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異世界デバッガのベリーイージー冒険譚  作者: イ尹口欠
キャシー・キルレイン

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 延々とエクスカリバーで麻痺を入れながら切り傷を増やし、リナリーが追撃の〈フレイム・チェイン〉で動きを止めて、〈ライトニング・ウェポン〉で強化した槍でエステルが目を狙い、キャシーは唖然としながら弓を手に突っ立っていました。


 怪我人はでていないのでギルマの出番はありません。


 結局、10分ほども戦い続けてようやくツインヘッドウルフは息絶えました。

 恐ろしいタフネスでしたね。


 おっと、さすがレベル44です。

 一気にレベルアップしましたよ?


「ええと、なんていうか色々と聞きたいんだけど。まずその剣、何?」


「奥の手です。もう仕舞いますね」


 インベントリに麻痺が付与された聖剣エクスカリバーを仕舞います。

 便利なのでとっておきましょう。


「あ……嘘、亜空間収納!? 森人族でさえ光と闇を両方もっているヒトは少ないのに!?」


「やっぱり普段遣いはこっちの剣の方が落ち着きますね」


 私は目玉に突き刺さっていた剣を抜きました。

 熟練度上昇効果は使い続けてこそ後の財産になるのです。


「あとさ。リナリーちゃんの魔術、なにあれエゲツないの」


「普通の〈フレイム・チェイン〉ですよ」


「普通? ……普通じゃないよ! だってあの巨体の動きを魔力20で止めるなんて、普通は無理だから!」


「では私が優秀な魔術師であるというだけですね」


 事実、リナリーは優秀な魔術師です。


「エステルちゃんも雷属性だし、属性に恵まれすぎでしょこのパーティ。治癒魔術師の出番がなかったとか意味が分からないよ」


「あら、怪我人が出ない方がいいじゃないの」


 ギルマは出番がなかったことに特に何の感慨もない様子。

 キャシーはツインヘッドウルフを倒せたことを奇跡だの、このメンバーがFランクにしては強すぎるとか、あの光る剣のことをもっと教えて欲しいだの、色々と言ってオーバーヒートしています。


 若干ウザいですが、とりあえず今は目の前の魔物の死体ですね。


「ボロボロにしてしまいましたが、キャシー。これどこか売れるような部位はありそうですか?」


「ええ? そんなのまず魔石でしょ、爪と牙は確実だね。毛皮はボロボロだから駄目そうだけど……あと肉はどうかな。知らない魔物だから味が分からないや」


「ふむ。ちょうどお昼どきですし、試食してみますか?」


 というわけで解体しながら平行で肉を焼いていきます。

 つくづく『闘争のロストグリモア』に料理関連のシステムがないことが悔やまれますね。

 せめて塩くらいは欲しいところです。


 肉が焼けるのを待つまで暇つぶしに今回のリザルトを確認しておきます。


《名前 サトコ 種族 人間族 年齢 29 性別 女

 称号:異世界のデバッガ

 レベル 15 筋力 18 敏捷 19 精神 27  感知 14

 【若返り(15歳)】【身体能力強化】【精神能力強化】

 【魔力感知】【魔力操作】【剛剣】【光魔術】【闇魔術】

 【地魔術】【水魔術】【火魔術】【風魔術】【デバッグツール】

 〈ライト〉〈ヒール・ライト〉〈キュア・ポイズン〉〈フィジカル・ブースト〉

 〈グラビティ・バインド〉〈センス・イビル〉〈マインド・プロテクション〉〈マナ・ドレイン〉〈ナイトサイト〉

 〈ストーン・ハンマー〉〈ドロップ・サンド〉〈トンネル〉

 〈ウォーター・スピア〉〈クリエイト・ウォーター〉〈ウォーター・ウォーキング〉

 〈ファイア・ランス〉〈ファイア・ブラスト〉

 〈ウィンド・セイバー〉〈ブロウ・ウィンド〉〈ホバリング〉〈サイレント・ムーブ〉

 〈クレンリネス〉〈ヒート・レイ〉〈ディメンション・プリズン〉

 〈サンド・ストーム〉〈スワンプ〉

 〈ファイア・ストーム〉》


 カタツムリ狩りと合わせてレベルが15に上昇しました。

 また能力値が上昇し、【重剣】が【剛剣】にランクアップしましたね。

 順調に剣の腕前が上がっているのですが、【格闘】をなかなか習得できないのが悩みのタネですかね。


 ……おや?

 【デバッグツール】にも変化がありました。

 なんとツインヘッドウルフを生成できるようになっています!

 これでいつでもツインヘッドウルフと戦えますが、危険なので御免ですね。


 もしかしたら私が遭遇した魔物は呼び出せるようになるのでしょうか。

 だとしたらこの世界の魔物とは積極的に戦っていった方が良さそうですね。


 おっと肉がいい感じに焼けています。

 脂身の少ない赤身の肉で、見た目はやや硬そうですが果たして……。


「みんな、肉が焼けましたよ」


 解体で血まみれになっていたエステルはギルマに〈クリエイト・ウォーター〉で洗ってもらってから、胡乱げな視線を肉に向けました。


「本当に食べられるのか、それは」


「エステル、美味しかったら教えてね?」


「……え、はい」


 ギルマがエステルに毒味をさせることが決まり、エステルは恐恐(こわごわ)としながら肉を一切れつまみます。


「むぐ、むぐ……」


「あ、やっぱり硬いですか。もっと薄く切れば良かったのかな?」


「むぐむぐ……うん、確かに硬いが、味はいいぞ。噛み切るのに難儀するが……」


「そうでしたか。それでは私たちもいただきましょう。ナイフで一口サイズに切って食べましょうか」


 キャシーも含めて一旦、解体作業を止めて肉をつまみます。

 私のインベントリに入っていたパンを取り出し、葉野菜を出して配ります。


「サトミちゃんは本当に色々できるね。良いところを見せる予定だったけど、みんなの方が一枚上手だったなあ」


「キャシーの斥候能力は十分に高いですよ。ただウチのメンバーになるには、信用が足りないというか……」


「一緒に命がけの戦いをくぐり抜けたのに足りないの!?」


「足りませんよ。傭兵なら命がけで戦うなんてよくあることですから」


「そ、そうなんだ……」


 とりあえず噛み切るのに難儀する肉ではありますが、味は良いのでインベントリに仕舞うことにします。

 魔石、牙、爪は後で分配ですかね。


「あの……【神託】の件なんだけど、いいかしら」


「はい、どうしましたギルマ? 神託の危険なら排除しましたけど」


「違うのよ。よく思い出して。――森の奥より危険が来る。森の奥にある危険を排除せよ」


「あれ、もしかしてふたつあります?」


「そうなの。危険が来る、の方はさっき倒したけど、森の奥にある危険を排除せよ、の方はまだ満たしていないのよ」


「うわあ。同じ危険というからには、さっきのツインヘッドウルフと同等の危険があるということですか?」


「多分……」


 それは厳しいですね。

 全力で動いたため、魔力は減っていますし体力も消耗しています。

 リナリーは涼しい顔していますが、あれは魔術で魔力を回復できる余裕の現れでしょう。


「その森の奥の危険は、明日にしても大丈夫ですか? この状態で挑むには無謀だと思うのですが」


「期限には触れられていないから、大丈夫だと思うわ。みんな疲れているだろうから、今日はもう集落に戻って休んだ方がいいわよね?」


「そうしたいところです」


 キャシーも「この件についてはお祖父ちゃんに報告しないと駄目だから、戻るのは賛成だよ」と言いました。

 今日、これ以上の戦闘は無謀であるという認識は全員が抱いているようで、集落に戻ることに異を唱えるメンバーはいませんでした。


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