表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/68

※二駒顕現 星樹の御言葉

『さあ、始めよう!』


デュスリュティムは咥えていた珠を空に放り投げた。

投げられた珠はある程度の高さまで昇るとそこでピタリと止まり、空中に固定されたかのように静止した。


『今の我では神の封印を容易には解けない』

『だが干渉することは出来る』


デュスリュティムはそれを見上げながら今度は片方の頭から青いクリスタル。ダンジョンコアを珠目掛けて吐き出した。

吐き出されたダンジョンコアはそのまま珠に接触し、珠と融け合うように合体した。

二つが合体して出来たのは、白銀のクリスタルだった。


『第一段階完了』

『封印との融合に成功』

『封印への干渉を開始』


デュスリュティムがそう口にすると、白銀のクリスタルの表面に無数の波紋が現れ始めた。


『何をなさっているのです?』

『神を封じている封印を支配下に置こうとしている』

『まあ、完全に支配下には置けないだろうが、多少干渉出来れば良い。そうすればもう一つの方で封印は解ける』


インファスの疑問に答えつつ、デュスリュティムはクリスタルの中で頑張っているダンジョンコアに指示を出した。

ダンジョンコアはデュスリュティムに言われるがまま珠をダンジョン化し、そこにある封印という環境を操作する。

それにより封印は綻び、それがクリスタルの表面に波紋として現れている。

その為封印が綻べば綻ぶ程表面に浮かぶ波紋は多くなり、波紋同士が干渉し合うことでさらに封印が綻んでいった。


ドクンッ!

「「『!?』」」


そしてそれが進行することにより、珠から封じられている神の気配。神気が周囲に漏れだし始めた。

それはエミリアが力をふるっていた時に感じた力よりも力強く、ライハルト達に宝玉の中に本当に神がいるのだと信じさせるには十分なものだった。


『ふむ。さすがは神を千年もの間封じた封印か』

『正規の解除ではないから完全解除には数ヶ月から数年はかかりそうだな』 

『ならば当初の予定通り』

『次の干渉を始めるとしよう』


デュスリュティムはダンジョンコアから得られる情報から、封印の完全解除には膨大な時間がかかると確認した。

なので次の手を打つことにした。


『どれが良いか?』

『本人の性質に近いものが良いだろう』

『ならこれにするか』

「「!?」」


デュスリュティムがそう言うと、デュスリュティムの目の前に不思議な材質の人形。ボードゲームで使うような何かを模したらしい駒が二つ出現した。

それを見たライハルト達は次は何が起こるのかと警戒した。

今のところ宝玉からは神気が漏れているだけだが、次にどうなるかはわからない。予断を許せない状況であった。


『何をするおつもりですか?』

『駒を付与する』

『それによって封印自体を俺の手駒にする』

『ついでに中にいる神も新生させる』

『さぁ、封印を抱く女と時の女神の駒よ、行け!』


デュスリュティムが命じると二つの駒。

宝玉を捧げるように持った巫女のような出で立ちの駒と、月と城を背に佇む女神を模した駒がそれぞれクリスタルの方に飛んでいった。


ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!

「「『くっ!?』」」


そして二つの駒がクリスタルに触れると今までにない勢いで神気が溢れだし、周囲を物理的に圧し始めた。

ガイは膝を着き、ライハルトも身体をふらつかせた。

モンストゥル達も僅かながら後ずさった。


『『さぁ、新生の時だ』』

カッ!

「「『ぐっ!?』」」


デュスリュティムがそう言った瞬間クリスタルから眩い閃光と大量の神気が一気に放出され、やがてそれは二点で急速に収束して何かを象り始めた。

片方は銀色の髪に青い瞳。銀色のクリスタルが付いた荘厳な杖を持った、十代半ばの中性的な容姿の人型。

もう片方は銀色の月を想起させる円盤を背にした淡く儚い印象を受ける女性的なシルエットの白銀の人型。


『名が無き物』

『名を奪われた(もの)

『『汝らに名を贈ろう』』

『汝が名は希望を封じし珠(パンドラ)

『汝が名は巡る月の刻神(アリアンロッド)

「「拝名致しました」」


デュスリュティムがそれぞれに名を告げると、二人はそれに恭しく礼をした。


『これにて我は二番目の利益を得た』

『あの女もわざわざ俺の仲間になるものを持って来てくれるとはな。馬鹿な女だ』

「「『・・・』」」


デュスリュティムはエミリアのことを馬鹿だと嗤うが、ライハルト達は笑えなかった。普通、自分の武器の中に神が封印されているなんて考えるわけがない。さらにその神が敵に復活させられ、そのまま敵の味方が増えるなんて考えるわけがなかった。

ライハルト達的にはエミリアがどうこう以前の問題であった。



「主様」

『なんだ?』

「封印より解き放っていただきありがとうございます」

『ああ』


ライハルト達がそんなことを思っている中、最初に声を出したのは復活したばかりのアリアンロッドであった。

アリアンロッドはまずデュスリュティムに助けてもらった礼を言い、次いで少し気まずそうな感じの視線をデュスリュティムに送った。


『どうかしたか?』

『不具合でもあるのか?』

「いえ、肉体的には万全です。ただ…」

『『ただ?』』

「お恥ずかしい話なのですが、今の状況がまったくわからず。今はどのような状況なのでしょう?」

『『あー?』』

「封印されている間も時間の流れは感じていたので封印されてから千年程経っているのはわかっているのですが、中からでは外の様子などはまったくわからず、今の状況がさっぱりなのです。今私がわかっているのは、私が主様に助けていただいたこと。私が主様のお力で新生し、主様に仕える存在になっていること。主様からあの方々の加護を感じること。そこにいるキノコからも星樹様と世界の意思を感じることなどです」


アリアンロッドは自分の理解していることをデュスリュティムに話し、最後にキノコ。モンストゥルを見てそう口にした。


『星樹?』

『モンストゥルから感じるならやっぱりメッセージのことか?』

【そうですね。彼女の言う星樹とは私のことです】

「御母様!」

「「『『御母様?』』」」


デュスリュティムが互いの頭でアリアンロッドが言う星樹というのが誰か考えていると、とうの本人。メッセージこと星樹の言葉がその場にいる全員に見える形で現れた。そしてそれを見たアリアンロッドは御母様と驚きの声を上げ、デュスリュティムやライハルト達はアリアンロッドの母親という言葉の方に驚いた。



「なぁ、ライハルト。神様の母親てぇと…」

「ああ、創造主様の伴侶。始まりの命。あまねく種族の母。聖母様のことだろう」


その内のガイとライハルトは、自分達の知る神話から星樹というのが自分達が崇める聖母様だと理解し、その御言葉に強い畏敬の念を抱いた。

そしてチャージ中で動けないライハルトはともかく、ガイの方は自然と膝を折って頭を下げた。




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ