プロローグ
「…最悪だ」
辺りを埋め尽くすような土砂降りの雨が降る空を見上げ、一言、呟く。
曇天の、どす黒い色で埋め尽くされた空はまるで俺のこれらから表しているよう…そんなことを考えてしまうほど、俺の状況は最悪だった。
一体どこで、何を間違ったのだろうか…。
まず、今、この世界は魔法技術が発展した世界であり、俺は前世の記憶を持ったまま生まれた、所謂転生者だった。
最初は戸惑いと混乱でいっぱいだった。前世…日本で暮らしていた俺はとある日、死んだ。
なぜ死んだか、は覚えてない。それどころか自分の名前や家族の名前、さらに自分が前世で何をしていたかすら覚えていなかった。
しかし、知識は残っていた。
前世で培った歴史や科学の知識。俺は転生者としてこの魔法の世界で生きていくことを決めた。
はじめは順調だった。
とある有力貴族の次男として生まれた俺は前世の知識を活用して様々なことを行った。
農地改革や道具の開発、さらには為政での改革などを次々と行い、周りからは神童とも呼ばれるほどだった。
しかし、それは驚くほどすぐに崩れ去った。
「最悪だ」
もう一度呟く。悪態をついても何も変わらないのは分かっていても、口に出さずにはいられなかった。
きっかけは学院への入学が決まった時だった。
俺の生まれた王国では貴族の子供は12歳から教育を受ける義務があり、それに向けて魔力の測定を行うことになっていた。
そして俺はもちろんそれを受け、そして……。
俺には魔力がないことが判明した。
そこからは早かった。
王国、いや、人類は魔法至上主義とも言えるほどに魔力というものの存在は大きく、それがない俺という存在は異端児として扱われた。
もう神童と呼ばれたころは見る影もなく、周りの人々は一斉に手のひらを返し、家族からはゴミと同等の扱いを受け、次の日からは毎日のように暴力や飯を与えないなどの虐待が始まった。
そう、魔力がないだけで俺は人としての尊厳を一瞬でなくしたのだ。
そして次の週には俺、レイ・ヴィットカースは捨てられようとしていた。
「この恥さらしめ!うちの家系に泥を塗りやがって!」
罵声を聞き、振り返る。
雨が降りしきる中、高級そうな馬車の中から俺を忌々しく見るのはダリル・ヴィットカース。俺の父親だ。
「本当ならこの手でお前をぶち殺したいが、それすらも汚らわしい。だからお前はここで死ね」
父…いや、ダリルは俺に死ねと、そう言い放つ。
そこに親子の情などは微塵もなく、あるのは憤怒…いや、憎悪なのかもしれない。
「恨むなら人として生まれなかった自分を恨め。最後に、これは神の情けだ」
最後にそう言い放ち、馬車はゆっくりと来た道を戻っていく。
もう彼が振り返ることはない。
そこに残されたのは一本のナイフ。
それは俺への当てつけのつもりか、魔力を付与することで効果を高められるものだ。
「……」
残された口を閉ざして、ただ空を見上げる。
これはあまりにも理不尽だ。一体俺が何をしたっていうんだ。
ふざけんな…。
俺は人々のために頑張ったじゃないか。
冬の食料不足だって、広大な大地の開拓だって、俺は人々のために、少しでも良くなるように頑張ってんだ。
なのにその見返りはこれか?
ふざけんな。
あまりの理不尽さに怒りがこみ上げてくるのがわかる。
そして俺はこれを止めれない。止めようとも思わなかった。
「ぶち壊してやる」
これが復讐なのか、何なのかは自分でもわからない。
しかし、俺の中に一つ宿った目的。俺はこの目的のために生き残ってやると決めたのだ。
俺は地面に落ちるナイフを拾い上げ、そのまま振り返って歩き出す。
目の前には死地と決められた森が暗く、俺のことを迎えていた。
なんか頭に浮かぶ情景がうまく書けない…書いてるうちに文章力が高くなることを期待してください。
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