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のしのし亀よ カメさんよ

青い空、白い雲。鬱蒼と生い茂る草花に、見上げる程大きな木が複数俺の視界には見える。


のしのし亀よ、亀さんよ、短い脚で何処へ行く♪


なんとなーくそんな童謡を思い浮かべながら歩み(・・)を進めさせる。


【なんだかご機嫌ですね】

いや、機嫌自体は普通なんだが、なんとなく、な。


補助役にそんなことを返しつつ、俺はさらに彼ら(・・)に歩みを命じる。

それに合わせ、無数の小さな亀。ダンジョンコアが複製した幼生体バブルタートル達が泉より出て四方八方に歩いて行く。

その小さな亀の大群が移動して行くさまは、まるで川から海に向かって大移動する蟹の群れに酷似していた。

そして俺はそのさまをその歩いて行く亀達やダンジョンコアから情報を得ながらリアルタイムで見ている。


【ですが良かったんですか?ダンジョン拡大分のエーテリアルをミニチュアバブルタートルの量産に使って】

ああ、かまわない。まだダンジョンを拡大する方向性も決まってないからな。今回の偵察で周囲の状況を確認してからで良いだろう。

【あなたがそう考えているのならかまいませんが…。ただ、なんでこんな一面バブルタートルだらけにするんです?別に偵察なら少数の方が良いでしょう?】

まあ、蝙蝠なんかの隠密性が高い手持ちがいればそうしたんだがな。今の俺の手持ちって、この泉に棲んでいる水棲生物。魚とか亀。あとは水草型の疑似餌や駒しかいないからな。泉の外に行けるやつだと今はバブルタートルしか選択肢がない。なのにその亀は隠密性はなく、亀の歩みで戦闘力さえない。なら数を増やして生存率を上げ、数の暴力で有用な魔物を捕らえて次に生かすしかないだろう?

【まあ、バブルタートルを有効活用しようとするならそうですね。ですが、それなら偵察用の駒を作成すれば済むだけの話しでは?】

・・・。

【?なんで黙るんですか?】

いや、確かにそうなんだが…。ああ、いや、ぶっちゃけよう。

【?】

ただやってみたかっただけだ。

【そうですか。やってみたかっただけですか】

怒らないのか?

【何故怒らなければならないんです?私は助言役であって、あなたの監督者などではないのですよ。致命的なことをしているならともかく、あなたのエーテリアルの使い方などを怒ったりはしません】

そうか。

【ただ…】

ただ?

【あなたがやってみたくてこういうことをするのを見ていると、私も少し遊び(・・)たくなりました】

遊ぶ?お前って、助言以外に何か干渉出来るのか?


てっきり言葉を伝えることしか出来ないのかと思っていた。何せ今のところこうやってメッセージをやり取りするくらいで、俺はその姿を見たことがない。あるいは、姿というか身体自体があるのかも知らない。ひょっとするとゲームの音声ガイドのようなものなのかもしれないと若干思っていたのだ。


【もちろん出来ますよ。まあ、まだ肉体を構築していないのでダンジョンコアを間接的に操ってですが】

肉体を構築?

【はい。あなたの転生みたいな感じです。この世界用の肉体を用意してそこに宿る】

たしかにそれは転生と言えるな。ちなみに間接的っていうのは俺が操作するのか?

【いえ、私の方でやれます。間接的というのはあなたの力を間借りするという意味です。生み出す為のエネルギーの持ち出しもこちらがするのでお気になさらず】

そうか。ちなみに何をして遊ぶつもりなんだ?

【分類としてはごっこ遊びでしょうか?あなたから得た知識に興味がわくものがありましたので】

俺の知識?


何か他人の興味を引くような知識なんてあったっけか?


【まずはお見せしましょう】


そうメッセージが出た後、ダンジョンコアが淡く輝き出した。


【ミニチュアバブルタートルを生成】


そしてそんなメッセージと共に、今自分が操っているのと同じ小さな緑色の小亀がダンジョンコアから三十匹ばかりポロポロ這い出できた。


【次にミニチュアバブルタートル一体を対象に、ミニチュアバブルタートルの統合を開始】


最初に這い出てきたミニチュアバブルタートルの身体が浮き上がると、そのミニチュアバブルタートルに向かって他の個体が集まり出した。そして俺が様子を見ていると、集まっているミニチュアバブルタートル達の身体が透けだし、そのまま最初の個体に重なるように移動していった。

最終的には全てのミニチュアバブルタートルがまるで写真のネガを重ね合わせたような状態になった。

そのせいか姿がブレまくって目がチカチカしてきた。


【ミニチュアバブルタートルの重複に成功。対象の限界突破を開始】

限界突破?


俺がそのメッセージに疑問を覚えていると、ブレていたミニチュアバブルタートルの像が安定しようとするように中心点の方に像を重ね出した。また、それに合わせるようにミニチュアバブルタートルの身体が少しずつ大きくもなっていった。

最終的には先程駒に倒されたのと同程度のサイズで安定した。

ただサイズはミニチュアから普通のバブルタートルになったが、その存在感?はバブルタートルよりも濃いように感じた。

なんというか、目を引く?生命力に溢れている?あるいは舞台やアニメで目立つようにされている人やキャラクターのような感じがした。


ミニチュアを数十体消費して、バブルタートル一体にしたのか?

【傍目から見るとそういう等価に見えますが、実状は違います】

たしかに雰囲気はこちらの方が強そう?だが、だからどうしたんだって感じだよな。

【ではこちらのデータをどうぞ】


そのメッセージと共に、二つのステータス画面が俺の目の前に出てきた。

一つは普通のバブルタートルのもの。もう一つは今生み出された個体のものだった。



【バブルタートル】(通常種)

Level:1/10

HP:12/12

MP:10/10


【通常スキル】

[泡吐き]

・口や甲羅より状態異常:拘束を発生させる泡を吐き出す。


【バブルタートル】(限界突破1)

Level:1/20

HP:32/32

MP:15/15


【特殊能力】

泡々(アワアワ) level 1]

・口や甲羅より様々な効果を付与された泡を吐き出す。

・levelに応じて付与出来る効果の種類は増加する。

 〔現在使用可能な付与効果〕

・拘束

 触れたものを取り込み状態異常:拘束にする。

・殺菌

 菌に対して大ダメージ。病原菌に対して即死効果。

・洗浄

 触れたものに付着している汚れを洗い浄める。物理的な汚れにのみ効果有り。



level上限に体力、魔力。スキルまで特殊能力に強化されてるな。もうこいつバブルタートルじゃなくて、外見だけバブルタートルの上位種じゃないのか?


ゲームの敵モンスターのごとく、グラフィック使い回しのデータ違いモンスターのように見えた。


【まあ、私としても驚きの結果ではありますね。この世界で強くなるとは進化すること。あるいは経験やバフ(強化付与)で底上げすることです。ですが私とあの方はあなたに出会いそれ以外の強くなる方法を知りました。そう、それが限界突破です】

いや、それってゲームの話しだろう?リアルではそんな強くなる方法ないからな。

【それはそうなんでしょうが、ここは私達の世界。あなたのいた世界も、そこに存在する仮想(ゲーム)の世界も私達にとってみればどちらも異世界です。ですから限界突破という概念がある程度納得のいく設定であれば、それをこの世界の規格で使用することはなんの問題もないのです。実際に成功していますし】

いやまあ、確かに成功例なら目の前にいるけどさ。






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