変態じゃないギャ。ストーカー野郎を……」


「変態なのです。何を言っても腰巻もつけずに、フル、フルチ、コホン、とにかくそんな変態さんは知らないのです。近づかないので欲しいのです」


 妹がゴブリンに言っている事はもっともだった。


 ゴブリンは不慮の事故により、自分の財産である腰巻をリオンに献上していた。


 そう、唯一の財産を失ったのである。


 では現状のゴブリンは一体どうなっているのか大いに疑問に思ったことだろう。


 結論を言おう。


 すっぽんぽんであった。


 いわゆる産まれたままの姿と言うやつだ。


 ノーパンツキングへと変態的進化を遂げたゴブリンは、幸い見られる事により身体能力が上がる変態スピリトを身に付ける事は無かったが、妹により変態と認定されてしまう。


 考えてみて欲しい。


 自分の家族が下半身丸出しで、近所をフラフラしていたら、どう思うか。


 それは絶叫モノであろう、家族の縁を切るくらいには。


 ゴブリンの妹も同じ気持ちであったろう。


「もう嫌なのです。近所を歩けないのです。変態お兄ちゃんなんて知らないのです。そんなゴブリン知らないのです」


 妹はブンブンと首を振りながら、現実を否定しようとしている。


「何を言ってるギャ。どんな姿でもオラは妹のお前を……」


「そんなゴブリン知らないのです。早くこの家から出行くのです」


 妹は洞窟の奥に行くとゴブリンの荷物をまとめ……荷物は無かったので夕食のウサギの生肉をお弁当として渡すとさっさと洞窟から追い出そうとした。


「オラはお兄ちゃんだギャ」


「私にはお兄ちゃんはいないのです。知らないゴブリンさんは早く洞窟から出て行って欲しいのです」


「アギャぁあああああああああああああああ!オラを知らないゴブリンって言ったギャ?オラは、オラは。アギャアアアあああ!」


 ゴブリンは大粒の涙を零しながら、、床に膝を付き泣き崩れた。


 妹はそんなゴブリンを蔑みの目で見ながら、洞窟の奥へと消えて行った。


◇◆コケ◇◆コケ◇◆◇コケ◆◇コケ◆◇コケ◇◆コケ◇◆コケ◆ 


「アギャぁあああああああああああああああ!オラを知らないゴブリンって言ったギャ?オラは、オラは。アギャアアアあああ!」


 ゴブリンはシューリンほどでは無かったが、大地を涙で濡らしていk。


「そ、そうか。お前も辛かったんだな」


 リオンは何とか笑いを我慢し、ゴブリンの肩をポンポンと叩いて励ました。


 そこに空気を読まない笑い声が響いた。


「コケコケコケ!変態っスか。変態っスね。そりゃあ妹ちゃんも家に入れないっスよ。俺っち妹ちゃんに同情するっス。コケ~!」


 ヤキトリはリオンの頭に乗ってコケコケ騒いでいた。


「おい!ヤキトリ!少しは……」


「変態ゴブリンマン惨状っス。ノーパンツキングは世界平和のために立ち上がるっス。もちろん立ち上ってるのは、あのテントの部分っスけどね。コケ?テントがなかったっスね。コケコケコケェェ~!お腹が千切れそうっス」


 ヤキトリはリオンの制止を聞かずに、リオンの頭の上で脂身の乗ったお腹をこれでもかと揺らしていた。


「ぶっ!」


 リオンも笑ってはいけないと我慢していたのだが、ヤキトリに釣られて思わず吹いてしまった。


「ギャ!」

「違うっ!俺は……」


 泣き崩れていたゴブリンは、驚愕の表情でリオンの顔を見つめた。


 しかしゴブリンの哀愁漂う表情とマッチョブーメランパンツのアンバランスさに、リオンの腹筋は崩壊した。


「ぶははははははは!もう駄目だ!我慢できない。うははははっはは!今のブーメランを妹に見せてやれ。惚れ直すぞ。ぶはっ!」


 リオンはお腹を痛そうにしながら、ノーパンツキングいや今は進化してブーメランキングをひたすら笑い飛ばす。


 シューリンはリオンの発言を【母の耳(マザーイヤ―)】で聞き取り、何かメモ帳にカキカキしていた。


 すごく不吉な予感のする行動であったが、リオンは笑うので忙しくシューリンの行動に気付かない。


 ゴブリンは心を砕かれたのか、地面に両手を付きプルプルと震えだす。


 しかし、その震えはこの世に絶望して泣いているには激しい震えだった。


 ガタガタと大きく全身を揺らすと、ゴブリンは顔を上げた。


「グギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 ゴブリンは天に向かって、この世の絶望を嘆いて絶叫した。


 愛する妹に捨てられ、信頼した友に裏切られ、憎しみの感情がゴブリンの純粋な心に黒い小さなシミを作ったかと思うと、一気に全体を染め上げてしまう。


 ゴブリンは大地に落ちていた【ゴブリンスレイヤー】を右手に握ると、鞘に納められたまま大きく大地に振り降ろされた。


 【ゴブリンスレイヤー】が打ち付けられた大地は、大きく表面を削り取られていた。


「グギャ!許さないギャ。オラを笑うなんて、オラの妹愛を笑うなんて許さないギャァァァァァ」


「げっ!やり過ぎたかも……」


 リオンは削られて大地を見て、かなりビビった。


 リオンは死んでは堪らないと、助けを求めシューリン達の姿を探す。


 リオンはシューリン達が視界入ると、助けてくれと叫ぼうとしたが、それは叶わなかった。


「リオンちゃん、お母さんは【母の目】(マザーアイ)でしっかりと見ているるわ。頑張ってね」


 シューリンはいつもの変態的な鼻水顔ではなく、慈愛ある聖母の様な笑顔でリオンを応援してくる。


「リオンを見守るのはねぇねの務めなの な。今回はねぇねの秘宝のお披露目は我慢するの な。ねぇねの嗜みを限界まで頑張るの な」


 ネルは小さな鼻を膨らませて、ぷす~と鼻息を荒くし、平らな胸をえへんと張っている。


「僕の暗殺拳は今回は封印されてしまったのだ。この両手を見るのだ。封印の刻印が両腕に現れているのだ」


 スイは両腕の甲をリオンに見せたが、そこには意味の分からない下手くそな落書きが描かれていた。


 リオンは3人を見て悟ってしまった、助けを求める事はできないと。


 さらにヤキトリは絶対に助けに来ることはないと3人以上に確信が持てた。


「覚悟するギャ。お前は絶対に許さないギャ。妹を持つ全ての兄の敵だギャ」


 ゴブリンはビリビリとする痛みを抑え込み、全力で地面に【ゴブリンスレイヤー】を叩きつけた。


 そこにはリオンがすっぽりと入れそうな穴が空く。


 リオンは自分がそこに入る未来が見えて、結構な勢いでチビってしまった。


【次回予告 主が激闘するっス。タイトルをぶっ壊せっス。カッコイイ戦闘が……多分ないっスね】

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