とある錬金術師の懺悔
俺が旅の途中で道に迷い、村であったろう所から 少し離れた広場に大量の魔物の死骸の痕跡とそれを村に入れないよう立ち塞ぐ様な石像のような物が置いてあった、右腕を天に翳す様にして佇んでいるその姿は、何かを成し遂げて満足して逝ったような感じだった。
さらに村であったろう場所から奥にしばらく歩くと石作りの建物の中に大事そうに2冊の本を抱えた古い屍が有った、俺は屍の手から2冊の本を取り出し読ませてもらう、そしてこの世界の真実を知ることになる。
俺はコージィ・コーナ 魔法の使えないソロの冒険者だ、剣だけで冒険者をやっていたが、限界点が見えていた所だった。
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この世界には魔法がある、有るには有るが、ごく一部の者しか使えない、
その原因を突き止めるため 錬金術師が魔法の使える魔物や人を禁忌とされる解剖をした結果、魔法が使える者には必ず特徴があった、
心臓の一部が肥大していた、更に解剖を進めると寄生蟲の死骸を発見、
今まで魔法は遺伝と言われていたが、実は、この寄生蟲によるものであった、
その寄生蟲の生態研究に生涯を費やし、研究成果を残すことにする。
母親が魔法を使えた場合、高確率でその子供が魔法使いに成ることが知られている、
寄生蟲の研究結果として、この蟲は雌雄同体である、一般の条虫(寄生虫)と同じで、この蟲一匹で繁殖が可能である、
蟲の繁殖する時期は妊婦である宿主の出産と同期して産卵を始める、
これは極度の宿主への刺激(出産の痛み)に呼応し、寄生蟲が繁殖する時期と判断、心臓からすこし移動して乳腺に卵を産み付ける、
出産後の初めての授乳の時、その卵は赤子に吸収されるのだが、卵の寿命は8時間程だった、それ以降は溶けて母体に栄養として吸収されるようだ、
それ故出産直後8時間以内の初乳を授乳されなかった赤子は 生涯魔法が使えない、
寄生過程は、まだ消化器官や胃酸等が未発達なこの時期のみ卵が赤子の体内に吸収され、すぐに孵化し寄生蟲の分泌液により麻酔の様な状態を作ったり血管を溶かして侵入し再度分泌液を出して血管にあいた穴をふさいでから血流に乗り やがて心臓に到達、そこから神経節を伸ばして頭蓋骨の奥へと入り込む。
半年ほどかけて頭蓋骨の奥に入った神経節は更にそこから分岐して目、鼻、耳に影響を与える様になる、そしてこの蟲の最重要の役割が「精神力を魔力に変換する」事なのだ、精神力を鍛え上げれば強大な魔力を生み出すことが出来るのだ。
そして孵化したこの蟲を魔力を導く蟲「魔導蟲」と命名する。
当然多くの卵が入ってくるが最終的に心臓に寄生した魔導蟲が弱い魔導蟲を糧として成長するため、最終的には一つの心臓に対して1匹の魔導蟲が寄生する事になる。
ここからが本当の儂の研究成果となる。
魔導蟲は男女関係なく寄生できる、男の魔法使いで実験をした、
人体解剖の禁忌に加えて更に禁忌を重ねる事になるだろう、
魔導蟲の移植手術だ、儂の推論が正しければこれで魔法が使えるようになるはずだ、それは多大な犠牲を払って結果は成功した、
しかし魔法使いを増やす事を考えると非常に効率が悪い、
試験体に出産と同じ痛みを与え続ける、所謂拷問である 2時間ほど拷問を続けると変化が現れた、乳腺ごと胸をえぐり取りその血肉をほかの者に移植する事に、
上手く寄生蟲は定着したようだ、魔法使い一人を拷問して殺し、5人分の寄生蟲を作れるのがこのやり方としての限界のようだ、
更に効率を追い求めた、初乳を直接体内に取り込む、これならば拷問もなし、魔法使いを使いつぶす事もなく、一度に20人分の魔導蟲を採取する事が可能になった、
しかし、この作業には弊害があった、近所の者から【初乳を求める変態爺さん】と呼ばれるようになってしまった事だ、
ここに 老錬金術師の研究者が生涯を賭けて研究した成果がある、
次の世代にこの書をを残す、この研究を続けていた村は魔物のスタンピードによりにより滅んでしまった、もう儂は旅に耐えられる気力も体力もない、
古い屍が大切に抱えるようにしていた2冊の本に記載してあった、
一冊はのこモロ-と言う錬金術師
もう一冊はこの人物とは違う人物が書いた日記だった、
そしてこの本の巻末には生前の懺悔と共に、この錬金術師の最後の言葉が綴られていた。
「弱さ故理不尽な人生を強いられ、魔法を渇望する者へこの書を送る」
それが錬金術師モローの最後の言葉だった。