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福見福子の最終定理 第1章 始まりの仮説  作者: 黙定六
始まりの仮説
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第捌話 Back Ground

 今、俺たちがいるのは『四十万しじま』だ。他に、『九住くずみ』、『本山もとやま』『北陸土ほくりくど』という4つの大きな島があり、それぞれが独立した国である。

 かつては一つの国としてまとまっていたが、首都のあった本山への富の集中が限界に達し、約100年前に他の島がそれぞれ独立を宣言したのである。


 『大災害だいさいがい』とは、今から30年前に、地球規模で起こった自然災害や、天候不順によって引き起こされた大飢饉によって、世界中で人口が激減したことを指す。また、大災害以前は非常に稀だった妖獣による襲撃事件が、これ以降頻発するようになる。

 四十万は4島の中では最も災害の影響が軽微でかつ、農地が多かったことから、災禍が最も少なかった国である。深刻な食糧難に陥った他の3島からの移民も積極的に受け入れた為、現在は最も栄えている。


 大災害の約1年後。四十万で『大結界』が張られ、それ以降、ピタりと災害が起こらなくなったが、その因果関係は未だに分かっていない。ただ、大結界が超常の力によるものである以上、大災害にも超常の力が関わっていると見るのが一般的だ。

 一説によると、四十万のとある場所に、異世界に通じる『穴』が開いたのが、大災害の原因なのではないかという人もいるが、その『穴』は見つかっていない。


 『大結界』は大昔の高僧が、四十万の各地を巡りながら、こっそりと築き上げていたものらしい。なんでも、『魔の者』のこの世界への侵攻を予言し、彼らに対抗するため、都から離れたこの島を反撃の拠点に定めたという事だ。

 ただ、その高僧は処刑されてしまったそうだ。僧兵を集めた為に、為政者から反逆者の汚名を着せられたのだ。もしかすると、それも、魔の者の差し金だったのかも知れない。


 もし、魔の者の侵攻が事実であるのなら、大災害の引き金になったという『穴』も実在し、そこを侵攻の拠点とするつもりだったと考えるのが自然ではないだろうか。

 恐らく、高僧はそれも予見しており、四十万を覆う大結界を準備していたのではないだろうか。なら、大結界を発動する前に処刑されたのではなく、わざと発動させずに隠したのだ。


 高僧は処刑されたが、その高弟たちは迫害から逃れるため、4島の各地に散らばり、その意思を子孫達に伝えていた。

 その後、四十万の独立を機に、この国へと一斉に集まった。その数、八十八家である。俺の生家や、福子の『福見ふくみ家』、更に『白潰しらつえ家』や『じん家』もそこに含まれるのだろう。


 そして、大災害に直面した事で、各家から代表者を選抜し、伝えられていた『巡礼』を執り行い、大結界の起動に成功したと言うわけだ。


 今、俺たちがやっている『巡礼』は、力の陰りが見られ始めた大結界を、再び、元の強さに張り直すためのものだ。是が非でも完遂させなければならないのだが、だからこそ、魔の者の介入も予想される。

 遍路同士で潰しあっている余裕などないはずなのだが、高度な知能を有する『魔の者』の姿を見たことがある者はおらず、その存在を疑うものが八十八家にもいると言う。彼らにとって巡礼は、八十八家内の主導権争いの舞台に過ぎない。


 目に見えぬ魔の者との戦いの前に、つまらない諍いが俺たちの邪魔をしているのだった。

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