※誘うキノコ
「・・・行こう」
「「「「えっ!?」」」」
「ローザの言うとおりそれだけの魔力がこの森にあるのなら調べないといけない。それにそれで背後から撃たれたら報告することも叶わなくなる。最低限誰かか何か。あるいはどうしてかを把握する必要がある」
こく
ライハルトの言葉に勇者パーティーの全員が頷いた。
「これからは強行軍でいく。魔物は無視して魔力茸を辿るぞ!そこに魔力の根源があるはずだ!」
「「「「おう!」」」」
ライハルトはこれからの方針を伝えると、仲間達を先導しながら駆け出した。勇者の仲間達もそれに続く。
「はっ!」
ライハルトは雷の魔法で広範囲の魔物と木々を焼き払いながら道を切り開いて行く。
勇者の仲間達はライハルトの討ち漏らしを片付けながらそれに続く。
そうして彼らが魔の森に入ってちょうど三日目。ちょうどガーリー王国まで半分を越した辺りで新たな異変を発見した。
「なんだっ、こいつら?」
最初にそれを見つけたのは斥候のアインだった。
ライハルトの休憩中に偵察に出たアインが見たものは、いよーに多い森に生えたカラフルなキノコ群と、頭にキノコが生えている魔物達の姿だった。
「ここでもキノコか」
やたら目立つキノコを見て一人ごちたアインは報告の為に急いで仲間達のもとに戻った。
そして自分が見た森の様子を仲間達と共有した。
「大量に生えたカラフルなキノコに魔物に生えたキノコ、ね」
「ローザ、何か心当たりはあるか?」
「そうね。・・・カラフルなキノコの方は直接見てみないとなんとも言えないけど、魔物達の方は寄生型のキノコの苗床になっているんじゃないかしら?」
「キノコの苗床?そんなキノコがあるんですか!?」
ローザの見解にソアラが声をあげた。
「普通のキノコでも木や動物の死体に生えてあることは結構あるわよ。問題は魔物に寄生している点ね。魔物の身体が動いていたってことは、キノコに最低限宿主を生かし動かす知能があるってことね。あるいはキノコを触媒に誰かが魔物の死体を操っているのか?その点は何か気づかなかったの?」
「そうだなぁ?・・・魔物達から息づかいを感じなかったからたぶん死体のはずだ」
ローザの問いかけにアインは魔物達のことを思い返し、そう答えた。
「なら死体を操っている場合ね。それがキノコ自身が操っているのか、第三者がいるのか。今は結論を出せないけど、不意打ちを警戒しておいた方が良いわ」
「わかった」
ローザの警告にライハルトが頷く。
「それからソアラ、貴女火の防護神術って使えたわよね?」
「えっ!火の防護神術ですか?それは使えますけど…」
「それならみんなにそれをかけておいてちょうだい。相手が寄生型のキノコを使うならそれである程度は防げるはずよ。それとキノコの胞子もね」
「キノコの胞子もですか?」
「ええ。アインがカラフルなキノコって言ってたでしょ。そういうカラフルなキノコは毒キノコや状態異常を引き起こすキノコが多いの。もちろん食べなきゃ大丈夫なのが多いけど、中には胞子を吸い込んだだけで状態異常にするものもあるのよ」
「そういうことですか。わかりました」
ソアラはローザの説明に頷くと、持っていた杖を掲げた。
《神よ。御身の子たる私がここに祈り願います。私達に御身の火の加護をお与えください!》〔火の防護〕
そして神術を発動させる為の祝詞を詠うと、天から赤い光が勇者パーティーの全員に降り注いだ。そして光が止んだ後には赤いオーラに包まれた勇者パーティーの姿があった。
「ローザさん、無事に皆さんに神術がかかりました。これでまる一日程度は火の加護が得られます」
「ありがとうソアラ」
「これで最低限戦える備えは出来たな」
「ええ、そうね」
「俺の方もある程度は回復出来た。なら行くとしよう」
「「「「おう!」」」」
「これはすごいな」「すごいわね」「すごいです!」「たしかに」
そしてアインの先導でアインが偵察した地点まで行った面々は、アイン以外絶句した。
やはり聞くのと見るのとでは大違いで、そのあまりにも異様な光景に自然とそうなってしまったのだ。
なにせ赤や白のキノコなんてまだ普通な方で、蛍光ピンクや抹茶色のキノコなんてものまであちこちに生えている上、森を徘徊している魔物達全ての頭にキノコが載っているのだ。
これで驚かないわけがなかった。
「これは予想以上ね。いったい何が起きたらこんなキノコパラダイスになるのよ」
「「「「たしかに」」」」
ローザはその光景に呆れた声を出し、他の四人もそれに同意した。
「それでローザ。実際に見て気づいたことはあるか?」
「そうねぇ。・・・私が知っているだけでも毒キノコ、痺れダケ、眠りキノコに錯乱ダケ。珍しいものだと爆裂ダケや溶解ダケなんてものまであるわね」
「毒キノコなんかはまんまだとして、爆裂ダケや溶解ダケっていうのはどんなキノコなんだ?」
「まあ、あまり一般的なキノコじゃないものね。爆裂ダケは可燃性の高いキノコで、火や高温に晒されると名前のとおり爆裂するの。その爆発の威力は私が使う火球の魔法に匹敵するわ」
「げっ!ローザの火球並みの爆発だって!」
アインは仲間としてローザの魔法の威力を正確に知っているだけに顔をひきつらせた。
当然他の仲間達も難しい顔をしている。
「ええ。そして溶解ダケだけど、このキノコは胞子に強力な腐食性があるの。胞子を浴びたら並みの魔物や金属なんてあっという間にドロドロよ」
「「いっ!ドロドロ!?」」「ドロドロですか!?」「ドロドロなのか」
「ええドロドロよ。錬金術師なんかが採取に失敗して死亡するキノコベストテンに入っているわ」
顔を蒼白にさせている仲間達にローザは強く頷いた。
「・・・この分だとローザの知らないキノコもえげつない効能がありそうだな」
「そうね。少なくとも見える範囲のキノコに食用のキノコは皆無ね。そうなると他のキノコも押してしるべ師よ」
「そうなるか」
ライハルトの懸念をローザは肯定した。
それを聞いてライハルトは顔を曇らせた。
どうやら向かう先が件の魔力以外も危険地帯の様相を見せ出したのだからそれも当然だ。
「ローザ。ソアラの神術を信じていないわけじゃないが、今君が言った爆裂ダケや溶解ダケの胞子をちゃんと防ぐことは出来るのか?」
「爆裂ダケの爆発はさすがに対象外でしょうけど、胞子は基本的に植物由来だから火の防護神術で効能を発揮する前に焼いてしまえば大丈夫のはずよ」
「・・・そうか」
ローザの予想にライハルトは考え込み始めた。
進めば進んだだけ危険度が上がっていくのだ。
当然リスク判断する為の時間も長くなっていく。
しかし敵地でそれは大きな隙だ。
「!?ライハルト、何かくるぞ!!」
「「「「!?」」」」
それを最初に察知したのはアインだった。
周囲を警戒していたアインは自分達に向かって飛んでくる何かに気がつき、声をあげた。
「あれは…キノコ!?キノコが空を飛んで来たわ!?」
「くっ!」 ピカッ!
勇者パーティーはそれぞれその自分達に向かって来る何かを探し、ローザがその正体をキノコだと判断した。
ローザの声を聞き流しながらライハルトは雷を放ってそのキノコを迎撃した。
ライハルトから放たれた雷が空に昇り、勇者パーティーに向かってきていたキノコ群を焼き払った。




