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異世界デバッガのベリーイージー冒険譚  作者: イ尹口欠
レダ・サイベリウム

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 翌日は魔術師ギルドに寄って、リナリーの魔術のラインナップ変更を行ってからダンジョンの第三階層に挑むことになりました。

 リナリーの魔術は現状、炎の高火力魔術が多く、戦闘では使いにくいことこの上ありません。

 以前からそうでしたが、ダンジョンに潜ってもその傾向が変わらないことからラインナップの変更に踏み切ることにしたようです。


 ……宮廷魔術師としてベストのラインナップを崩すのですから、それだけ決断には時間がかかったということでしょうね。


 リナリーは〈サーマル・センサー〉を〈アンインストール〉して、〈ヒートアップ〉という魔術を〈インストール〉しました。

 〈ヒートアップ〉は対象を加熱する魔術で、生物に使えば体温を強制的に上昇させるちょっと悪どい攻撃ができるようになるのだとか。

 火事の心配もないし、本来は調理などに使われる魔術だそうです。


 ちなみに〈サーマル・センサー〉を切り捨てた理由は、私のオブジェクト探査とキャシーの斥候能力があるから不要だと判断したとのこと。

 すっかりパーティメンバーの一員として振る舞っていますが、そういえば奴隷からの解放はいつすればいいのでしょうか。

 ズルズルと魔術を教わり、ダンジョンにまで同行させていますが、本人の気持ちは如何ばかりか。


 ……なんか楽しんでいるような気もしなくもないですが、リナリーがギルマの事情を知っている今、考えなしに解放するわけにもいかないんですよね。


 ちょっと今晩にでも相談しましょうか。


 おっと折角の魔術師ギルドです。

 私も何か新しい魔術が欲しいですね。


「リナリー、私もエステルが使っているような武器に属性を付与する魔術が欲しいのですが」


「サトミさん、残念ながら属性を付与する魔術は中位属性にしかないのです。つまり下位属性と上位属性しか持たないサトミさんには使うことができません」


「ぬ、そうだったのですか。戦力アップになるかと思ったのですが」


 エステルの〈ライトニング・ウェポン〉は格好いいので、是非ともああいう魔術を使ってみたかったんですけどね。


「だから〈フレイム・ウェポン〉〈アイシクル・ウェポン〉〈ライトニング・ウェポン〉のスクロールの内容の書写を依頼しましょう。属性付与魔術がないなら、自作すればいいんですよ」


「おお! なるほど、確かに今の私ならお手本があればできるかもしれません!」


 リナリーの粋な計らい? で私はオリジナル魔術の開発を始めることになりました。


     ◆


 ダンジョンの第三階層に到着しました。

 ここでもまだまだ私たちのレベルでは余裕をもって戦えますね。

 とはいえ一日に2階層を降りようとは思いません。

 そこまで私たちは急ぐ理由もなければ、慎重さを欠いていい理由にはならないからです。


「……とはいえ毎回毎回、第一階層から降りていくのは面倒だね」


 エステルがボヤきますが、確かに面倒くさいですね。

 座標遷移を使えば浅い階層をスキップできますが、肝心の転移先になるような場所がありません。

 どこに魔物が湧いているか分かりませんし、他の探索者に目撃されたら面倒なことになります。


「確かにボクも警戒を続けるの、結構キツいなあ。あ、前方から3匹。なんだろう、結構な速さで空中を移動しているみたいだけど」


 オブジェクト探査を使います。

 結果が出る前に灯りに敵が映りました。

 拳大の黒い球体がスーっと空中を滑るようにして接近してきています。


「なんです、あれ?」


「多分、シェイドです。身体に触れると生命力と魔力を奪われますから気をつけて。あと確か……」


 リナリーの助言が終わる前に間合いに入ったので剣で斬りつけます。

 しかし手応えがなく、剣はシェイドをすり抜けてしまいました。


「物理攻撃が効かないので、魔術で倒さなければなりません」


 それを早く言ってください!


 私は体当たりしてきたシェイドを大きく飛び退いて回避し、


「我が魔力1を捧げる。吹き飛べ〈ファイア・ブラスト〉」


 火の波がシェイドを消し飛ばしました。


 エステルは槍に魔術を付与しなければ対処できず、キャシーはそもそも攻撃魔術を持っていません。


「我が魔力10を捧げる。燃え尽きろ〈ヒートアップ〉」


「熱っ!?」


 リナリーの新しい魔術がシェイドを赤熱させて消滅させました。

 しかしエステルのシェイドに触れていた部分が、火傷したように腫れています。

 キャシーにくっついていた方もリナリーの〈ヒートアップ〉で消し炭にしましたが、やはりこちらも火傷を負いました。


 ……他に手段がないとはいえ、厄介な魔物ですね。


「ギルマ、ふたりに治癒をお願いします」


「ええ。初めての怪我ね」


 ギルマは〈ヒール・ウォーター〉で火傷を治します。


「しかし厄介ですね、あのシェイドという魔物は。普通はどう対処するんでしょう」


「今度から気配を感じたらボクとエステルは下がって、サトミちゃんとリナリーちゃんに任せるようにするよ」


「それが確実ですかね」


 現状ではそれしか対策がありませんね。


「魔法の武器ならば普通に切り裂けると聞いたことがあります。高価ですし、サトミさんの付与するような特殊効果がつかないのがネックですが」


 リナリーが言うには、ミスリルという魔法金属を使った剣ならばシェイドを斬ることができるのだとか。

 ほほう、ミスリルなら『闘争のロストグリモア』にも登場しますよ。


「ミスリルの武器でしたら、私でも出せますよ。どうしましょうか、少し休憩しつつ武器の更新をした方がいいですかね?」


「ミスリルの武器か……いきなり変わっていたら出た時に受付嬢に見咎められそうだぞ」


「ああ、そうですねえ。じゃあ帰ったら更新しましょう。今日は私とリナリーでシェイドに対処します」


 とはいえシェイドはレベル2~3程度の強さしかないのですけどね。

 普通の武器が効かないというだけで随分と凶悪になるものです。


 他の魔物は普通の武器で問題なく倒せるうえ、レベルもまだまだ10に届く魔物が出てきません。

 シェイドにさえ気をつければ第三階層も問題なくクリアですね。


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