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※魔人?否、モンストゥル

「けほっ!まったくひどい目にあったわ」

「まったくだ。だがそのおかげでようやく黒幕が出て来てくれたぞ」

「あれが黒幕何ですか?」

「どう見てもそうだろう。見たまんまキノコの化け物だぞ」

「キノコ使いとして見ればこれ以上ない程らしいな」

『・・・』


ライハルトが牽制する中、仲間達も武器を構えながら目の前にいる化け物について推察をした。

それに異形はとくに何も言わなかったが、勇者パーティーのメンバーが一人も行動不能に陥っていないことに何か思っているようには見えた。


「たしかにキノコ使いとしてはそうかもしれないけどさ、なんだよあのキノコの化け物。ローザはなんだかわかるか?」

「少しは自分で考えなさいよ、まったく。・・私の知っている中では茸人間(ファンガース)が一番近いと思うわ」

「ファンガース…。それはどんな魔物何ですか?それともモンスターですか?」

「ファンガースは魔物よ。寄生型のキノコが魔力で魔物化して人の死体に寄生。その寄生した死体の脳を使って思考出来るようになった魔物よ。普通の魔物化したキノコはせいぜい歩いて胞子を蒔くくらいしか出来ないけど、ファンガースは人間みたいにどうやったら自分達がより多く繁殖出来るのか思索してそれを実行することが出来るの」

「つまり?」

「寄生した死体。人間の頭の良さや脳の損壊具合にもよるけど、まんま人間みたいな行動が可能なの。計画性のある奴なら普通に罠を仕掛けてきたり駆け引きが出来るわ」

「駆け引きって話し合いが可能なんですか?」

「いえ、ファンガースは喋らないわ。思考能力が手に入ってもキノコですもの。会話の成立しようがないわ。私が言った駆け引きは戦闘の方よ。昔聞いた話だとフェイントや戦略的撤退なんかをした個体がいたんですって」

「それは…。厄介な相手ですね」


ソアラはローザの説明に敵の厄介さを再認識した。

野生の動物よりも魔物。下級の魔物よりも人間の方が厄介なのは勇者パーティーの一員としていろいろな相手と戦ってきたソアラには理解出来ることであった。


「・・みんな、残念な知らせがある」

「残念?何よライハルト、残念な知らせって?」

「あいつ、俺が穴から飛び出す前に確か『仕留めたか?』と言葉を吐いていた」

「げっ!あの化け物言語を解する知能があるの!魔物の力を持った人間クラスの知能持ちって魔人じゃないのよ!」

「魔人!魔物の上位種ですか!?」 

「「!?」」


魔人という忌み名にパーティーメンバーは恐怖した。


魔人。それは魔物の上位種。魔人。それは人類の天敵。魔人。それは人類の歴史にいくつも名を刻んだ災厄。魔人。それは勇者パーティーが相対する敵。魔人。それはこの世界の生きとし生けるもの全てに仇なすもの。

人類にとって魔人とは動く災害なのである。


『否』

「「「「「!?」」」」」


勇者パーティーが突然現れた魔人に恐怖を感じていると、異形から『声』がした。

それは男の声でもなければ女の声でもなく、動物や虫の鳴き声とも違うただの音だった。


『我等は魔人に非ず。それは我等が先達の異称なり』

「本当に喋りやがった!」

「まさか魔人がいるとわ!」

「なんてことなの!」

「この声は…。」


アイン達が魔人の証拠に慌てる中、ソアラは一人だけ別のこと。魔人の声に聞き覚えがあることをいぶかしんだ。


「ソアラ?どうかしたの?」

「いえ、あの魔人の声に聞き覚えがあるんですけど…」

「魔人の声に聞き覚え!貴女あの魔人とあったことがあるの!?」


ソアラの問題発言にローザは声を上げる。

魔人を知っていたのにそれを見逃していたなんて否定しようのない大問題だ。


「いえ、違います。あの魔人にあったことはありません。ですが、あの声は聞いたことがあるんです。それも一度きりとかじゃなくて何度も…。・・・思いだしました!あの魔人の声、霊言ダケの声です!」

「霊言ダケ?ダケってことはキノコよね?そのキノコは喋るものなの?」

「はい!神殿で亡くなる方の最期の言葉を御遺族の方に伝える為のキノコです。霊言ダケは死にかけている人の頭に置くと、その人の思っていることを喋る不思議なキノコなんです。需要があるので神殿で栽培して常備しているんです!」


ソアラはようやく声の正体が思い出せてそれをローザに説明した。


「あの魔人の声がその霊言ダケと同じ?それってつまり?」

『我等がそれを利用しているということだ』

「「「「「!?」」」」」


魔人の方も二人の会話を聞いていたらしく、自分の喉元にある薄紫色のキノコを見せながらそう言葉を発した。


「あれは間違いなく霊言ダケです!」

「キノコがキノコを使って喋っている、ね。それにあいつ自分は魔人ではないって言ってたわね。でもそれは先達の異称だとも言っていた。つまりあんたは新たな魔物の上位種ってことなのかしら?」

『是であり否。我等はお前達が魔人と呼ぶの上位には位置するが、魔物の上位種ではない。我等はモンストゥル。魔物の形と世界が交わり生まれし者』

「魔物の形と世界が交わりし者」

「モンストゥル?」


ローザの問いかけにキノコの化け物。モンストゥルは淡々と答えた。


「魔人の上位種ね。まったくとんでもないものが出てきたものね。しかも我等ってことは、複数いるってことでしょう」

「「「あっ!」」」

「まったく嫌になるわね」


ローザのこぼした言葉にアイン達三人は冷や汗が流れるのを止められなかった。

魔人単体でも小国が滅ぼされた例がいくつも歴史に刻まれている。その魔人の上位種が複数存在している。

それは人類にとってかなり絶望的な事実であった。


「モンストゥル!お前達の目的は何だ!この森で何をしている!!」


『我等がそれに答えるとでも?・・・だがまあ、わかっているものは構わないか。当然お前達の排除だ』

「やはりか。さっきからキノコをけしかけていたのはお前だな?」

『是。だがやり方が手緩かったな。まさか一人も削れないとは…』

「あれだけ派手に爆発させておいて手緩いって…」


最後に喰らわせられた大規模爆発は勇者パーティーでなければ防げなかった。あれがもし街中で発動されていたら確実に被害は甚大なものになった。

それなのにモンストゥルはそのやり方を手緩かったと言った。

それはつまり、モンストゥルにはあの大規模爆発よりも強力な攻撃があるということの示唆に他ならなかった。


『あれでも森が壊滅しないように範囲も威力も限定している。確実に殺るなら逃げ場を潰して時間差で連鎖爆発させて仕留めていた』

「「「「「逃げ場を潰して時間差で連鎖爆発…」」」」」


その見も蓋もないモンストゥルの殺害方法に勇者パーティーは全員が冷や汗を流した。

先程の爆発を防いだのもかなりギリギリだったのだ。

もしも今言われた攻撃をされていたら普通に全滅していたと全員が確信した。


『その様子なら今言った方法で始末出来そうだな』

「「「「「!?」」」」」


モンストゥルのその言葉で勇者パーティー全員が悟った。

モンストゥルが最初に答えるとでも?っと、言ったのに普通に自分達と会話をした理由。自分達の様子からどれくらいの攻撃なら自分達が殺せるのかを探っていたということを。


『それではな』

「「「「「待っ…!?」」」」」


モンストゥルの別れの言葉とともに自分達を中心に先程の子供大のキノコが螺旋を描くように出現した。

そして発光。


チュドオォォォォォォォーン!!

チュドオォォォォォォォーン!!

チュドオォォォォォォォーン!!


次いで複数回の大規模爆発が魔の森を盛大に揺らした。






        新たな敵を確認

 排除せよ            排除せよ




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