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※キノコはまだ

「ライハルト、さっきのどう思う?」

「あのモンストゥルの消え方か?」

「そうよ」


エミリアの手によりライハルトの仲間達は状態異常から回復した。

その後凍らせているモンストゥルをライハルトの高威力の雷撃で始末したのだが、その攻撃を受けたモンストゥルの最期にエミリア達は違和感を持っていた。

魔物が倒された場合は死体が残る。モンスターが倒された場合は元の魔力に戻り霧散する。

だがモンストゥルの場合は茶色い光の粒子に変わった後、大地に吸い込まれるように消えていった。

それがエミリア達には引っ掛かっていた。


「あいつ、詠唱の時に地のモンストゥルとかいってたわよね?まさかとは思うけど、あの状態で逃げたとかないわよね?」

「こういってはあれだが、じゅうぶんありそうだな。あいつは俺達が今まで遭遇したこともなかった何かだ。それくらい出来ても不思議じゃない」

「最悪の予想ね。私も否定出来ないのがなお悪いわ」


エミリアもライハルトも当たってほしくはないが、普通にありそうで難しい顔した。


「でもとりあえず消滅はさせてるわ。さすがに今すぐ復活して再戦を挑んでくることはないはずよね。出来るなら氷が消えた時点で挑んできたでしょうし」

「それはそうだろうな」

「ならあいつが復活する前に奥にたどり着きましょう」

「ああ、そうしよう」


勇者二人は頷き合うと、駆け足で森の奥を目指した。

やはりモンストゥルが復活してくる可能性が、みんな頭から離れなかったからだ。




「相変わらずキノコは多いけど、平和なものね」

「そうだな。だが普通の魔物もキノコ付きの魔物も一切姿を見ない点はかなり不気味だ。魔物達は何処に行ったんだ?」


そうして森の中を歩いて行くが、先程までとは逆に不気味な静寂だけが道中に付いて回った。


「一番当たってほしくない可能性としては、あのモンストゥルが復活する為のエネルギーにされているとかじゃないかしら?」

「止めてくださいローザさん!ありそうで怖いです!」


ローザの予想にソアラは顔を蒼くした。


「本当にそうなってそうなのが嫌なところだな」

「そうだな。うん?」

「どうした?」

「いや、今何か…」


そんな二人のやり取りに同意しつつ、アイン達男二人も周囲に気を配っていた。

そんな中、アインは何かに違和感を覚えた。

それはすぐには出てこなかったが、見逃してはならないと自分の中の何かが警鐘を激しく鳴らした。


「どうかしたのか?」

「ううん?」


アインは一度立ち止まると、周囲をぐるっと見回した。

そうして何に引っ掛かったのか捜していると、ある場所で目が止まった。

アインはその場所に移動すると、そこにあったもの。

赤、青、緑の三色斑のキノコに目を向けた。


「おいアイン、そのキノコがどうかしたのか?」

「いや、なーんかこのキノコが引っ掛かるんだよな。気のせいか一定間隔で見かけるような気がするし」

「アイン、ガイ。何を見ているの?・・・いぃっやあぁぁぁー!迷いダケー!」

「「「「「!?」」」」」


そんな二人の様子が気になったローザは二人に声をかけて何を見ているのか覗き込んだ。

そしてアイン達が見ているものがなんなのか理解したローザは、堪えきれずに悲鳴を上げた。


「ローザ、どうしたんだ!?」 

「ローザさん!?」


そのローザのただならぬ様子にライハルト達もアイン達の傍に集まって来た。


「・・・ここに迷いダケがあるってことは…。〔火球〕!」


だがそんな仲間に構っている余裕はローザにはなかった。

アイン達。というよりも迷いダケから後ずさって距離をとった後、ローザはぶつぶつと何事か呟いた後に急に空を見た。

そしてその空のある一点目掛けて火の魔法を放った。


「ローザ急にどうしたんだ!」

「ローザさん、いったい何を!?」


誰もがローザのその突然の行動に驚いているが、ローザは真剣な眼差しで火球の行く先を追っていてまったく気にしていなかった。


「「「「「「あっ!」」」」」」


これはさすがに何かあると他の面々も火球の後を目で追いかけると、ある程度の高度に達した火球が変な軌跡を描いてそれまでとは明後日の方向に飛んでいってしまった。


「ああ、もう、やっぱり()()()()()!おぉんのれ、あぁんのっ、化け物キノコォォォ!!」


それを見た面々がどうなっているのだと思っていると、ローザが化け物キノコ。モンストゥルに向かって怨嗟の声を上げた。


「ロ、ローザ?」

「アイン!今すぐそのキノコを()()()()()()!」

「わっ、わかった!」


アイン達がローザの様子を伺う中、ローザは突然アインの方を振り向くとアインにキノコの破壊を命じた。

アインはローザの気迫に若干退いたが、言われたとおりさっきまで見ていたキノコを踏み潰した。


パリーン!!

「「「「「えっ!?」」」」」 


すると何処からか何かが割れたような音が周囲に響き渡り、周囲の景色が先程までとは微妙に変化した。

木々やキノコの位置等には変化がなかったが、それから伸びる影の向きがズレた。

ライハルト達が上を見ると、先程よりも太陽の位置が傾いていた。


グゥー

「「「「「!!・・・…」」」」」


次いでその場にいた全員の腹の虫が鳴いた。

エミリアとソアラは恥ずかしげにうつむき、男性陣は居たたまれなくなって顔を逸らした。


「助かったわ!お腹の虫が鳴く程度で済んだ!」


そんな気まずい空気の中、ローザは一人だけ何かに安堵して喜んでいた。


「あー、ローザ?」

「なに?」

「何がどうなってるんだ?」

「ええっとね…」


ライハルトに尋ねられたローザは、仲間達に自分達に何が起きていたのか説明を始めた。

それをまとめると次のようになる。

まずは前提としてあのアインが潰したキノコの正体について。キノコの名は迷いダケ。別名神隠しキノコや隠れキノコとも呼ばれているものだそうだ。

このキノコは魔力を吸収して特異な現象を引き起こす魔法キノコの一種で、周囲の空間を閉ざして人や獣を迷子にするはた迷惑なキノコらしい。しかも迷わせ方が魔法由来の為方向間隔を狂わせているとか認識を混乱させているわけではないので、迷子にされている側は違和感を感じにくい。

さらに魔法的な空間のせいか疲労や生理反応。言い方はあれだが尿意や便意、空腹の類いも感じなくなるらしい。というかそれを感じる時間がゆっくり?になっている。そして実際空間が閉ざされている間は食べずにいても飢えて餓死することも疲労で過労死することもない。しかし空間が開いた際に本来餓死や過労死する程の時間が外側で経過していた場合は実際にそうなり死亡するそうだ。

これが先程ローザがお腹が鳴る程度で済んで喜んでいた理由だ。

下手をすると解除した瞬間に全員お陀仏だったらしい。

それでもローザが解除することに躊躇しなかったのは、解除しないわけにはいかなかったことと、少しでも早い方がまだ生存率が高かったからだ。ちなみにエミリアに()()()()()()可能性も考慮していたらしい。

そしてその空間を開く方法は、閉ざされている空間内にある迷いダケを見つけて破壊することだけ。

閉ざされた空間は迷いダケを基点とした亜空間で、外からの救助は見込めないらしい。

例外としては、外の迷いダケが偶然破壊される。または枯れると解放される。が、後者の場合はほぼ確実に最悪の餓死一直線だそうだ。

なのでアインが迷いダケを見つけてくれて良かったとローザはしみじみ口にしている。


ローザの説明に全員の顔が蒼くなる。

そしてそんな仲間達にローザはこれはあのモンストゥルが仕掛けていた罠に違いないと力説した。

会話からこちらを倒せる威力の攻撃を算出するような奴だ。罠の一つ、二つ、あらかじめ仕掛けているくらいしていると。

元凶がキノコだっただけに、誰もローザの意見を否定出来ず、誰もがありそうだと思った。




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