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冒険者ギルドにてテンプレおこる

「ここが冒険者ギルドかぁ。何か思っていたよりもボロイな」


 今、リオン達は目的の冒険者ギルドの前に立っていた。


 もちろんリオンはネルに背負われることなく、何とか自分の足で立っていた。


「スイ、ねぇね。いいか。何をされても絶対に殺しちゃ駄目だぞ。首チョンパは禁止だからな」


 どこかで聞いたようなセリフが、再びリオンの口から放たれた。


「わかったの な。ねぇねは弟のお願いを聞くのは姉としての務めなの な。ねぇねの嗜みってやつなの な」


「分かってるのだ。剣士の心は闇の中に取り込まれているのだ」


 ネルはプス―と鼻息を荒くし、スイはバスタードソードをプルプルしながら構えていた。


「駄目だ、スイ。バスタードソードは封印だ」


「なぁ!仕方ないのだ。闇黒の狭間で邪龍が封印されてしまったのだ」


 スイは仕方ないと腕をプルプルしながら、バスタードソードを背中に背負った。


「本当に大丈夫なのか?トラブルが起きそうな気がする……」


「諦めるっス。どうせ主が、また問題起こすっス。考えても無駄っス。冒険者ギルドでテンプレっスよ」


「うっさい!もっちり肌め!俺はテンプレを根元から破壊するデストロイヤーだ」


「コケ!もっちり肌を馬鹿にしたっスね!失礼っス!コケコケ!あれ?コケ?」


 ヤキトリは、自分が馬鹿にされているのか良く分からなくなってしまった。


「そういえばシューリンはいつ戻ってくるんだ?」


「さっき通信したら、今すぐ戻ると連絡があったのだ。冒険者ギルドで用事を済ませていれば、合流できるのだ」


「そうか。連絡がついているならそれでいいんだが……。何かトラブルの予感がする」


 どここで聞いたようなセリフを、リオンはまた呟いてしまった。


◇◆コケ◇◆コケ◇◆◇コケ◆◇コケ◆◇コケ◇◆コケ◇◆コケ◆


 冒険者ギルドは一階に受付があり、二階はギルド職員の事務所になっていた。


 夕方の時間帯のためか、多くある受付カウンターが依頼を完了した冒険者達でごった返していた。


 リオンはガラの悪い人達に絡まれないかとドキドキしながら、受付の1つに向かっていく。


 当然ながらリオン達を値踏みするように眺める連中もいたが、特に絡まれることはなかった。


 フロアがゴチャゴチャしているので魔王軍の侵攻にについて、誰に聞けばいいか分からず、リオンは取り合えず適当に順番待ちしている列に並んだ。


 直ぐ後ろにガラの悪そうな男が並んできた時は、リオンは気配を消すように超ステルスモードに移行した。


 もちろん絡まれたら漏らす覚悟もバッチリだった。


 30分ぐらい待っていただろうか、順番が回って来たのでリオンは受付嬢の方を見てみた。


 受付嬢は若干きつめの顔をしていたが、けっこうな美人の女性だった。


「お疲れ様です。今回は依頼の報告でよろしいですか」


 リオンは気が強い女性への苦手意識を覚えながらも、勇気を振り絞り受付嬢に声を出した。


「今日は依頼の報告じゃないんだ」


「それでは、どういったご用件でしょうか?」


 受付嬢は若干リオンを訝しむ表情で見つめた。


「魔王軍の侵攻について聞きたいんだが…」


「魔王軍の侵攻についてですか?それは……最重要機密になりますので、冒険者のランクに合わせて情報提供させて頂いています」


「いや、俺は魔王軍にドラゴンがいるのか知りたいんだが」


 リオンは自分を裏切った者が、魔王軍を先導しているのかを切実に知りたがった。


「それでしたら教える事はできません」


「え?なんで?」


「あのねぇ、ハッキリと言わないと分からないの?貴方達みたいな顔も知られていない新人冒険者に、重要な魔王軍の侵攻について教える訳ないじゃないですか。いるんですよね。実力もないくせに俺に活躍させろと喚くヤカラが」


「いや、俺はちが!?」


「皆さん、そういうんですよ。俺は違うんだ。そこいらの冒険者と一緒にするなとかね」


 冒険者じゃないと言おうとしたリオンに、受付嬢はゴミクズのように冷たい視線を送った。


「本当に俺は!?」


「もう言い訳はいいですよ。新人冒険者は新人らしく薬草採取でもしていてください。今なら5割増で買い取ります」


「だから俺は……」


「しつこいですね。もう私は忙しいんです。さっさと受付の前を開けてください。


「俺の話を……」


「おい!お前!さっきから聞いていれば、何を受付嬢に絡んでるんだよ」


 リオンの後ろに並んでいた筋骨隆々の男が、リオンと受付嬢の間に割り込み、リオンを睨んでくる。


 リオンは間違いなくチビッただろうが、ここは深く追求しないでおく。


 思いやりというやつだ。


「いや、俺は!?」


「何だぁ?お前、女みたいにグチグチと言いやがって。さっさと消えろって言ってんだよ」


「さっきから黙って聞いてたら、何っスか!この禿野郎がっス!」


「何だと!今、お前は俺様に禿って言ったのか!」


 確かによく見なくても男は、世紀末も真っ青なスキンヘッドだった。


「いや、俺は「気が短いっスよ。耳が悪いっスか!このハゲっス!俺っちを舐めてるっスか!」」


「ああん?この野郎!俺にケンカ売ってるのか?」


「違います!俺は何も言ってません。頭の上のピンクの塊が言ったんです」


 スキンヘッド男はリオンの頭にあるピンクの塊に目をやったが、焼き鳥は可愛いぬいぐるみを演じているのか一切動かなかった。


「なんだぁ?この不細工なオーク鳥の縫いぐるみが、どうした?こんなのがしゃべる訳ないだろ」


「そのピンクの塊は「とってもぷりちいな縫いぐるみっスよ!コケ!不細工とは侮辱っス!オークに失礼っス!謝るっス!このハゲ!ハゲ!ハゲ!ハゲ!ハゲ!ハゲ!禿っス」」


「何だと!俺をコケにしてるのか、この野郎!」


「そんな「事も分からないっスか?脳みその少ない脳筋は理解力が少なくって困るっスよ」」


「そうか。俺にも分かったよ。お前は腹話術で俺にケンカ売ってるんだな。覚悟はできてるんだろうな?」


「いえ、俺は「覚悟なんていつでもできてるっス。さっさとかかってこいっスよ」


 スキンヘッドの男は頭に血管を浮き出して、拳をバキバキと鳴らしだした。


「ちっと待っ「たせるのが長いっスね。カッコつけても無駄っスよ。その顔と同じっス」


「ああ。分かったよ。さっさと殺してやるよ。新人冒険者がB級冒険者の俺にケンカを売ったことを後悔しな」


 男は拳を大きく振りかぶった時に、冒険者ギルドの入口からドタドタドタと騒音を撒き散らしながら近づいてくる者があった。


「待って~。リオンちゃんを守るのはママのお仕事よ。今こそ新生ママの力を見せるわ~。だ・か・ら・待って~」


 あまりの騒音に男は振り上げた拳を止めて、音の発生源に顔を向けてしまった。


 そこには悲しみからか、悔しさから、欲望からかは分からないが、涙と鼻水と涎を撒き散らし、こちらに近づいてくる女がいた。


 その涙は真珠のようであり、鼻から離れず揺れている雫はアクアマリンのようであり、口から溢れ出る湧き水は光があたりオーロラのように輝いていた。


 男はその姿を見てしまったため、メデューサを見てしまったように動きを止めた。


 それは美しかったからではない……言葉にできないがあまりにもアレだったからだ、アレ……だ。


 シューリンはシュタッとリオンの前に立ち、背後を守るようにした。


「リオンちゃんは私がお腹を痛めて産んだ子よ。この子を傷つけるというなら、ママの私からにしなさい!」


 シューリンは男に叫ぶと、リオンの胴体に飛びつきガッチリとしがみついた。


「リオンちゃん、これがリオンちゃんが求めた酸っぱい臭いよ。ママはお風呂にも入らず臭いを極めたのよ」


 リオンに抱っこちゃん人形のようにしがみついているシューリンを見た男は、少し引きつった顔をした。


 しかし次第に自分が馬鹿にされたのだと感じ、頭の血管をブチ切りそうなくらい浮きだたせた。


「てめえら!よくも俺様を、ここまでコケにしてくれたな!覚悟しやがれ!」


 男は思いっきり拳を振り上げて、リオンの顔面向かって理不尽な暴力を振り下ろした。


 リオンは自分の眼前に迫った拳に思わず目を瞑り、顔を庇うように左腕を上げた。


 その後には拳の砕ける音と共に、男の悲鳴が冒険者ギルドに響きわたった。


 リオンは自分に痛みがない事に気づき、シューリンが鎧の役目をはたしてくれたのだと考えた。


 恐る恐る目を開けたリオンの目に最初に入って来たのは、シューリンではなく、リオンの左腕にしがみつき小盾のように男の拳を防いでいるネルの姿であった。


 「ああ、早く私をクンカクンカして!ママの真の酸っぱい臭いを見せつけるわよ」


 リオンが少し目線を下げると、リオンに抱きつきながらブツブツ言っているシューリンの姿があった。


 ハッキリ言って気持ち悪かった。


 しかし、現実は変わらない。


 何を言おうともリオンを産んだ母親には違いないのだ。


 悲しいのはリオンの鼻孔をくすぐったのは酸っぱいニオイではなく、柑橘系の爽やかな香りであった。


 今シューリンはグフグフやっており、最大の見せ場がネルに奪われてしまった事に気づいていない。


 今は妄想にふけって涎を垂れているが、数秒後には涎は鼻水と涙に代わり、服が大事件になるのだとリオンは悟った。


 もっとも現状もシューリンの涎で服が濡れているので、大した違いはないのだが……。


 それにリオンには、がっしりと抱き着いているシューリンを引き剥がす事はできなかったので、早々にそのことについて考えるのを止めて現状の確認をする事に意識を向けた。


「ねぇね、何してるの?」


「む?ねぇねは姉としての務めを果たしてるの な。ねぇねとしての嗜みなの な」


 リオンの左腕にしがみついているネルだが、その顔は自信に満ちており鼻息をぷすーと可愛らしくしていた。


「ねぇねは今は盾になってるのかな?」


「そうなの な。ねぇねには七つの型があるの な。今は【ねぇねの嗜み】第4形態【難攻不落(ねぇねの愛は他の女)の障壁(を近づけさせない)】なの な」


「あの……えらくぶっそうな名前なんですが、ねぇねの盾に名前の効果はないよね?」


「ふっ!?ねぇねの力は弟の愛さえあれば無限大。安心するの な」


 全く安心出来ないと思うリオンだったが、ネルに抗議する事は既に諦めていた。


「あれ?何で攻撃がないの?あれ?」


 シューリンはやっと男からの攻撃がないのに疑問を持ったのか、周囲をキョロキョロと見る。


 リオンの左腕にしがみついているネルと、その側でうずくまる男が、シューリンの目に入ってきた。


「こ、こ、こ、こ、こ、これはどういう事?ま、まさかネルちゃんが……守ったの?」


「そうなの な。ねぇねの嗜みなの な」


「マ、ママは、ママは駄目なママなのね。またリオンちゃんを守れなかったのね。びええええええええぇぇぇぇぇぇええええん」


 シューリンはリオンに抱き着いているのに構わず、そのまま泣き出した。


 リオンの服は予想通りに鼻水まみれにされたのだが、人外の腕力を持つシューリンが嗚咽を上げる度に、リオンは万力に締め上げられるようになっていった。


「あがが、いだい。じぬ、じぬ。ジューリン、じぬから止めて」


 危うくリオンが天に召されるかと思った瞬間、シューリンはリオンから離れていった。


「ママは、ママは辛いけど……辛いけど、リオンちゃんに相応しいママになるために修行してくるわぁ。離れるのは辛いけど、びええええええええぇぇぇぇぇぇええええん」


 リオンの服でしっかりと拭き取られシューリンの顔は綺麗になっていたが、涙声でリオンに宣言するとドカドカと冒険者ギルドを出て行ってしまった。


 シューリンがどこに向かったか、それは誰も知らない。


 ただ分かっている事はシューリンが修行を終えた時、本当の母親としての力に目覚めているという事だけだ……なんてことはないと思う。


「ああ、シューリンは行っちゃったか。危うく死ぬかと思った。酸っぱい臭いの後は何を身に着けるのかなぁ。まあ、ねぇねもあんまりシューリンを虐めるなよ」


「む!虐めてないの な!でも可哀そうな事したから次は譲ってあげるの な」


「ありがとう!ねぇねは優しいな」


「の~なぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!」


 リオンに優しいと言われたネルは超ご機嫌になり、いつも眠たそうにしている瞳はカッ見開かれていた。


 我慢しているのか、興奮するとぷすーとする鼻息は今はなく鼻がヒクヒクしていたが……。


「ところで今はどういう状況?」


「あの男がねぇねを殴って拳を砕いたみたいなの な」


「ああ、そういう事。素手でアダマンタイトを殴ってるようなもんだよな。B級冒険者でも拳の骨も砕けるわな。さてどうしようかな」


 リオンが回りを見渡していると、ホロ酔い加減のゴツイ一団が冒険者ギルドの入り口に現れた。


「おい!ギード!依頼完了の報告はまだかよ。もう宴会初めてるぞ」


 一団の中の一人がギードという名の男を探しているようだった。


 それを見たリオンは更なるトラブルが起こるだろうと瞬時に悟り、失禁に備えてパンツの乾き具合を確認するのであった。


【次回予告 主がギルドで問題起こすテンプレっスね。可哀そうなかませ犬が現れるっス。かませ犬って主の事っスか?】


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投票を頂くのは厳しいものだとは重々承知しています。


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星1つでも構いませんので、どうぞよろしくお願い致します。

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