第参肆話 Lord
俺に気付くと、とても驚いた様子で
「なんでここにいるんだ!?」
と、かなりでかい声を上げる。
「どうしたんですか?」
司が店に入ってきた。同じように驚かれたところで、事情を説明した。
「なるほどな。浩二の奴の仕業か。それなら、ここにいても不思議はないな。」
「福子と小杖を探すのを手伝って欲しいんだ。さっきのおばちゃんの感じだと、鵺の方はあまり緊急性がなさそうだったし。」
うーん。と陣が腕組みして考えている。なにやら難しい顔をすると、
「こりゃ、親父の仕業かもしれんぞ。」
「はあ!?」
何を言い出すのかと思いきや・・・
「親父は、わけ有ってトロメキから出られない。だから、時折、まどろっこしい方法で俺を呼び出すことがあるんだ。しかし、怪我人が出たって言うのは、性質が悪いな。ちょっと、文句を言ってきてやる。」
「福子と小杖はどうなる?」
「恐らく浩二もグルだ。親父の言うことを聞けば、解放されるだろう。」
「人質のつもりか?だとしたら、とんだ見当違いだ。爆弾みたいなもんだぞ。」
「乱暴に扱ったりはしないだろうよ。むしろ、今頃、飯でも食って、くつろいでるんじゃないか?」
「なら、絶対に自分から出てきたりはしないだろうな。あいつら。」
「そういうことだ。そうやって、俺たちに何かをやらせようとしてるんだ。」
陣は腕を組み、鼻を鳴らしている。
「しかし、領主様は私たちに何をさせようとなさっているんでしょう?」
司が言う。
「親父の考えていることは誰にもわからないが、一つだけ言えるのは、面倒くさいって事だ。悪いが2人とも覚悟していてくれ。」
俺としては、あいつらが無事だと言うのなら問題ないのだ。今のところ、陣の推測なので、確証が欲しいところだ。
「坊ちゃん!いらしてたんですか!!」
店主のおばちゃんが帰ってきた。骨を折って貰ったものの、無駄骨になってしまったが。
「坊ちゃんはよしてくれ。」
陣の顔を見ると、あわてて回覧板を回収しに行ってしまった。
「浩二のかあちゃんだ。今は一人でこの店を切り盛りしている。とうちゃんの方は、浩二が子供の頃に亡くなった。」
「浩二さんを連れて森に入った時に、事故に遭われたそうですね。」
「まあな。そういうことになっているな。」
「そういうこと?」
何か、司や一般の町民が知らない裏があるらしい。
「まあ、いいだろう。どうせ、浩二も後で来る。俺たちはトロメキに向かおう。」
数分でおばちゃんが戻ってきた。出発することと、浩二も近くまで来ていることを告げ、俺たちは三戸の町を後にした。




