表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界デバッガのベリーイージー冒険譚  作者: イ尹口欠
レダ・サイベリウム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/57

44

 解読の結果、〈フュージョン・ツインモンスターズ〉は光属性と闇属性の混合魔術だそうです。

 効果は2体の同種の魔物を合体させるというもの。

 ツインヘッドウルフはこうして生まれたのでしょうか。


 生命をイタズラに弄ぶ点で禁術扱いになるという話でしたが、実際の効果をこの目で見たいなどとリナリーが言い出したので習得しました。

 借家の地下室で、みんなを念の為に武装待機させて実験です。


「とりあえずグリーングミでいいですか?」


「そうですね。弱い方がいいでしょう。フォレストウルフでさえあの強さになるのですから、油断しないようにしてください」


 うへえ。

 確かに言われてみればそうですよね。

 フォレストウルフはEランク傭兵が駆除できる強さだったはずです。

 ですがツインヘッドウルフは明らかにDランクでは厳しく、Cランクくらいなければ安定して倒せないでしょう。


 まあとにかく試してみましょうか。


 ポチっとな。


 2体のグリーングミが出現しました。

 グリーングミはいわゆるスライム系の魔物で、ダンジョン内の死体やゴミなどを食べているスカベンジャーです。

 攻撃手段は張り付いてゆっくりと溶かすくらいしかないのですが、致命的に遅いため間合いに入ったらザックリ剣で斬っておしまいです。

 生命力も低く、大雑把に真っ二つになると死んでしまう弱い生物で、第一階層から第三階層に出現しましたがいずれも退屈な敵、という印象しかありませんね。


「じゃあ合体させますよ。……我が魔力10を捧げる。ひとつになれ〈フュージョン・ツインモンスターズ〉」


 魔法陣がそれぞれのグリーングミの足元に現れ、ゆっくりとひとつに重なろうとします。

 グリーングミの抵抗むなしく地面を引きずられ、……そしてひとつに合体しました。


 一回り大きくなったグリーングミにオブジェクト探査をかけると、ビッググリーングミという新種の魔物になったのが分かりました。

 ただ強さは……グリーングミと遜色ないですね。


「すごく弱いですよ、コイツ。名前はビッググリーングミになりましたけど……」


「ふむ……」


 リナリーは納得がいかない、という顔でビッググリーングミを睨みます。

 グリーングミはそんなこと露とも気にせず、床を舐めるのに夢中です。

 地下室では日夜魔物を倒しているため、血などが染み付いていますからね。


「サトミさん、もう1度、グリーングミを合体させてください。そして出来上がったビッググリーングミを合体させてください」


 なんですと?


 いや確かに同種の魔物なら合体できるという話です。

 合体した魔物同士を更に合体させることもできるでしょう。


「なるほど。そういう方法でフォレストウルフがツインヘッドウルフにまで強化されたわけですね」


「多分、そういうことでしょう。2体のフォレストウルフがあそこまで強くなるのはやはり不自然です。恐らくこのように合体を繰り返した結果がアレなのでしょうね」


 早速、実験を続けます。


 グリーングミを合体させてビッググリーングミを生み出して、更にビッググリーングミ同士を合体させました。


 結果は……ラージグリーングミという更に一回り大きなグリーングミが生まれたわけですが。

 コイツも弱いですねえ……。


「グリーングミが悪かったのでしょうか。弱すぎてまったく強くなる気配がありませんよ?」


「……そうですね。ところでサトミさん、ビッググリーングミとラージグリーングミは【デバッグツール】から呼び出せますか?」


 なんですかその悪魔的発想は。

 うわあ、呼び出せますよコイツら。


「……呼び出せますね」


「ツインヘッドウルフが呼び出せるのだから、呼び出せて当然でしょうね。ではラージグリーングミを呼び出して更に合体をしてください」


「は、はい」


 なんだかこれ繰り返しやらされる流れですかね……。


 私は言われるがままにラージグリーングミを呼び出し、合体させました。

 結果はヒュージグリーングミという更に一回り大きくなったグリーングミが出来上がるばかりですが。


「ではこれも合体を」


「マジですか……」


 リナリー、実は正気を失っていませんかね。


「ギルマ、リナリーに〈サニティ〉かけてあげてください」


「失礼な……私は真面目に実験をしているんですよ?」


 そうですか、マジなんですか。

 仕方がないのでやはり言われるまま合体します。


 おっと、さすがに合体に必要な魔力が10じゃ足りません。

 発動したものの、合体には失敗したため魔力を15にして再度唱えます。


 出来上がったのはキンググリーングミです。

 なんか遂に行き着くところへ来てしまった感じですが。

 この上があるのでしょうか?


「キングですか……サトミさん、大きくなった以外の変化はなにがありますか?」


「ええと、……うわ、なんかスキルが増えてますよ」


「キングの冠詞がつく魔物はその頂点に立つ魔物ですから、これ以上の合体はないかもしれませんね。それでどのようなスキルがありますか?」


「ええと【種族の王】【溶解】【合体/分離】【合体命令】【分離命令】【感覚同期】、ですね」


「【種族の王】は周囲にいる自分の種族を強化するスキルです。【溶解】はグリーングミが持っているスキルとして、他は聞いたこともないスキルですね。……それじゃあ、倒しましょうか」


「え、折角ここまで育てたのに!?」


「育てた……? というか、ここに放置して借家を壊されたら困りますよ」


「それはそうですね。別になつかれたわけでも命令をきくわけでもないですし、倒しましょうか」


 レベル30にもなったキンググリーングミですが、部下もなしに単体だと大した強さではありません。

 やや敏捷になって巨大化したところで、基本的にグリーングミです。

 バラバラに分裂したときには驚きましたが、数が増えても個々の性能が落ちるため何の意味もありませんでした。


 そして消滅したキンググリーングミは、緑色に縁取られた腕輪をドロップしました。

 オブジェクト探査の結果、グリーングミの腕輪という謎の装飾品であることは分かりましたが……。


「なんですか、これ」


「多分、【馴致】用のアイテムでしょうね。キング系を倒すと稀にドロップするという話を聞いたことがあります」


「じゃあレアドロップですか?」


「分かりません。キング系自体と遭遇するのが稀ですから」


「ところで【馴致】ということは……グリーングミを従えることができるとか?」


「そうです。テイミングと言ったりしますね。餌を上げたりすることで従魔にできるはずですよ」


「へえ。でもグリーングミなんて従えても仕方ないですよね」


「ええ、ですからキンググリーングミを【馴致】してみましょう」


 本日、最後にして最大の無茶振りが来ました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ