第玖弐話 Leave
「お前たち。そいつを取り付けろ!早くするんだ!!」
誠の姿をした『あいつ』が村人たちに命令している。今、索道の村側におり、人間が渡るためのゴンドラを取り付けている所だった。
「終わりました。」
礼次が告げる。
「全員、集まって私を取り囲め!!」
村人たちは『あいつ』を中心に集まってきた。
ズバッ!!!
ドシュッ!!!
誠の体から村人の人数分の牙が飛び出し、全員の頭を貫く。
村人たちはその場に崩れ落ち眠り始めた。傷口から白い泡が出ており、やがて塞がってしまった。
「あとは、好きにしてよろしい。」
誰も聞いていないが、『あいつ』はそう告げると、ゴンドラで谷を渡り始めた。
ゴンドラは手動でハンドルを回して進む仕組みなので、中間地点まではロープが下がっており、簡単に進むのだが、後半は登るため、かなり腕力がいる。
誠の細腕では困難に見えたが、全身の血管が異様に浮き上がり、信じられない速さで進んでいく。どうやら、脳内物質を操作する事で、尋常では無い力を引き出しているらしい。
対岸にあっという間にたどり着き、分かれ道から山の上へと走っていく。
「もう、こんな世界は終わりです。」
ぶつぶつ言いながら、坂道を登り、赤僧ヶ池のほとりの家を目指す。
「私が劣化しているですって!?私の情緒が不安定だから!?」
息も切らさず、急坂を駆け上がっていく。
「私の力は完璧なのです。欠陥に見えるのは、素材が悪いから!」
池が見えてきた。
「私の理論に矛盾などありません。たとえ『偽』と証明されたとしても、そんな無意味な証明、消し去ってしまえばいいんです!!」
家が見えてきた。
「『教授』の鼻を明かしてやるんですよ!あなたが必死に追いかけている事象など、『私』に比べれば、実に下らないと言う事を証明してね!!」
家の前にたどり着いて叫ぶ。
「私に間違いなどない!!!!!」
バン!!!
扉を勢いよく開ける。
「おいっ!!この世界を消せ!!!
そして、再構築するんだ。あの出来損ない共ごと、消し去ってしまえ!!!」
家の中から返事は帰って来なかった。
「聞こえないのか!?返事をしろ!!!!」
いくら叫んでも、誰も答えない。
「まさか、逃げたのか?逃げる場所なんて、どこにもないはずだろ。
あいつは、この世界から出られないはず・・・
まさか、まさか、まさか、まさか、まあああああああ、さあああああああ、かあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




