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異世界デバッガのベリーイージー冒険譚  作者: イ尹口欠
レダ・サイベリウム

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 探索者ギルドの資料室はEランク以上ならばお金を支払って閲覧可能だそうです。

 私たちはそれぞれ閲覧料を支払い、資料室に入ります。

 分厚いファイルが幾つもならんでおり、他にも私たちが購入した地図や魔物の一覧などもありますね。


「さて。探すのは黒晶珠についてですが、それ以外に過去に宝箱から出たアイテムについてもチェックしておきましょう。今後、そういうアイテムに出くわす可能性もありますからね」


 分厚いファイルの1冊は過去に出た宝箱からの魔法の品を記録したものです。

 そしてダンジョンとは関係なく魔法の品に関する本、魔術に関する本など、各々で関連のありそうな書物にあたります。


 黒晶珠については割りと早くに判明しました。

 やはり黒晶石の上位版の触媒としても使えますが、黒晶珠の場合は武器に取り付けることで闇属性の強化に特化した杖などを作ることができるようです。

 できれば水属性を強化する青晶珠も合わせて、ギルマ用の杖を作るのがいいですね。


 緋晶珠があればリナリーの杖も強化できるので、晶珠をドロップする魔物を一通り探したいころです。


 他にはこの世界のマジックアイテムについて知ることができたのは大きいでしょう。

 どのくらいの効果のものが、どの程度の価値があるのか。

 私が生成したアイテムは換金するなら幾らくらいの価値になるのか。

 そういうことを知ることができたのは大きいですね。


 私が生成しないで、街の武器屋で魔法の武具を買うという選択肢も悪くありません。

 もちろん、相応の稼ぎが必要になるのですが……。


 とにかく知識は身を助けるということで、その日、私たちは手分けして資料を読み込んでいったのでした。


     ◆


 泊りがけでダンジョンに入り、第十八階層にまでやってきました。

 さすがに敵が強いですね。

 出てくる魔物は身体が鉄でできたアイアンゴーレム、炎を吐く亜竜ワイバーン、地属性の魔法を操り尻尾に毒をもつマンティコア、精神を乱す絶叫と水属性の魔法を操るバンシーと、いずれも厄介な相手ばかりです。


 段々と広く天井が高くなっていくダンジョンですが、遂に空を飛ぶワイバーンにはエステルの槍も届かなくなりました。

 キャシーの弓と魔術が頼りです。

 またアイアンゴーレムにはこちらの刃の方が駄目になってしまうためやはり魔術による攻撃がメインとなります。


 今までになく魔力を消費してしまうため、長い時間をこの階層では過ごすことができません。


 踏破するだけなら階段から階段まで、最短距離を行けばいいのですが、それではいつまでも苦手な敵を苦手なままにしてしまいます。

 いずれこの先の階層でも似たような構成の魔物と遭遇したとき、行き詰まるかもしれないのです。


 そこで急遽、我々は戦力の増強を図ることにしました。

 ドロップを集めてお金を稼ぐのではなく、強敵を狩ってレベルを上げる、以前はそれなりにやっていたアレです。


 最近は探索を進めれば勝手にレベルも上がるし、手こずる魔物もほとんどいなかったためやる機会がなかったのですが。


 私たちは一旦、第九階層に戻って人気のない小部屋に移動しました。


「やっぱりサトミが選ぶ、異世界の魔物と戦ってみたいところだな」


「私が選ぶんですか……。まあいいですけど」


 今の私たちの強さでちょうどいい魔物というと、中ボスくらいになってしまいますが、大丈夫でしょうか。


「それよりアイアンゴーレムに通じるような武器術の習得は無理ですか?」


「その武器術を使える人に師事しなければ習得は困難だぞ」


「なるほど、魔術のスクロールのようなものはないのですね」


「いや、一応は秘伝書なるものがあると聞いたことがある。だが実物を見たという者は聞かないし、眉唾の類だと思うのだが。リナリーは聞いたことはあるか?」


「ないですね」


 ふうむ、なにやらエステルとリナリーが興味深い話をしています。

 武器術ですか。


「そういえばエステルは武器術が使えますよね。でも私やキャシーは一向に使える気配がないのですが。習得には何か条件があるんですか?」


「そうだ。先程も言ったが武器術を使える者から指導を受けなければならないんだ。見よう見まねではどうやっても習得できないらしい」


「ということはエステルは誰かから指導を受けたのですか」


「ああ。神殿騎士になった後の訓練で習得させてもらえた」


 ふむふむ。

 武器術……秘伝書……なるほどちょっと試してみましょうか。


「これから出すエネミーは武器術に似た技を使います。ツインヘッドウルフがスクロールを落としたように、合体させれば秘伝書を落とすようになるのかもしれません」


「合体か……確かにドロップの質が高まるのは確実だが。武器術に似た技というのは?」


「異世界のエネミーに武器術という概念がないのですが、武器を使って何らかの特別な技を放つ奴がいるんですよ。合体させていけば、これを習得できるスクロールか何かをドロップするといいなあと、期待しているだけなんですけどね」


「ふむ。どのみちレベルアップのためにしばらくは修行だ。試してみたら良いじゃないか」


「そうですか? では2体出して合体させますから、合体後の奴を倒しましょう」


「それより、どんな奴が出てくるんだ。対策は?」


「合体前の状態では、マシンソルジャーという機械兵士です。剣を使う複雑な機構をもったゴーレムだと思ってください。ただしアイアンゴーレムほど硬くはありません。大きさもヒトと同じくらいです」


「ふむ。それを合体させるわけだな。キカイ兵士というのが想像つかないが、まあ試しに戦ってみよう」


 というわけでマシンソルジャーを2体出して合体させましょう。

 ポチっとな。


 2体の剣を持った機械兵士が現れました。

 SF並みに発達した古代文明の遺跡に現れるエネミーです。


「我が魔力10を捧げる。ひとつになれ〈フュージョン・ツインモンスターズ〉」


 マシンソルジャーはひとつになり、所持していた剣と身体が一回り大きくなります。

 オブジェクト探査の結果は、……マシンサージェントです。

 レベルは20から30に緩やかに上昇しました。

 1体ならなんとかなりそうですね。


「敵性反応を確認。戦闘モードに移行します」


「うわ、喋ったぞ!?」


 エステルたちが驚きましたが、そういえば機械兵士たちは合成音声で喋るんでしたね。

 久々で忘れていました。


「気にしないでください。決まりきった文言しか喋る機能はありませんから、知能が高いわけではありません」


 しかしマシンサージェントのバイザーの奥のカメラアイが光り、「戦士2、斥候1、魔法使い2。パターンC」とこちらの戦力をカウントして戦術を変えてきました。


「ねえ、サトミちゃん。話が違わないかい……?」


「ええ、合体によって知能が高まったようですね。厄介そうなので早めに叩き潰しましょう」


 私とエステルが武器を構えると、猛然とマシンサージェントが突っ込んできます。

 しかも前衛を無視してキャシーを狙う走り方です!


「キャシー、迎撃を!」


「え、ちょ。こっち弓を構えてたのに!?」


 キャシーは慌てて弓を放って腰から短剣を抜きました。


 マズいですね、これはリナリーとギルマも危険です。

 私はゲーム速度を0.5xに減速し、マシンサージェントに背後から斬りかかりました。

 ガインッ! と硬い手応えでしたが、背中のケーブルが破断しプラグが幾つか弾け飛びます。


「脅威度、修正」


 突然マシンサージェントの上半身だけがグルリと180度回転し、こちらに剣を振り下ろしました。


 私はすかさず剣を手放し、裏拳でマシンサージェントの剣を持つ手を殴りつけます。

 剣の軌道は大きく私を逸れて、地面に叩きつけられました。


 ……等倍の速度だったらこの奇襲に反応できませんでしたね。


 しかし安心するのはまだ早かったようです。

 マシンサージェントの目が再び輝き、「スラッシュ・アビリティ――アクション」という音声とともに地面に突き立っていた剣が高速で振り回されます。


 至近距離にいた私はその剣閃に巻き込まれるのは必定でしたが、幸いなことに私はひとりで戦っているわけではありません。

 マシンサージェントの左右の側頭部にキャシーの短剣が突き立てられました。

 更に脇腹にエステルの槍が突き込まれます。


 さすがにダメージが大きかったのでしょう、マシンサージェントは全身を硬直させました。


 その隙を突いて、私は間一髪、マシンサージェントの間合いから逃れることができました。


「機能低下。自爆します」


 え?


 ドォン! と突然、マシンサージェントは爆散しました。


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