表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

第八週:きれいなお兄さんは好きですか?

 毛足の長い絨毯の上で、緊張のあまり身じろぎもできずに硬直するオレに、縁サンは声を殺して笑っていた。

「別に取って食いやしねえから、楽にしろよ」

「え?あ、はい…」

 縁サンは小さな丸テーブルにふたり分のウーロン茶の入ったグラスを置くと、オレの向かいに胡坐で座った。

 いまの縁サンは『彼女』の姿…つまり、肩までの髪を軽く結って白いタートルネックのコットンシャツを着ている。

 もう正体は縁サンだって判っているけど、ずっと憧れていたひとが目の前にいるんだぜ?緊張のひとつもするだろ。

 ん?そういや、オレはJYOにも憧れてたよな。結局、同じひとだったんだ。これも運命ってヤツ?

「あっはっはっはっ!」

 突然響いた笑い声に、いつのまにかひとりの世界に入っていたらしいオレは、現実の世界に引き戻された。

 笑い声の主は、絨毯に転がって笑っている。

 …なに、また笑い上戸発動かよ。まだなにも言ってないんですが。

「なんっか、失礼ですよ…」

「だって、あは…ガチガチかと思えばニヤけたり百面相してるから、さ。面白くて」

 オレの抗議に、縁サンはゴメンゴメン、と謝りながら起きあがった。

 白かろーが、黒かろーが、やっぱり縁サンは縁サンってことですね…。

「で?ひとがせっかく、夢を壊さないようにしてやろうとしてたのに、のこのこやってきたのにはなにか理由でもあるわけ?」

 テーブルに肘をついてじっとこっちを見つめる縁サンは、特別気を悪くしているようにも見えなかった。

 もしかすると、本当にオレが『彼女』に憧れていたのを察して、正体がバレないように避けてくれていただけなのかもしれない。

 どう言ったらいいのか逡巡していると、急にグラッと視界が傾いた。

 すぐ目の前に縁サンの顔がある。

 薄く、細められた瞳がオレを見下ろしている。

 …やっぱり可愛い、というかキレイ、だな。目も髪と一緒で明るい色で睫毛も長いし…って、あれ?

「…ナニシテルンデスカ」

「もじもじしてるから、やっぱり取って食われにきたのかと思って、ご希望を叶えてやろうかと」

 …その場合、オレは縁サンを女性だと思っているワケですから、位置が逆なんじゃないかと。

 それよりも…

「オレも縁サンも男だと思うんですけど」

「どうだろう。たしかめてみる?綱紀ならいいぜ、可愛いし」

 ふわっと、縁サンのやわらかい髪が額に触れた。

 ヤバイです。とてもイイ香りがします。

 キレイなお姉さん大好きです。この際、お兄さんでも構いません!(オイ)

 心臓が壊れそうな勢いでドクドクとはずんでいる。

 ゆっくりと近づいてくる唇に、ぎゅっと目を瞑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ