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lv2 vsザバス

「今回の演習はいつものと違ってヒントがあまりにも無さすぎる……って感じだな」


ダークエルフ、フォーゲルが残してくれた解毒剤のお陰で、すっかり元気になった、ライ。引き続き、他の参加者の観察を行っている。


「ってかよ……こいつら真面目だなあ、ちゃんと過去の傾向とか調べている辺り、よっぽどこの演習に力を注いでいるな」


それもそのはず、この演習は新人戦闘員にとって、とても重要なものだ。しかし、ライはその事実を知らない。


と、その時。一面にアナウンスが流れる。


「……戦闘員諸君。ただ今をもって、君らの殲滅を命じられた二人のハンターが投入された。とても手強い相手なので鉢合わせしないよう用心したまえ。健闘を祈る」


「ハンター?なんだそれ。ちょっと聞いてみるか」


身を隠していた草陰から、勢いよく飛び出す。


「よっ」


「うわああ!!や、やんのかお前!!」


突然現れたライに激しく動揺する参加者。腰が抜けたようだ。


「あのさ、ハンターって何者かわかるか?」


「は、ハンター?お前、そのハンターじゃないのか。」


相手に戦意がないことを確認し、とりあえず一安心しているようだ。


「俺も知らねーよ!多分今年からの新ルールってもんだ。強いんだろ?避けるしかねーよ!お前も気をつけろよ!」


と、言葉を残しつつ、その場を後にした。


「ふーん。なるほどねえ……避けろって言われると……」


ニヤリと笑う、ライ。


「避けられないよな、そりゃ」



「さてと……あんたで最後だな」


「うっ……」


今にも倒れそうな、傷だらけの少女。目線の先には、チャラそうなサングラスをかけた、一人の男。


「それにしても酷いよな、あんたの仲間……「逃げろ」って言われても、か弱い女の子を置いて逃げるか普通」


「エヴァくんは……悪くありません」


「まあ、どうでもいいや。悪いけど命令でね……ちょっとだけ眠ってもらうよ、お嬢ちゃん」


「っ!」


一瞬で距離を詰め、男がとどめの一撃を繰り出す!


と、その瞬間。一粒の小石が、男の目元に向かって飛んでくる。


「イテッ」


男は不意の一撃に思わず体勢が崩れてしまう。そして、ゆっくりと小石が飛来してきた方向に身体を向ける。


「……鉢合わせしないように、ってアナウンスにも流れていたろ……わざわざ俺に喧嘩を売るとは……バカじゃん、あんた」


その先には、燃えるような目をした、赤髪の少女。


「そりゃあどーも。イザナミ=ライだ。あんたがハンターだな」


「はい、正解……それで?あんたを殺しにくる人をわざわざ探し出して、なにがしたいんだ?」


呆れた表情で、男は答える。


「……喧嘩だ」


爽やかな笑顔。一方で、その目からは、燃え上がるような闘争心が溢れ出ている。


「気に入った……頭がぶっ飛んだバカやろうじゃん」


ニヤリと笑う、サングラスのハンター。


「っ!」


全身の鳥肌が、目の前の男の殺気に思わず反応してしまう。


「あの……!」


すると、横から少女の声が聞こえてくる。


「なんだこいつ、まだいたのか」


「トトです……加勢します!」


トトと名乗る少女が、ライと肩を並べるように立つ。傷だらけだが、その目の奥の戦意は消えていない。


「おうよ、よろしくな、トトちゃん」


「へっ……バカが二人……いや。おい、そこのお二人さん。バレているぞ」


背後の草むらを指差す、ハンター。


「隠れてなんか……いないわよ」


「お前……フォーゲル!」


ダークエルフの少女と、ツインテールの少女が姿を現わす。


「喜べフォーゲル。バカが三人もいるのだ」


「そう言うクロエちゃんも、案外やる気マンマンじゃない」


「……ほっといて欲しいのだ。おい、そこの二人。手を貸すのだ。


フォーゲル、やれ」


すると。一瞬で、フォーゲルの姿が消えてしまう。


「速いっ……上か!」


慌てて上空を見上げるハンター。そこには、二本の矢を手に、弓を引くフォーゲルーー


「くらいなさい……「二羽」!」


風をまとった二本の矢が、急降下する!


「良い攻撃だ……だが」


「っ!」


「弱い!」


矢を軽々とはたき落とす、ハンター。


そして勢いよく飛び上がり、空中にいるフォーゲルを地面に叩き落とす!


「なんて野郎だ……次は俺だ!」


落下中のハンターに向かって渾身の一撃を繰り出すライ!しかし、その攻撃もあっけなくかわされ、反撃を負ってしまう。


「甘い甘い、そんな攻撃じゃーー」


「良い囮なのだ」


ハンターの背後から、クロエが武器を振り下ろす。


「そんな細い棍棒で俺をーーうはっ!」


攻撃をなんとか受け止めるハンター。しかし、獣人族クロエの一撃は思ったより重く、そのまま地面に叩きつけられてしまうーー


地面に大きく亀裂が走り、唸りを上げる!


「おまっ、そんなに強かったのかよ……」


その小さな身体から放たれたとは思えない一撃に、思わず身震いしてしまう、ライ。


「いや……効いていないのだ」


のそりとその場で立ち上がるハンター。


「悪いな、そんなにヤワじゃあ、大人やってられないんでね」


リザード族。傭兵一族として名の知れた戦闘民族だが、戦闘を好まない連中ももちろん存在する。ザバスーーライ達の目の前に立っている男が、まさにそうだ。


「さてと……あんたらの実力も見飽きたところだし、そろそろ本気を出させてもらうよ」


スウウ……


深く息を吸い、右手を地面につく。


「っ……くるっ!」


「土の舞……土竜刺!」


すると。地中から突如現れた二本の岩の槍が、フォーゲルとライの胴体に直撃する!


「ガハッ……!」


予想もしなかった一撃に、二人は空中に浮いてしまう!


「くっ、こんなの……」


さすがはダークエルフの身体バランス、ザバスの一撃を受けてなお空中で体勢を立て直し、すぐさま反撃の矢に手を伸ばすーー


「あんたのその速さは厄介だ。悪いが、ここで退場してもらうよ」


ザバスの電光石火並みの攻撃が、無防備のフォーゲルを地面にはたき落とす!


「フォーゲル!」


「……強いのだ、こいつ」


しかし、ザバスはこのとき、ある違和感を感じたーー


「これは……あんたの能力か。厄介な奴が、もう一人いたとはな」


サングラス越しの視線の先には、突っ立ったまま一歩も動いていない少女トトが肩を上下にしながら息を切らしている。


「うう……」


樹木の破片の中から、フォーゲルがフラフラと立ち上がる。


「無事だったのか!意外と頑丈じゃねーの」


「違う……今、何かが私を守って……っく、次が来るわよ!」


「きゃっ!」


どうやら今度の目標は、トトになったみたいだ。「土竜刺」と呼ばれる大地の一撃が、トトを襲うーー


「だっ!」


「っ!クロエさん!」


攻撃を先読みしたクロエが、トトの目の前に回り込み、渾身の力で大地の槍を打ち砕く!


「フォーゲル!ライ!……クロエに合わせるのだ」


「!」


「……了解!うおらっ!」


ライが一歩でザバスとの距離を詰める。


「その攻撃は見切ったんだよ!」


迫りくる拳を物ともせず、ライに向かいうつザバス!


「フォーゲル!今だ!」


絶妙なタイミングで、フォーゲルがライの死角から現れ、ザバスの攻撃を食い止める。


「ううっ……トトちゃんのおかげでなんとか耐えてるけど……ライ、これが限界よ」


「十分だ」


一歩下がり、腰を落とす、ライ。拳をザバスの腹部に向かって振り上げる。


「言ったはずだ、あんたの拳はーー」


「一人じゃあ効かないなら」


ザバスの背後には、クロエの姿が!


「二人で挟むまでなのだ」


二人の攻撃が同時にザバスにヒットする!


「グハッ……!」


四人の見事な連携プレーが、功を奏したようだ。いづれ、この連携はーー


ゆっくりと、その場から崩れ落ちる、ザバスーー


「四人相手は、さすがに厳しい……よ」



「……つまり、あんたは鈴わ持っていて、あんたから鈴を盗んだ人がこの模擬戦の勝者……だったはず」


「……どこに無くしてしまったかな……やれやれ、また姉貴に叱られそうじゃん」


力尽きたザバスは大の字で地面でぐったり倒れこんでいる。しかし、どうやら彼は大事な物を無くしてしまったようだ。


「……なんか、ごめんな」


やや不機嫌そうにも見える三人に向かって、苦笑いしながら謝るザバスーー


「……ピンポーンパンポーン。えー、ただ今をもちまして……」


「……どうやら忘れ物を拾った奴がいるみたいだ……ああ、あの子か」


ザバスが空に向かって、ヘヘッと笑う。


トトはスヤスヤと眠りについているようだ。能力の副作用、と言うべきだろう。


「まったく、今年のルーキーは大物ばっかりだな……期待できるじゃん」



一方、その頃。森のどこかで。


「……もしもーし。今ね、やっと「ハンター」を殺したよ……鈴?見つかったけど、誰かさんに先越されちゃったみたい!……うんうん!わかってるよ!じゃーねー」


可愛らしいメイクをした少女が、ぬいぐるみに向かった何やら話している。


その隣には、ツノの生えた大男の死体が横たわっている。


すると、少女はこちらに顔を向ける。


「さてと……そこの君!聴いてたでしょ、盗み聞きは良くないよ〜まあいいか!お遊びはこれからだし。またね!」


音もなく、少女の姿は消えてしまう。


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