炬燵に潜む魔物
信じるか信じないかはあなた次第。
私は気付いてしまった。
『我が家の炬燵には魔物が潜んでいる。』
実際にその姿を見たことはないが、それは確かにいるのだ。寒風吹きすさぶ家外から帰宅した私を見えない触手で絡め取り、たちまち炬燵の中に引きずり込んでしまう。私はなすすべもなく炬燵の魔物に下半身を咥えられてしまい、抜け出ることもできなくなってしまう。母親に、『風呂に行け』『早く寝ろ』と言われてもどうにも抜けない。『助けて!』と叫ばなければいけないのに、私の口からは『うん。』とか『すぐ行くから。』なんて生返事しか出てこない。危機感というものがまるで湧かなくなってしまうのだ。どうやら魔物は私の足に絡めた触手を通して私の脳をある程度操作できるらしかった。
魔物はいつも、しばらくの間、私を拘束すると徐々に力を弱め、私は何とか炬燵から這い出ることができた。日曜から木曜の5日間は割合早く解放されるのだが、金曜と土曜には夜通し拘束される事もあった。偶然にもその時間の采配は私の実生活において都合のいいものであった。本当に偶然にだが。しかし、魔物は、テレビがついていたり、テーブルにみかんの入った皿が置かれたりすると、それを養分とするのか、日曜から木曜でも長く私を拘束した。それにより、授業中に睡魔に襲われたり、集中できなかったりといった害を受けた。
外が暖かくなってきて、炬燵を片付けるとそれは起こらなくなり、次の冬に炬燵を出してくるとそれは再び始まった。それで私は、やはりあれは炬燵にのみ潜む魔物の仕業なのだと確信した。
一人暮らしを始めた今でも、いけないとは思いながらも、寒くなるとまたこうして炬燵を引っ張り出してきて、いそいそと準備を始めてしまうのだった。これもまた魔物がそうさせるのかもしれない。
私はもう魔物に抗うことは諦めた。だが、これを読んでいるあなたにはまだチャンスがある。今すぐに、家にある炬燵を捨てなさい、焼きなさい、そのあと寺にも行きなさい。そうすればきっと魔物から逃れられる筈だ。実証はないが、きっと助かる。だから必ずそうするのです。
おそらく誰もが経験しているだろうと書きました。炬燵はちゃんと廃棄してください。それだけはおじいちゃんと約束しておくれ。では孫よ聞け、ここで一首。
昨冬に
筆をとったが
在庫行き
結果全く
季節外れに
おじいちゃん以降の文章は蛇足なので気にしないでください。精神科への連絡もしないでください。読んでくださりありがとうございました。