初戦闘はバブルタートルと
それじゃあ最初は駒の作成からか?
【はい。一応最初からある持ち駒もありますが、今は自分を模した駒を作成してみてください】
自分を模した駒?
【はい。ピースマスターで扱える駒には、定形型や複製型。デザイン型があります。今回はダンジョンスネークの戦い方を知る為に、自分を複製した駒を作成して戦わせてみましょう】
わかった。どうやればいいんだ?
【通常スキルの熱感知とは仕様が違いますが、それでも使用方法は変わりません。あなたがやろうと思えばやり方が知っているものとして思い浮かんできます】
わかった。
俺は言われたとおり、自分の駒を作りたいと考えた。
するとどうすれば良いのかという手順が次々に思い浮かんできた。
まずは自分の姿を思い浮かべる。次にそれを駒にすることを決め、自分の目の前にそれがあることをイメージする。
すると自分とバブルタートルの間で光の粒子が舞い、やがてそれが蛇の姿に凝縮された。
最終的に、無機質な目をした今の自分の姿がそこには出来上がった。
【成功です。あとはオート操作を選択してください。それでその駒は戦闘を開始します】
わかった。
俺は言われたとおりにオート操作。自動で行動するように駒に念じた。
すると目の前にいる蛇は俺からバブルタートルの方に向き直り、口から何かを水中に吐き出した。
それは青いクリスタルのように見えた。
そしてその何かを中心に光の帯が無数に出現し、やがてそれは波紋のように周囲に拡散していった。
【ダンジョンコアの生成及びこの泉のダンジョン化に成功しました。これにより、今よりこの泉の中はあなたの領域です】
俺の領域?それはどういう…
俺が聞こうとした直前、新たな動きが水中に起きた。
魚達が泳ぐことで発生する動きしかなかった水に、ある一定の流れが生まれ始めたのだ。その流れはバブルタートルの周囲を取り巻くと、やがて蛇のように亀の身体に巻き付いてバブルタートルを締め上げだした。
どうなってるんだ、…これ?
【駒がダンジョンの環境設定を弄って水流を操っているのです】
水流を?
【はい。これがダンジョンスネークの戦い方です。ダンジョンコアを生成し、周囲の環境そのものを武器に変える。今は水の流れだけを操っていますが、ダンジョン内なら光量や重力、大気や水の成分からその濃度に至るまで操作出来ます】
光量や重力はともかく、大気や水の成分まで弄れるのか!?
【はい。無から有は生み出せませんが、有るものを偏らせることはそこまでリソースの必要な能力ではありませんので】
バタバタ!!
補助役から俺がそう説明を受けている間、正面ではバブルタートルが駒の攻撃を受け続けており、必死に水流から逃れようと身体をジタバタさせている。
また、これを引き起こしている駒に向かって泡を向かわせようとしているようだが、駒に向かった泡はそのことごとくが水流に押し戻されて亀の身体にぶつかって弾けて消えていっていた。
ぶっちゃけ勝負になっていなかった。まあ、拘束や逃走しか選択しない亀なのだから、どうにも出来ないのだろう。
やがてバブルタートルが力尽きると亀の身体が白い光の粒子になって駒の前にあるクリスタルの方に飛んで行き、そのままダンジョンコアの中に吸い込まれて消えていった。
【とまあ、これがダンジョンスネークの戦い方になります。ダンジョンコアを生成し環境を味方につける。そしてダンジョンの中のものを操り敵を倒す。倒した相手をダンジョンコアに吸収させ、それをダンジョンコアのエネルギーにする。そしてそのエネルギーでダンジョンの範囲を広げたり、取り込んだ相手の疑似餌を作り出したりして戦力を増やしていきます】
疑似餌?
【エネルギーで作り出す魔物などの模造品のことです。疑似餌はダンジョンの目であり耳。ダンジョンの感覚器と言えます。あなた風に言うのなら、カメラやスピーカー。ドローンと言ったところでしょうか?】
カメラやスピーカーにドローン?その疑似餌っていうのは、非生物の道具っていう解釈でいいのか?
【今はその解釈で構いません。本物はいくらでも後で見れますますから、見てから自分が感じた風に思えばよろしいです】
そうか。
【そして注意事項なのですが、ダンジョンスネークはダンジョンコアの生成に能力を極振りしたタイプのモンスターです。その為身体的な強さはそこらにいる野生動物にも劣ります】
そうなのか?
【はい。なので基本的に近接戦闘は絶対に避けてください。人の子供でもただのイタズラで殺されかねませんので】
うわー、どこのスライムだよ。
子供の悪戯で殺されかねないって、どんだけ貧弱なんだよこの身体!
【それがダンジョンスネークの在り方ですので。進化すればその辺りも改善されますので、2、3回進化するまではダンジョンから出ないようにしてください】
わかった。
俺は頷くと、駒とダンジョンコアの方に向かって移動した。