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リオンの休日

「やったー!やったぞ。俺もとうとう人生の勝ち組になるんだ!ヤッホー」


 リオンは喜びから空に向かって叫んでいた。


 目の前にはリオンの目的たる建物がそびえ立っていた。


「とうとうこの日が来た。俺がこの世界に転生してから待ち望んでいた場所だ。今日は俺を邪魔をする者は誰もいないぞ。ヤキトリも朝気づいたら、どこかに行ったしな。うははははは」


 リオンは昨日の夜に宿屋で繰り広げられていた頭脳戦を思い出して、思わずニヤリとしてしまった。



◇◆コケ◇◆コケ◇◆◇コケ◆◇コケ◆◇コケ◇◆コケ◇◆コケ◆


「リオン君、今日はライバルができて面白かったのだ。ありがとうなのだ」


「ああ、スイが面白かったならそれでいいよ」


「冒険者ギルドの建物を破壊してたっスけど。コケ?」


 ヤキトリは主を少し冷たい目で見つめていた。


「ふははははは。俺の頭脳が先の先の先を読み切ったんだよ。決闘前にギルドの受付嬢に確認を取ったからな。何かあっても問題はないんだろう」


「なんだか詐欺みたいっスね。受付嬢が気の毒っス」


 ピンクの塊がやれやれと短い羽根を広げて見せた。


「世の中、騙される方が悪いんだよ。ふははははは」


「何スか?その雑魚な悪役のセリフは……またフラグっスか?」


「甘い。甘いよ、ヤキトリ君。俺がフラグなんか立てる訳ないじゃないか」


 ヤキトリはだめだこりゃと思い、スイの方に向いて話しかけた。


「スイちゃん、あのバスタードソードはもう要らなかったんっスか?」


「大丈夫なのだ。あのバスタードソードは自分の意志を持ってるから持ち主が気に入らなければ、そいつをぶっ殺すだけなのだ」


「え?そうなの?」


 リオンはスイの物騒な言葉を聞いて、顔面を蒼白にする。


「えっと、スイさん……あのバスタードソードは人の好き嫌いは激しいのかな?」


「どうなのだ?」


 スイの頭の上に、はてなマークが浮かんでいた。


「スイはあのバスタードソードの性格は知らないのか?」


「知ってるのだ。多分、人間は全て嫌いなのだ」


「そ、そうなのか。そんなに人間が嫌いなのか?」


「仕方ないのだ。地獄の審判者で悪魔だから基本的には人間が嫌いなのだ。でも造像主は別なのだ」


「え?地獄の審判者?それって最上位悪魔じゃ……大陸1つ破壊できるよね……」


「そうなのだ。でも今は邪龍となってバスタードソードに封印されているから、本体の力はそんなに出せないのだ」


「そ、そうか」


なぜ悪魔が邪龍になるのかさっぱり理解できなかったが、リオンはバスタードソードが道に落ちていても、絶対に拾わないでおこうと心に固く誓った。



「大丈夫なのだ。召喚者が魔力供給を全開にしていない状態だと、能力は10分の1にまで落ちるのだ」


「そ、そうか。それなら安心だな」


 それでも瞬殺だと理解したリオンは、間違ってもバスタードソードが飛んで行った方向には出かけないようにしようと更に決意を固くした。


「じゃあスイちゃんは新しい剣が必要っスね。明日買いに行くっスか?」


「う~ん。どうしようなのだ」


 2人の会話を聞いたリオンは、第六感が働いたように名案が浮かぶ。


「スイ、剣が無くなったんだったら新しい剣が必要だ。明日、武器屋に行って新調してこないと闇黒騎士とは認められないぞ」


「それは大変なのだ。僕は明日、武器屋で闇黒騎士の剣を購入してくるのだ。リオン君は明日1人だけど大丈夫なのだ?ネルちゃんも明日の用事でもういないのだ」


 ネルは用事があるとのことで、宿屋に着くなり物凄いスピードでどこかに走っていった。


 デジャヴだろうか?


 その姿はどこかの母親に似ているように感じるリオンであった。


 スイはリオンを独りにする事を心配し、彼を見つめた。


「俺は大丈夫だよ。俺にはヤキトリがいるしな。しっかりと暗黒騎士に相応しい武器を買ってこい」


「おうなのだ」


「ま、ま、まさか主は俺っちと2人っきりになって……セクハラ防止委員会に電話するっス。グゲ」


 リオンはヤキトリに竹串を差し込みながら、街の武器屋に闇黒剣は売ってないだろうなと思った。



◇◆コケ◇◆コケ◇◆◇コケ◆◇コケ◆◇コケ◇◆コケ◇◆コケ◆◇



 リオンはニヤニヤが止まらずにいた。


 通行人は不審者を見るように、リオンの周りを避けるように通り過ぎていく。


 それも仕方のない事だ。


 リオンが叫んだりニヤニヤしているのは、娼館の前だったのだから。


 そんな者が店の前で騒いでいたら変質者ある。


 そして当たり前の事だが、店の人間も黙ってこれを見ている訳にはいかない。


 甚だ迷惑な行為である。


 もしお店の女の子をストーカーしようものなら、即シメられるであろう。


 もっとも今はお客の可能性もあるので、優しくお店のお姉さんが娼館から出て来てくれていた。


「ちょっとお兄さん、店の前で何叫んでるだよ。お客さんかい?それともただの冷やかしかい?」


 露出の大きい服を着た女性が、リオンに声を掛けてきた。


 リオンは思わず女性の胸元に目をやった。


 そしてマジマジと見つめてしまった。


 そこには男の理想とする宝が二つ、これでもかと言う存在感でふてぶてしく鎮座していた。


「お~い!私も見せるのが商売だから見られるのは慣れてるんだけど……貴方、いくらなんでも見過ぎよ。そんなに溜まってるの?」


「えっ!!いや、あの……すいません」


「いいわよ。若い男にそこまでガン見されるのも気分は悪くないわよ。私もまだまだイケてる女だって思えるしね」


 大地の実りに目を奪われていたリオンは、失礼な事に今初めて女性の顔を見た。


 女性は二十代後半ぐらいだろうか?


 人好きのする笑顔にリオンは思わす、顔を赤らめてしまった。


 普段から絶世の美人達に囲まれているリオンからすれば、娼館の女性に頬を赤らめる事に疑問を覚えるかもしれない。


 しかし当のリオンからすればデコピンで人を爆散させるような人外達にそんなイヤらしい視線を向けられるのかというと絶対にできない事であった。


 例え現在の忠誠心パラメーターが高いからといって、いつそれがだだ下がりするか分からない状況で命をチップにギャンブルする気になれない。


 もちろん世の中には自分の命をチップに、その道を極める者もいるのだが、リオンは違ったようである。


 では転生前の魔王時代は簡単には殺されなかったから、手を出せたのではと感のいいかたなら思うかもしれない。


 しかしリオンは魔王時代でも手を出すことが出来なかった。


 詳しい理由は省くが、真正のヘタレ野郎であったのが主な原因だ。


 それはもうヤキトリにコケコケされるくらいにはチキン野郎であった。


 そしてリオンは、そのチキンハートを克服し自分に自信を持つための修行を行うために、人知れずに娼館を訪れるのであった。


「それでお兄さんはお客さんかな?」


「はい、大丈夫です。ぜひお姉さんでお願いしたいのですが」


「あら、私?可愛い事言うわね。でも私もそれなりにするわよ。お兄さん、お金はあるの?」


「はい。いくらぐらいでしょうか?」


 リオンは女性の目を直視することが出来ずに、女性特有の柔らかそうな唇に目線がいってしまった。


「そうねえ。最近は傭兵や兵隊なんかが集まって来ていて、ここら辺の相場も上がってきているんだけど。お兄さんは可愛いし、サービスして銀貨三枚でいいわよ」


「ありがとうございます。銀貨三枚ですね」


 リオンは懐を探って気付いてしまった。


 自分は財布を持っていなかった事を。


 リオンの財産は、全て従者達が持っている事を。


 リオンは思考の海に溺れながら、表情を百面相の様にコロコロと変えていく。


「あらあら、残念ね。お金は持ってなかったみたいね」


 可愛いお姉さんはリオンに優しく微笑んでくれ、お金を持っていない事を責めなかった。


「本当にすいません。お金は持っていたんですが、財布を忘れてしまったみたいで……」


「そうなのね。うふふふ。そうゆう事にしてあげるわ。お財布が見つかったら私に会いに来てね。その時はこれを使ってね」


「これは?」


 リオンは女性から受け取った紙片を穴が開くくらいに凝視した。


 その紙片は女性の名前と料金半額か無料でオプションの追加を選べる割引券になっていた。


「凄いです!こんないい物を貰ってもいいんですか?お姉さん」


「いいのよ。あなた、見たところ冒険者の卵でしょ?」


「いや卵では……」


「そうね。卵は失礼よね。最近ね、魔王軍が侵攻して来るからって、薬草の値段が上がってるの。さらに悪い事に在庫も少なくなって手に入りにくくなってるのよ。もし手に入れる事があったらギルドじゃなくて、直接うちの店に持って来て欲しいのよ」


「え?お店でそんなに怪我人が出るんですか?」


「違うわよ。お店特有の病気があるのよ。それにかかっちゃうことがあるから」


「ああ、そういう事ですね。分かりました。割引券のお礼に薬草は探してきますよ」


 リオンは割引券の強力な魔力の影響のためか、冒険者である事を否定しなかった。


 頭の中では、どうやって薬草を手に入れようかと、膨大なシュミレーションが行われていたのだ。


「安心してね。持ってきてくれた薬草は相場以上の値段で買い取らせてもらうからね」


「そ、そうなんですね。ありがとうございます」


 これで料金の問題が無くなったと、リオンは心の中は歓喜の渦に包まれていく。


「ねえ、お兄さん?顔が悪徳商人のようになってるわよ。大丈夫?」


「大丈夫ですよ。マリアン……さんでいいですか?」


 リオンは割引券に書かれていた名前で女性を呼んでみた。


「そうよ、私はマリアンっていうの。よろしくね。若い冒険者さん」


「既に俺の時代は、もうすぐそこまで来ていますから、大船に乗ったつもりで待っていてください」


 リオンの気分は既に、りっぱな冒険者となっていた。


 リオンはキリッとした顔を作っているつもりであったが、実際はかなり鼻の下が伸びていた。


「え、ええ。わかったわ」


 マリアンはリオンに娼館の割引券は少し早かったのではないかと、渡した事を少し後悔し始めていた。


「コッケコケ~♪コケ子♪ポテトチップス♪美味~し♪」


 突然だが奇妙な歌を口ずさむ影が、娼館から出て来た。


 リオンは思わず、その変な歌に本能が引っ張られ視線をそちらに向けた。


 そしてリオンは思考が停止てしまった。


「え゛?」


 そこにいたのは神聖なるピンクの脂肪の集合体、ヤキトリであった。


「コケ?おや?これはこれはリオン君じゃないですか。ここで一体何を?」


 ヤキトリは、なぜかスーツを着こなし、クチバシに葉巻をくわえていた。


 そして口調に『っス』がなかった。


 リオンは思わず殴りたくなったが、今はすこぶる機嫌がよかったので、少し我慢することにした。


「お、おい。何でお前がこんな所にいるんだ?…というかなぜ、あの建物から出てきた?しかも口調がおかしいぞ」


「コケ?俺っちの商売っス。俺っちにも礼儀ってもんがあるんっスよ。人気者は辛いっスね」


「礼儀って……もう口調は元に戻っているが。それよりも、まさかお前は糞を売ってるんじゃあないよな?」


 ヤキトリがエリクサー並みの効果があるピンクの柔らかな糞を、娼館に売っているのではとリオンは考え焦った。


 ピンクの糞にはリオンはどうやっても対抗する事が出来ず、リオンの新たなる世界へ羽ばたくという夢は潰えてしまうからだ。


 ヤキトリの糞に負けるリオンもどうかと思うが、今は深く突っ込まないでおく。


「コケ~!俺っちがそんな下品なモノを売る訳ないっス。失礼っス!名誉を害されたっス。コケコケ」


 ヤキトリはリオンの発言にプリプリと脱糞しながら、くってかかっていった。


「おいおい。今すでに脱糞しているじゃないか!というかスーツはどうした?」


「何言ってるっスか?ズボンに糞を付ける変態趣味はないっス。謝るっス。コケコケ」


 ヤキトリは怒りをさらにヒートアップさせ、いつのまにかスーツを脱いだ大きなお尻をフリフリしていた。


 反動でピンクの糞がそこら中に飛び散っていた。


 絵面的には非常にひどいモノだったのは、あえて語らないでおこうと思う。


「わかった。分かった。俺が悪かった。だから怒りを納めてくれ」


 リオンはこれ以上糞を撒かれては自分の野望が潰されると思い、プライドを捨てて、すぐさま謝った。


「分かればいいっスよ。俺っちの偉大さが分かればいいス」


「いや、俺は偉大だとは一言も……」


「何っスか?偉大なるモテモテ団の団長の俺っちにかかれば、主に女の子の一人や二人簡単に紹介できるんスけどね。主は俺っちを偉大だと思ってないっスか?」


「ヤキトリ、いえヤキトリ様。これより私を下僕としてお使いください。


 リオンはすぐさま自分のプライドを捨てて、ヤキトリにへりくだり忠誠を誓った。


「良きにはからえっス。仕方がないから主に女の子を紹介してあげるっス。美人三姉妹って奴っス」


 美人三姉妹と聞いたリオンは、既に我が世の春が来たことを実感し、ヤキトリの後をついていくのであった。



【次回予告 待ちに待ったエロエロ回っスよ……本当っスか?あっ!?タイトル詐欺って奴っスね】


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