銃声
とりあえず書き貯めてた3話分投稿。
次からは書いた日に投稿します。はい、計画性ゼロです。
「こんなに早く出すつもりはなかったんだがなっ…!」
迫りくる敵を照星の先に捉えながら愚痴をこぼす。
正直、銃はあくまでも緊急の自衛用に一つ、持っておこうと思って作っただけのものだったのだ。
それがまさか魔力がないことが判明してこれに頼らなくちゃいけなくなるとは思ってもみなかった。
銃の強力さは嫌でも知っている。これは戦争を、世界をいっぺんに変えてしまう代物だ。だから今まで人前で使ったり、開発、量産したりはしなかったが…もうそんなことはどうでもいい。
撃鉄を起こして一息。俺はもう、この世界がどうなろうがどうでもいいのだ。
「喰らえ!」
引き金を引く。
カチリ、と金属の乾いた音が響いた次の瞬間。
ダァン!!
すさまじい轟音とずしんと肩まで響く反動、そしてそれとともに爆発によってシリンダーから飛び出した弾丸はすさまじいスピードで宙を駆け、そしてまっすぐこちらへ向かっていたシルバーファングに、着弾。
40口径約10㎜の銃弾が肩の付け根辺りを抉り取り、シルバーファングの一体はそのまま地面へと崩れ落ちる。
「…よしっ!」
銃としての完成は大変なものだった。
もちろん本体の工業的な精度はもちろんの事ながら、弾薬の開発にはまさか火薬を作るところから始まるとは思ってもみなかった。
そして実験は何度も繰り返し行い、一度は指が変な方向に折れ曲がったこともあったが、どうにか完成にこぎつけたのだ。
そして、これが初の実戦だ。
昂る心を押さえつけ、すぐに次へと照準を合わせる。
そして、トリガーを引く。
二発目も一直線に走るシルバーファングに見事着弾。残るは3体。
三発目、同じように弾丸は発射されたが、それが敵を穿つことはなかった。
発射の瞬間、3体が一斉に左右へ避けたのだ。
「くそっ!学習したのか!?」
予想外の出来事に再び焦りが滲む。
しかし敵は回避に専念してかスピードが少し落ちた。
少し後ろに下がりながら4発目、5発目と射撃。
距離が縮まっていたこともあり、それぞれ左前脚と頭部を吹き飛ばした。
そして最後。飛びかかってきたシルバーファングはその鋭い牙で俺の喉元へと噛みつこうとしたが、俺のほうが少し早かった。
ほぼゼロ距離で放たれた銃弾はシルバーファングを後ろへと弾き返し、そのままぐったりと息絶えた。
「……勝った…か」
呆然と呟く。
息は絶え絶え、緊張が解けてか忘れていた体の重さが一気に圧し掛かってくる。
こんなんじゃ先が思いやられる…。
そう思いながらも小さな勝利に少なからず喜んでいた、次の瞬間。
「バウッッ!!」
「っ!?」
反応が遅れ、思わず左手を前へ突き出す。
鋭い痛み。出した左手には倒したと思っていた、左足を無くしたシルバーファングが深々とその牙を突き立てていた。
「くそっ!」
左手を引き千切ろうとするシルバーファングに右手の銃を向け、トリガーを引く。
カチッ、と金属音は響くが何も起こらない。弾切れだ。
「グワゥッ!」
シルバーファングが左手を嚙みなおし、血しぶきが舞う。
血が体から流れ、意識が飛びかける。
しかし、ここで死ぬわけにはいかなかった。
右手の銃を手放し、再び握るは腰に差しておいたナイフ。
それを思い切り振りかぶると、渾身の力でシルバーファングの首元へと突き立てる。
「ギャゥン!」
何度も、何度も突き立てる。
左手を加えていた牙から力が抜け、シルバーファングが地に伏せた後も、何度も、何度もナイフを突き刺した。
そして、すべてが終わり、力の入らない体を地面に投げ出した俺は静かに、目を閉じた。
「こっち!おねぇちゃん!やっぱり誰かいるよ!」
「うそっ!これって……」
そんな、誰かの声を聞きながら。
銃はこれからもバンバン出ます。
ちなみにこのSAAは現実とは違うちょっとした裏設定があります。
まず、弾薬は紙製薬莢です。技術力がないからね。さらにこれは本文にも書いてるけど10㎜弾使ってます。理由はこの世界の長さの単位はセンチメートルのみであり、1㎜単位で物を図ることがないという設定です。45口径ロングコルト弾12.2㎜とかいう細かいの無理でしょ、という感じであります。
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