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※記憶喪失の理由と使徒

『まさかこの世界がそんなギリギリだったとは…。ちなみに俺はなんでそんな存在に派遣されているのに記憶障害なんて起こしているんだ?』

【・・・実を言うとあなたの希望だったのです】

『『うん?』』


星樹の言葉にデュスリュティムは首を捻った。

なんでそんなことを希望するのか自分がわからなかったからだ。


【あなたが賢者として勇者の傍にいたことは話しましたよね】

『ああ』

【あなたの方もある方に負けず劣らずの勇者命だったんです。ですので最初に会った時にはあの方並みにあの子達に敵意剥き出しでした。私もあの方もあの子達は終わったと思ったものです】

『『・・・』』

【その為この世界に降り立った時点で何をしでかすかわからず、あなた本人が勇者の為に記憶を欠落させることを望みました。勇者に怒られるのは相当嫌だったみたいですよ】

『『・・・』』


デュスリュティムは内心そんな理由かよ!と思いましたが、すぐに自分ならあいつの為になんでもやりそうだと思い直して沈黙した。


『・・そうか。ならあの方とやらがやっている記憶の復旧作業っていうのは?』

【戻す記憶の選別作業です。下手なのを戻すと即ヤバいことになりますから。あなたは異世界の賢者であり、ある方から派遣された存在。私達が対処出来ない『何か』を引き起こせる可能性がガン積みなのです】

『『・・・』』


今のところそんな知識や記憶に心当たりはないが、記憶が戻ったら何か出来るようになるのだろうか?

・・いやまあ、一回進化しただけでステータスがだいぶ変わってるしな。ステータススペックだけでああなっているんだから、知識や記憶が戻って選択肢が増えたら確かにいろいろとやれそうだな、とデュスリュティムは思った。



【とまあ、あなたにはそんな事情があります。他にもいろいろと取り決めや隠し事はありますが、私達もあなたが爆発しないように見極めながらしていますので、知りたいことはその都度ご確認ください。また、危険。あるいはまだ早い情報などは口をつぐませていただきますのでご了承ください】

『『・・・ああ』』


なるほど。俺の立ち位置は派遣ということか。しかも対等な相手からではなく、次元違いの相手からの。過保護なのはそのせいか?それとも俺が危険な目にあうと何かまずいことにでもなるのか?例えば俺が覚醒して暴走するとか?それともある方から罰を受けるとか?・・後者はないな。溺愛しているのは勇者だけだと明言していたし。いや、勇者関連で俺も保護対象になっているのか?一緒に旅とかしていたらしいし、排除対象ではないよな?・・これが人間だと執着対象の周囲にいる人間や動物を排除にかかるような奴とかいるんだよなぁ。ある方とやらはどんなタイプなんだろうか?

デュスリュティムは星樹からの情報をまとめつつ、ある方がヤンデレとかではないことを祈った。


【愛しい子。ですので詳しい話しは貴女の方に伝えておきます。今はまだ降臨出来ない私達に代わって、彼を直接フォローしてあげてください】

「はい、御母様!千年分頑張ります!」


アリアンロッドは星樹の言葉に嬉しそうに頷いた。

母親に大任を任されて、相当意気込んでいるようだ。


【それにしてもまさかケイロスの使徒が貴女を。リュクラスの使徒が勇者の手がかりを運んで来てくれるとは、世の中わからないものですね】

『『使徒?』』

「主様、それは私が説明いたします。使徒というのは私達神が自分の加護をもっとも注いだ個人のことを指します。御父様の勇者や御母様の聖母のような唯一の名はありませんので、基本的には何々の神の使徒と呼称されます。権力的な立ち位置ですと、神の次ですね。勢力によっては生き神様扱いで奉られたりします。能力は基本的には加護を与えている神の力をかなり使えます。私の使徒ですと時間関係ですね。時間の加速や停滞、遅延。相性が良ければ未来予知や時間遡行なども出来ます。まあ、時間遡行については影響が大きいので、御父様御母様の許可がいりますけど。主様なら自由に使えると思います」

『それはつまり、俺が過去に行って勇者を助ければ全て解決、と?』

【いえ、さすがに千年もの遡行は無理です。少なくとも私達には技能的、エネルギー的に出来ませんし、ある方も勇者の希望で今まで待っていたのです。その手は使わないでしょう】


デュスリュティムはアリアンロッドの話しから解決策を提示したが、星樹からそれは出来ないと否定された。


『そうか』

『力業は無理か』

「無理ですね」

【無理です】


なんだかアリアンロッドも星樹の方も残念そうであった。

二人にしてもやり直せるのならやり直したいのだろうとデュスリュティムは思った。


『・・・うん?アリアンロッド…』

「なんでしょう、主様?」

『勇者はあの方の使徒の称号なんだよな?』

「勇者は唯一無二なので、使徒という括りではありません。使徒などとは格が違います」

『そうか。なら、勇者を騙ることはどんな扱いになっている?』

「勇者を騙る、ですか?それはもちろん大罪です。即死刑です。普通の神の使徒を騙るだけでも重罪なのです。御父様の勇者の名を騙るなど、世界への宣戦布告ととられても文句さえ言えずに消滅させられるほどの罪です」

『『そうか』』


デュスリュティムはアリアンロッドの言葉を聞いた後、ちらりとライハルトの方を見た。

ライハルトはいまだにエネルギーをチャージしていたが、アリアンロッドの神気に当てられてだいぶ意識が朦朧としているように見えた。ガイの方にいたっては、膝をついた状態で気を失っているらしかった。

デュスリュティムはそんな二人を見た後、向こうがそういうつもりなのだと理解した。勇者を殺し、自分達の使徒に勇者を騙らせている。アリアンロッドの言葉を借りるなら、世界への宣戦布告。どうやら向こうは世界に挑む気らしい。

それにしては星樹達を千年も放置していた気もするが、俺には関係ないなとデュスリュティムは思った。


【ふむ。そういえばその二人はどうするのです?勇者への手がかりとして帰すとは言っていましたが、なぜ広域殲滅神術の発動を許しているのですか?】

『うん?それはもちろんそれが利益になるからだが?』

「【利益?】」

『ああ。これだけのエネルギーなんだ』

『利用しないともったいないだろう』

【もったいないかはわかりませんが、どうやって利用するつもりなんです?】

『それはもちろん、ダンジョンにエーテリアルに変換させるんだ』

『そしてダンジョンの拡張。モンストゥル生産の為のエネルギーとして確保する』

【なるほど。そういうおつもりでしたか】


星樹はやたらとデュスリュティムが時間稼ぎをしているようで不思議に思っていたが、その説明でようやく納得がいった。

どうやら隙を見せているようで、その実しっかり自身の安全とエネルギー問題について考えていたようだ。


【ならばそろそろ魔の森を消滅させられるだけのエネルギーチャージが終わりそうなことですし、正気に戻ってもらいましょうか。愛しい子、貴女の神気を収めてちょうだい】

「はい、御母様!」


アリアンロッドは一つ頷くと、自身が放出している神気の量を調節し始めた。




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