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異世界デバッガのベリーイージー冒険譚  作者: イ尹口欠
レダ・サイベリウム

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 第二十一階層に続く階段を降りました。

 私たちとしては初めての階層です。

 そして地図もなく、遭遇する魔物の情報もない未知の階層でもあります。


 とはいえここを探索して第二十四階層まで降りているレダさんたちがいるので、未完成の地図を見せてもらえますし、出現する魔物の情報も教えてもらえるわけですが。


「この階層はアンデッドばかり出るんだ。とにかく臭くて汚いゾンビ、実体のないゴーストばかりだね。ただし姿形は何の魔物かは見なければ分からないうえに、それぞれ生前の能力を使うから毎回対応方法を変えなきゃならない。厄介な階層なんだよ」


「うわあ、それは疲れそうですね」


「とにかく匂いが耐えられない。長時間、ここにはいたくなくて、とにかく最近は階段の間のルートしか往復していないね。地図を完成させる気になれない階層さ」


「それは私たちが加わっても同じことでは?」


「まあそうなんだけど。アンタたちなら何か匂い対策できる魔術とか持っていないかと思ってね。ないならないで、この階層は諦めて次へ行くけど」


 私はみんなの方を見て、「何かありましたっけ?」と問いました。

 するとリナリーが手をこまねくので、なにか妙案でもあるのかと近づいて耳を貸します。


「……こまめに〈クレンリネス〉をかければいいと思いますが、水属性をもっていることがバレます」


 ……なるほど。

 確かに4属性を持っているのがバレるのはキツいですね。


 しかしレダさんは何らかの解決手段があるならそれに縋りたいようで、「もう今更何を見せられても驚かないから、何かできるならやってくれ」と言い出しました。


 ……仕方ないですね。


 私たちは第二十一階層での戦闘を体験することろから初めました。

 なるほど、魔物がゾンビ化したものか、ゴースト化したものと遭遇するようになっていますね。

 そしてゴーストは無味無臭なのに対して、ゾンビの腐臭はキツいものがあります。

 思わずギルマがえづくほどですから、確かにこれはマッピングどころではありません。


 私は全員に〈クレンリネス〉をかけて、匂いを中和します。


「おお、これは楽になったな。便利な魔術を持っているじゃないか」


 レダさんは素直に感謝の意を示しましたが、メガネのソルさんは強張った表情でレダさんに「〈クレンリネス〉は光属性と水属性の複合魔術ですよ」と言いました。

 さすがに私が4つ目の属性を使えるとなると、驚かずにはいられないようで、レダさんは瞠目して私を見ました。


「どうしました? 驚かないという話でしたが」


「ああ、いやすまん。まさか4つ目の属性を持っているのに驚かないわけがなかった。前言撤回だサトミ、アンタのチカラは凄すぎて驚かざるを得ないってね」


「まあ見せたからにはこの階層の地図、完成させましょうね」


「もちろんだ。ゾンビの匂いさえなんとかなれば、後はマップを埋めていくだけだからな」


 私たちは続々と現れるゾンビとゴーストを倒していきます。

 特にリナリーの〈クリメイション〉はアンデッドに対して強力な威力を発揮しますし、呪歌〈鎮魂歌〉を歌いながら戦斧を振り回すレダさんは、アンデッドに対して脅威だったようですね。

 マップは順調に埋まっていき、その日の夕方ごろには第二十一階層の地図が完成していたのです。


「アンタたちがいなければずっと放ったらかしになっていたところだったよ。ここでの貢献はサトミたちのパーティのもにしておくようにギルドに言っておくから、そうしたらアンタたちもAランクに片足突っ込んでる状態になるね」


「一応、まだ私たちはCランクなんですが……」


「第二十階層に降りた時点でBランクは確定だろう? そして第二十一階層の地図完成はほとんどアンタたちの功績になるとしたら、ほらAランクが見えてきたじゃないか」


 なるほど、言われてみると確かにAランクに王手をかけているようなものですね。

 しかし探索者のランクは上がっても大してメリットがないのが現状です。


「まあ確かにメリットはないね。ついてくるのは名誉くらいかい? でも探索者同士でなら、Aランクというのは目標であり現段階で最前線にいる者たちのことさ。アンタたちは他の探索者とあまり交流していないから実感はないかもしれないけどね」


「あー、なるほど。つまり私たちが自己完結しているから、メリットも思いつかないわけですか」


「訓練場に来たら私たちが稽古をつけてやるってのに、まったく来ないんだから呆れるね……。それでも第二十階層まで自力で降りてくる。他の探索者たちもアンタたちのことは興味津々なはずだよ」


 うわあ、そうでしたか。

 まったく知りませんでしたよ。


「とはいえ別に訓練場に来いって話じゃないよ? 来てくれるならそれに越したことはないけど、アンタたちは自己研鑽で十分のようだし、後輩の指導に向いているようにも思えないしねえ。武器術を伝授してやれるんならその限りじゃないけど」


「そうですね……武器術を教えるのは時間がかかるので多分、私たちが訓練場で誰かに教えるようなことはしないと思いますよ」


 武器術の伝授は1~2年程度かかるのだそうです。

 実際、エステルは神殿騎士に成りたての2年程度は修行に明け暮れていたそうですしね。

 秘伝書を使えば一発ですが、さすがにそれを見せられるわけありませんから。


 ともかく、第二十一階層のマッピングは完了。

 次は第二十二階層ですよ!


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