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リオンの中に眠る謎の力

 薄暗い部屋に6人の男女がひしめき合っていた。


 その空間は淫猥な空気を醸し出し、それが室温と共に、体を火照らせていく。


 その中の1つの影が、激しく体をピストンのように前後に動かす。


 額には大粒の汗が溜まり、何かを我慢するような表情をしているのだ。


「もう…駄目……だ。我慢……できない!」


 男の声は大きくなり、その前後運動も更に激しくなった。


 そして男の我慢が限界に来たのか、男は叫ぶように声を発した。


「ふざけるな!もう我慢できるか!何だこれは!」


 ここは酒場の個室であったが、テーブルに6人の男女が向かい合って座っていた。


 俗っぽくいうと合コンと言うやつであろうか。


 それぞれが気に入った者に話しかけたり、席を移ったりして意中の人物を射止めていく、狩りを行う場である。


「あら、ボク。どうしたの?そんな大声出しちゃって」


 しなを作って艶のあるハスキーボイスで、リオンに迫ってくる大人の女性がいた。


 本当なら喜んでいいところだろう……普通ならば。


 しかしリオンにせまっている女性は、正真正銘の女性なのだが種族が問題だった。


 獣人?エルフ?サキュパス?人魚?


 そのどれでもなかった。


 簡単にいうと鶏だ。


 そう、に・わ・と・り・だ。


 よく居酒屋で唐揚げになっているアレだ。


 今、リオンが座っているテーブルにも並んでいる料理も使われているモノだ。


 なぜ人語を話しているかは不思議だが、ヤキトリ自体が不思議生物なので、その知り合いなら不思議な事ではないのかもしれない。


 というかリオン以外は全て鶏だった。


 もっともヤキトリを鶏に入れていいのかは疑問が残る所だが……。


 だからこそリオンは怒りで体が震えて、我慢の限界を超えてしまい大声を上げたのだった。


「そうっスよ。主、何か問題でもあったっスか?もぐもぐ」


 ヤキトリはでテーブルに載った焼き鳥をもしゃもしゃと食べながら、リオンの不満を聞いてくる。


「俺が言いたいのは、これは違うだろって事だ!」


「コケ?何が言いたいか俺っちには理解できないっス」


「種族が違うだろ。オ・カ・シ・イだろ!」


「コ~ケ~!そうゆう事っスか。俺っちはフェニックスっスだけど、気にする必要はないっス。鶏と同じ扱いでいいっス。モグモグ」


 鶏と同じ扱いでいいと言ったヤキトリが、テーブルに載った唐揚げをパクパクと食べていく。


 リオンはツッコミを入れたくて仕方なかったが、優先するべき事が他にあったので何とか我慢した。


「そうじゃない。ヤキトリ、俺の種族は何だ?」


「主の種族?コケ?魔王?創造主?何すかね?」


「おい!俺は人種だ。人種。理解したか?」


「主って人種だったんっスか?知らなかったっス」


「え?マジで?」


「マジっス。俺っち初めて知ったっス」


「まあいい。俺は人種と理解したな。そこでだ。何で鶏がいるんだ?」


「コケ?何でっスか?美人三姉妹だからっスかね。主のリクエストっスからね」


「違う。俺は鶏の三姉妹をリクエストした覚えはない。俺は……もしかしてアレか?人化するとかか?急に綺麗な女性に化けるのか。それなら俺も……」


「何っスか?そのご都合的なのは。もうコケコケって奴っスね。鶏が人になる訳ないっス」


「な!」


 リオンはよくあるテンプレ展開を口にしたが、ヤキトリにあっさりと否定されて絶句した。


「主は頭がおかしいっスね。一度病院に行くことをお勧めするっスよ。コケコケ」


「じゃあ何で鶏が人語じゃべってんだよ。オカシイだろ。全く!俺はな!」


「あ、あ、あ、主~!まさか、まさか、俺っちは間違ってたっスか?」


「そうだ。ヤキトリ、やっと気付いてくれたか。そういうことだ」


「しまったっス。主は鶏を希望した訳じゃなく…」


「そうそう。鶏ではなく」


「ヒヨコを希望してたっスね」


「そうそう。ヒヨコを希望してたんだ」


 ヤキトリとリオンは、意思が通じ合ったのかウンウンと頷きあっていた。


「って、違うだろ。なんでヒヨコになるんだ」


「大変っス。ここにロリコン変態野郎がいるっス。これは通報ものっス。コケコケ!」


 ヤキトリはこれは大変だと、『青少年育成条例を守れ』とのタスキを掲げ、断固抗議するとリオンの頭に乗って座り込みを開始した。


 ヤキトリは三姉妹の一番末の妹に目線を向けて、リオンにバレないように逃げるように合図を送る。


 三姉妹の末娘はまだヒヨコであり、このままではリオンの毒牙に掛かってしまうと心配したからだ。


「ヤキトリ!何だ。今の目線は!」


「違うっス。何でもないっス。俺っちが主の気を引いてる内に、逃げろって意味じゃないっス。全部勘違いっス」


 ヤキトリは見事に自分の企みをバラシていたが、リオンにはヒヨコの娘を狙う趣味はなかったので事なきを得た。


「何度も言ってるだろ。俺はヒヨコの娘に興味はない」


 疑いの目をリオンに向けた後に、ヒヨコの娘に視線を移そうとした際に、途中でヤキトリの視線が止まる。


 そこでヤキトリは驚愕の表情をしてしまう程の、ある重大な事実に気が付いた。


 ヤキトリは合コンを成立させるため、男女の人数を各々3人に揃えていた。


 女性は美人三姉妹で揃えたが、男はヤキトリとリオンの2人だけだったので1人不足していたのだ。


 その不足を補うため、ヤキトリは末の妹の幼馴染のヒヨコを参加させてしまったのだ。


 ここにヤキトリの重大なミスが発覚してしまう。


 リオンがヒヨコの男の娘に興味があるのではという事実に、今気付いたのだった。


「しまったっス。俺っちの最大のミスっス。ま、ま、まさかヒヨコの男の娘を、主が求めていたなんて。盲点だったっス。コケ~!」


「何だ?ヒヨコの男の娘って?そんなのがあるのか、え?」


「何言ってるっスか!主、あれがヒヨコの男の娘っス」


 ヤキトリは短い羽でビシッとテーブルにちょこんと座るヒヨコをさした。


 ヤキトリの指さす方に視線を向けると可愛らしいヒヨコが目に入る。


 リオンと視線が合うと、ヒヨコはビクビクと震え出した。


「主、駄目っス。幼い子をそんな卑猥な目で見たら駄目っス。怯えてるっス」


「ふざけるな!俺を犯罪者みたいに言うな」


 末娘のヒヨコが震えるヒヨコを庇う様に、リオンの視線の間に入った。


「そうっス。主のエロエロしい視線から守るっス。ナイス判断っス」


「ふざけるな。俺は変態じゃない。いたってノーマルだ。ヒヨコの男の娘に興味なんかない!」


「本当っスか?でもまだ主に視姦されて震えているっスよ」


「本当だ。俺を信じろ!」


 ヤキトリは疑わしそうな目を未だにリオンに向けていた。


 そのままヤキトリは短い羽で腕組みし、鳥頭を使ったシュミレーションを高速で行う。


 3歩で全てを忘れてしまう鳥頭を高速回転させ、全ての事象の可能性を紐解いていったのだ。


「色っぽいお姉さんと若いお姉さんは主の好みじゃない?ロリっ娘も主の範疇外?男の娘も違う……と。すると……もしかして……」


 ヤキトリは最悪の結論に達してしまったのか、ガタガタと体を震わせ、思わず脱糞してしまう。


 それはもう盛大に。


 リオンの頭は大変な事になっていたが。


 急いでリオンの頭から離れようとしたが、足が震えてしまい、ヤキトリは十分なジャンプ力を得ることが出来なかった。


 不十分な跳躍のため、ヤキトリはリオンに呆気なく捕まってしまった。


「何処に行くんだい、ヤキトリ?」


 リオンの表情は悪魔の様に歪んでおり、ヤキトリはその顔に恐怖する。


「主、ごめんなさいっス。俺っちのお尻は誰にも許可をあげてないっス。モチモチの柔らかさは皆のモノっス。独占は駄目っス。ヒィィィィィィィィィィ」


 リオンは表情を変える事無く、ヤキトリに近づき、その細い足を掴んだ。


「ヒィィィィィィィィィィ。堪忍してっス。もうお嫁に行けなくなるっス」


 リオンは無言で懐から竹串の束を取り出すと、ヤキトリの天国の門に思いっきりネジ込んだ。


「コケ!コケ!コ~ケ~!」


 リオンに手籠めにされたヤキトリは、満足げな顔でクチバシから涎を垂らしていた。


 リオンは成敗が終わったヤキトリを、テーブルにある空の皿に盛り付けた。


 暫くするとヤキトリがムクリと立ち上がり、ケツに竹串を刺しなながら夢遊病のようにフラフラと部屋の外に出て行ってしまった。


 満足したリオンはこれからどうしようかと、周囲を見回した際に、未だに部屋の隅で2羽の鶏と1羽のヒヨコが1羽の震えるヒヨコを守るように立ちはだかっていた。


 リオンが溜息をついていると、外に出て行ったヤキトリが大騒ぎで戻ってくる。


「主、大変っス!サツの手入れっス!憲兵さんが主を捕まえに来たっス!」


「何言ってんだ!俺に捕まる理由はない!冗談は休み休みに言え」


 リオンがヤキトリに抗議していると、部屋の外が騒がしくなってきた。


 かなり乱暴に騒いでるらしく、騒ぎの音は段々とリオンのいる個室まで迫っていた。


「おい!まさか本当に憲兵が来ているのか?」


 外の騒ぎに焦ったリオンは、ヤキトリに問いただした。


「主、さっきから言ってるっス。急いで逃げるっス」


「でも俺は捕まる事なんか……」


「よく考えるっス。主は、幼い女の子に手を出そうとしたっス。その上……幼い男の子にまで魔の手を……っス」


「ふ、ふざけるな!俺は手なんか出してない。俺は無実だぁ~」


「主!手は出していないけど、別の部分は出しちゃったってオチはなしっスよ」


「俺がそんなショウモナイ事を言うか。俺を信じろ」


「主のギャグのセンスは信じられないっスけど……分かったっス。俺っちは主の無実を信じてるっス。でも状況が許さないっス。見るっス。ヒヨコちゃんがあんなに震えてるっス。被害者の証言だけで犯人にされるっス。痴漢の冤罪の状況とそっくりっス。主の訴えは聞いてくれないっス」


 ヤキトリはコケコケとリオンに向かって力説した。


「お、おう。じゃあ早く脱出しないと」


 リオンはヤキトリのもっともそうな理論に納得してしまい、急いで逃げる決断をした。


「主、焦っては駄目っス。ここは冷静になるっス」


 ヤキトリの適切なアドバイスに、リオンは心を落ち着けるため、ゆっくりと深呼吸する。


 冷静になったリオンは、どうやってここから脱出するかの思考を始める。


 だがリオンは気付いていなかった。


 この世界の憲兵隊はヒヨコに悪戯したぐらいでに、捕まえにくるほど暇ではない事に。


 まして魔王軍の侵攻が控えているのである。


 もっとやるべき仕事が幾らでもあるのだ。


 だが、ヤキトリに唆されたリオンは必死だった。


 そしてついに騒ぎの根源がリオンの部屋の前で止まる。


「この部屋です、隊長」


「よし。逃げられた場合に備えて、外にも人員は配置しているな。武器を構えろ」


「全て準備完了です」


「よし。犯人に告ぐ。この部屋に隠れているのは分かっているんだ。大人しく出てくれば傷めずに済ませてやる」


 部屋の外の憲兵の声を聞いて、リオンは自分が幼い子への悪戯で捕まるのだと確信した。


 これがバレればシューリン達に殺されると、軽く失禁までしてしまった。


「あれもこれも全部、お前のせいだ!ヤキトリ、お前が嫌がる俺をこんな所に連れてくるから。俺の人生どうしてくれるんだぁ~」


 自ら女の子を紹介してもらおうとしていたリオンは、その事を棚に上げてヤキトリを責め立てる。


 再度言う。


 憲兵隊はリオンをヒヨコへの悪戯の罪で逮捕するとは言っていない。


 ただ相当な犯罪を犯しているのだろうが、リオンは未だに気付いていない。


「くそ、もう逃げられない。どうする?どうする?シューリン達への言い訳はどうする。鉄拳喰らって爆散する未来しか見えない。クソ。どうする?」


 助かる道の見えない思考の迷路に迷い込んだリオンは、恐怖で全身が真っ青になっていく。


「人の気配はするが、犯人の返事はなしか。人質を取っている場合は、犯人の確保を優先。人質は諦めろ」


「了解です、隊長」


「突撃!」


 隊長の号令と共に、6人程の憲兵が部屋の中に突入してくる。


 廊下にも数人の憲兵が、リオンを逃さないように待機している。


 リオンは何の抵抗も出来ず、3秒で捕縛されていた。


「ヤキトリ、助け……て」


 床に押さえつけられたリオンは、ヤキトリに助けを求めたが、ヤキトリは唐揚げの皿に紛れて料理のフリをした。


 美人三姉妹達も、カード1枚を残し跡形もなく姿を消していた。


 カードには『貴方の心、いただきました コッコアイ』と書かれていた。


「大人しくしろ!抵抗すると、さらに痛い目を見るぞ」


 憲兵の脅しに、リオンは無抵抗を貫いた。


 その時リオンの頭の中で自分に呼びかける声が聞こえてきた。


「力が欲しいか?この世の全ての理不尽を薙ぎ払う圧倒的な力が欲しいか?」


 力が欲しいと、リオンは頭の中で響く声に答えた。

【次回予告 主が起こした不祥事にヒロインと俺っちが全力で対処に当たるっス。俺っちの活躍を期待してほしいっス】


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